本来なら次はRCSの出番、となるところが「Gmail」や「LINE」に代表されるインターネット側のサービスが普及し、事業者のメールやチャットなどのサービスはどちらかというと下火です。キャリアメールは携帯電話の利用が長く、お互いにそこから抜け出せないまま利用者として残っている状態といえます。

 インターネット側のサービスが席巻したのは、携帯電話事業者に依存せず、インターネットに接続したデータセンターからサーバーを借りれば、誰でも簡単かつ迅速にサービスを立ち上げることができるからです。これに対して携帯電話事業者のサービスは、多数の事業者が関わり、仕様の策定に時間がかかるという問題があります。その上インターネットサービスの多様化に応じて似たような機能を導入するため仕様が膨らみ、さらに時間がかかるといった悪循環に陥りやすいのです。「ベストエフォート」が共通認識のインターネットサービスとの差は歴然です。

 RCSも、2007年に開発が始まりましたが、一部の事業者しか導入されず、2011年には「簡素化」が提案され、相互接続を保証する仕様である「Universal Profile」が固まったのは2016年と最近のこと。実に10年近い年月がかかっています。しかも仕様が固まったのは、2015年9月にインターネットの代名詞ともいえる米グーグル(Google)がRCSのサービス提供会社であるJibe Mobileを買収し、RCSに本格的に取り組んだからと言われています。

+メッセージの狙いは「企業」

 RCSを称して「SMSを置き換える」という表現が使われることがありますが、SMSはおそらく、かなり長い間なくなることはないと思われます。というのも、いわゆるガラケーが市場に多数存在していて、販売も続けられているからです。インターネットサービスでもユーザー認証などSMSベースで動作しているものが広く利用されています。足回りを見てもSMSはすでにLTEに対応しており、携帯電話ネットワーク内のIPネットワークで動作できるようになっています。このため、携帯電話事業者がSMSを継続できない理由はいまのところありません。

 それでも事業者がRCSを導入するのは、LINEやTwitter、Facebookなどに多くの企業がそれらサービスのアカウントを持ち、顧客とのコミュニケーションに利用している現状を打破する一撃になり得るからです。

 インターネット上のサービスは、すべてユーザー登録やアプリのインストールが必須で、普及率が高いサービスであっても、必ず「到達できないユーザー」が存在します。また、ユーザーが企業アカウントを「友達」として認証しなければなりません。しかしRCSの場合は電話番号を使うため、利用に際してユーザーが登録する必要がなく、携帯電話の利用者すべてに到達可能です。RCSにより、携帯電話事業者はユーザーと企業を結ぶ役割を取り返し、かつてのように企業内システムとの接続などのビジネスが行えるようになります。