フィニッシュまで80kmを残して、チーマコッピに指定された未舗装峠のフィネストレ峠でアタック。失速するイェーツを引き離し、デュムランらの追走を振り切ったクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)がステージ2勝目を飾るとともに総合首位の座に就いた。
未舗装の難関峠であるフィネストレ峠が組み込まれたアルプス2日目。2005年、2011年、2015年に続く史上4回目の登場となる標高2,178mはチーマコッピ(今大会最高地点)のフィネストレ峠と3級山岳セストリエーレを越え、最後は1級山岳バルドネッキアを駆け上がる。獲得標高差4,500mの難易度5つ星ステージでスペクタクルな逆転劇が起こった。
トリノ近郊のヴェナリア・レアーレ宮殿をスタート後、この日最初の2級山岳リース峠に向けて標高を上げる集団からルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)やダルウィン・アタプマ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、ジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)、セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)らがアタック。高速レースが展開される中、すでに45分44秒遅れの総合27位に沈んでいたファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)がリタイアを選択している。
2級山岳リース峠下り区間を経て22名の先頭グループが形成されたが、ミッチェルトン・スコットがこれを許さずに追走。タイム差は広がらずに80km地点で逃げを一旦吸収する。続いて形成されたサンチェスやマッテーオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼール)、クリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエルサイクリングアカデミー)、ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)ら9名の逃げグループが、メイン集団から1分のリードを得た状態でフィネストレ峠(全長18.5km/標高差1,694m/平均勾配9.2%/最大勾配14%)の登坂を開始した。
延々とスイッチバックが続くフィネストレ峠で前半からハイペースを作ったのはチームスカイ。瞬く間に人数を減らしたメイン集団からマリアローザのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が早くも脱落してしまう。チームスカイの攻撃によって完全に失速したイェーツの遅れは登りを進むとともに広がり続け、暫定的にマリアローザは総合2位のトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)の手にわたる。その後もイェーツが息を振りかえすことはなかった。
先頭で逃げ続けていたサンチェスはフィネストレ峠の約1/3を終えたところで吸収。メイン集団は引き続きチームスカイの支配下に置かれ、頂上まで7.8kmを残したところで未舗装区間が始まるとケニー・エリッソンド(フランス、チームスカイ)がペースアップ。総合3位ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)が遅れるとともに、エリッソンドに発射される形でフルームがアタックした。
フィネストレ峠の頂上まで5km、フィニッシュまで80kmを残したタイミングで加速して独走に持ち込んだフルーム。後方では総合2位デュムラン、総合5位ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)、総合6位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、総合9位リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)が追走グループを形成する。「故郷アフリカの道を思い出した」と語るフルームは快調に未舗装路を駆け上がり、追走4名に対して38秒のリードでフィネストレ峠を越えた。
雪解け水によって濡れ、タイトコーナーが続く曲がりくねった下り区間でフルームはさらにリードを広げることに成功する。ダウンヒルテクニックを生かしてさらに1分のリードを上乗せしたフルームは、追走グループに1分36秒差をつけて続く3級山岳セストリエーレの登坂に取り掛かる。この時点でポッツォヴィーヴォを含む第2追走グループは2分38秒遅れ。マリアローザのイェーツに至っては18分もの遅れを被った。
後続を寄せ付けず、3級山岳セストリエーレでさらにリードを広げる走りを見せたフルームが独走のまま最後の難所である1級山岳バルドネッキア(全長7.3km/標高差654m/平均勾配9.1%/最大勾配14%)へ。ピノのチームメイトであるセバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマFDJ)が献身的に追走グループを率いたものの、登りでも下りでも、高速道路を走る平坦区間でも、タイム差は縮まるどころか拡大した。独走を続けるフルームは、デュムランやピノを含む追走グループから3分20秒のリードで残り10kmアーチを通過した。
