「自分語りOK」なTumblr(タンブラー)。「交流しなくていいSNS」が若者に人気。

Tumblrのアイコン

新年度が始まってから2ヶ月が経ちました。異動、転職、入学した先々で「ねえ、Facebookやってる?」「Twittterのアカウント教えて」なんて会話が交わされたことでしょう。新しい「友達」の職歴・学歴を確認したり昔の写真を遡って見たりして、「ふ~ん、そういう人生歩んできたんだ」なんて心の中で呟きながら、人の過去を覗けるのはSNSの醍醐味です。

そんな中、「次のSNS」としてTumblr(タンブラー)が注目を集めています。

フォローしている相手とフォロワーが他人には見えない

Tumblr(タンブラー)とは、Facebookに似たブログ型SNS。NY生まれのプログラマー、デイヴィッド・カープが2007年に開始したサービスで、現在は英語や日本語を含めた6言語が使用でき、全世界で2億人を超えるユーザーが利用していると言われています。

Facebookとの違いは、フォローしている相手とフォロワーが他人には見えないところ。投稿は文章、写真、音声、イラスト、マンガ、GIF、動画とさまざま。お気に入りの投稿者を「フォロー」すると、自分のダッシュボード(Facebookでいうニュースフィード)に投稿が流れてくる仕様になっています。

世界中の若い世代が今一番ハマっているSNS

FacebookやTwitterに次ぐ「オシャレSNS」としてはInstagramが有名ですが、Instagramと並んで10~20代のユーザーが爆発的に増えているのが、このTumblr。

イギリスの市場調査研究会社GlobalWebIndexの発表によると、数あるSNSの中で、登録ユーザー数に対するアクティブユーザー(実際に利用している)の数が最も多いのはTumblrなのだとか(2014年下半期)。

ユーザー数は2億人以上で、そのうち70%を占めるのが34歳以下。この世代が占める割合は、Twitterよりも10%ほど高い数字となっています。

日本の中心ユーザーは「おしゃれなオタク男性」

とはいえ、日本ではまだ認知度はそれほど高くないのも事実。ではいったい、誰が使っているのでしょう?

ヘビーユーザーの友人によると、Tumblrのユーザーには「ちょっとオタクっ気のある男性」が多いのではないか、とのこと。イメージは機械にもカルチャーにも詳しい、「モテキ」の主人公・藤本幸世のようなサブカル男性でしょうか。このあたりは、流行り始めたころのTwitterと似ていますね。

人気ブログを覗いてみると、風刺画、カワイイ女の子の画像、昔流行ったゲームのプレイ動画、ちょっとマヌケな動物の画像などが多い様子。実際、日本語ユーザーの4分の3は男性とのことです(全世界での男女比は5:5)

「他人に見られること」を意識していない

いわば「おしゃれサブカル層」が集まっているTumblr。ダッシュボードが流れていくテンポの速さも、Twitterと似ているかもしれません。

ユーザーは「リブログ」と呼ばれる、Twitterでいうところのリツイート機能を使い、お気に入りの投稿をどんどんシェアしていきます。ユーザーの間には、躊躇せずに「リブログ」をしていく空気があるので、現在のTwitterに比べて、ポジティブな空気が生まれている様子。

では、Facebookのように善意に満ちた交流がたくさん生まれているかというと、そうでもありません。Tumblrの特徴は、「ユーザー間のコミュニケーションが活発ではない」こと。

「いいね!」や「コメント」によって「つながり」を楽しむことよりも、あくまで自分の興味のあるもので自分のダッシュボードをデコレーションしていく「工作する」楽しさ、いわば「閉じた」楽しみ、自己完結した楽しみが中心になっています。

「自分語り」したい夜もある

「ときには、綺麗な写真にポエムをつけたい時がある。ひとりごとを誰かに聞いてほしい時もある。そういう『ちょっと恥ずかしい投稿』は、顔が見えないTumblrだからこそできる」……最近Tumblrを始めた友人はそう言います。

「旅行で行ったビーチの写真に、自分語りを添えた投稿をFacebookであげたら、後ろ指を指されるでしょう? でもTumblrの空気は『自分語り』を歓迎する雰囲気があるから気楽だし、楽しい」とのこと。

「ソーシャル疲れ」がたどり着いたユートピア

現代、「そうしろ」と言われたわけでもないのに、ネット上でも現実の世界でも、自分のことを話す行為そのものに負い目を感じている人が少なくありません。

言いたいことを言いたいように吐き出せる・表現できるのは、ネットの楽しみのひとつでしたが、SNSにおいてはそうも行きません。ついつい、フォロワーや友達の目線を気にしてしまって、自己満足の趣味を追求できない。

そういう「つながりトレンド」に息苦しさを感じた人たちが見つけた新天地がTumblrなのでしょう。

Twitterでは、そもそもポジティブな話題がなじまない。

Facebookは、実名だし人の目が気になってしまう。

Instagramは、女性的なおしゃれさが匂って、ハードルが高い。

どこか思う存分、自分語りや趣味の話をしていい場所はないものか(分かる人だけひっそりと反応してくれればいい)。そういったニーズにうまくはまったというわけです。

ビヨンセ、きゃりーぱみゅぱみゅも

オタク層に熱く、濃く支持されているTumblrを、企業やタレントが放っておくはずはありません。

ファッション誌「ヴォーグ」や「GQ」、アパレルではグッチ、アレキサンダーマックイーンといったハイエンドなブランドをはじめ、ビヨンセやテイラー・スウィフトといった著名人も広報活動のために参入。日本ではきゃりーぱみゅぱみゅがいち早くアカウントを公開しました。

どのアカウントも頻繁に更新されており、あるアーティストは他のSNS(Instagramなど)と重複していない写真を投稿していることから、その人気と熱の入れ用がうかがえます。

SNSの栄枯盛衰

栄枯盛衰が激しいSNS戦国時代では、昨日流行っていたものが、明日には廃れます。

そんな中、人の目を気にせず「今日あったこと」を気軽に投稿できるTumblrは、ネットの原点に返ったというか、古き良きブログ時代に戻ったというか、「一周してオシャレ」的なニュアンスを感じます。

牧歌的だけれどオシャレ。SNSだけど自分語りをしてもOK。その絶妙なバランスを原動力に、Tumblrの躍進はまだまだ続きそうです。

(「察しない男 説明しない女」著者 作家・心理カウンセラー)

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