1級山岳バルドネッキアの登りが始まっても、すでに70km以上を独走しているフルームのペースが落ちることはなかった。3分後方の追走グループ内ではピノ、ロペス、カラパスがそれぞれ総合ジャンプアップのためにアタックし、デュムランが一定ペースを刻んで追いつくシーンが繰り返される。最終的にカラパスがライバルたちを引き離すことに成功したが、その3分前方ではフルームがガッツポーズを繰り出していた。
80kmにおよぶ独走劇。まさに圧巻の走りでフルームがモンテゾンコランに続くステージ2勝目を飾った。さらにデュムランを3分23秒引き離したフルームは、ボーナスタイム13秒(フィニッシュ10秒+中間スプリント3秒)も加算して総合4位から総合1位に大躍進。自身初となるマリアローザに袖を通した。
「このジロでは苦戦を強いられていたので、何かクレイジーなことをやり遂げる必要があった。これまでのキャリアの中で、残り80km地点でアタックしてそのまま独走で逃げ切るなんて初めての経験。まずはサイモン・イェーツを置き去りにし、トム・デュムランを引き離す作戦だった。チームのお膳立ては完璧だったよ。総合4位から総合1位まで順位を上げるには、最後の登り(バルドネッキア)でアタックしても十分なタイム差を奪えない。だからフィネストレ峠は完璧なアタックポイントだった」。歴史的な独走を終え、マリアローザを着てスプマンテを開けたフルームはこの日の作戦をそう振り返る。
「フィネストレ峠は試走済みだったし、独走に持ち込んでからは正しいペースを刻み続けた。後方の総合ライバルたちはアシストを失った状態だったので、彼らも同様に自らの力で踏まなければならない状況だった。計算の上での走りだった」。
1級山岳が3つ登場する第20ステージを前に、総合2位デュムランとのタイム差は40秒。「明日も厳しい山岳ステージが待っているけど、日を追うごとに脚の状態は良くなっている」と、4度のツール・ド・フランス覇者は語る。誰もが予想だにしない独走で、3連続グランツール制覇のチャンスを強くたぐり寄せたフルーム。この日だけで87ポイントを稼いだフルームは山岳賞でもトップに立っている。
ポッツォヴィーヴォが8分以上遅れたため、デュムランらとフルームを追い続けたピノが総合3位に浮上。14分遅れたローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)に代わってステージ8位のサム・オーメン(オランダ、サンウェブ)が総合トップ10入りした。38分遅れで1級山岳バルドネッキアにたどり着いたマリアローザのイェーツは総合18位まで順位を落としている。また、ヤングライダー賞3位のベン・オコーナー(オーストラリア、ディメンションデータ)は第2追走グループ内でレースを展開していたものの、下り区間での落車によりリタイアを喫している。
未舗装の難関峠であるフィネストレ峠が組み込まれたアルプス2日目。2005年、2011年、2015年に続く史上4回目の登場となる標高2,178mはチーマコッピ(今大会最高地点)のフィネストレ峠と3級山岳セストリエーレを越え、最後は1級山岳バルドネッキアを駆け上がる。獲得標高差4,500mの難易度5つ星ステージでスペクタクルな逆転劇が起こった。
トリノ近郊のヴェナリア・レアーレ宮殿をスタート後、この日最初の2級山岳リース峠に向けて標高を上げる集団からルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)やダルウィン・アタプマ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、ジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)、セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)らがアタック。高速レースが展開される中、すでに45分44秒遅れの総合27位に沈んでいたファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)がリタイアを選択している。
2級山岳リース峠下り区間を経て22名の先頭グループが形成されたが、ミッチェルトン・スコットがこれを許さずに追走。タイム差は広がらずに80km地点で逃げを一旦吸収する。続いて形成されたサンチェスやマッテーオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼール)、クリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエルサイクリングアカデミー)、ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)ら9名の逃げグループが、メイン集団から1分のリードを得た状態でフィネストレ峠(全長18.5km/標高差1,694m/平均勾配9.2%/最大勾配14%)の登坂を開始した。
延々とスイッチバックが続くフィネストレ峠で前半からハイペースを作ったのはチームスカイ。瞬く間に人数を減らしたメイン集団からマリアローザのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が早くも脱落してしまう。チームスカイの攻撃によって完全に失速したイェーツの遅れは登りを進むとともに広がり続け、暫定的にマリアローザは総合2位のトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)の手にわたる。その後もイェーツが息を振りかえすことはなかった。
先頭で逃げ続けていたサンチェスはフィネストレ峠の約1/3を終えたところで吸収。メイン集団は引き続きチームスカイの支配下に置かれ、頂上まで7.8kmを残したところで未舗装区間が始まるとケニー・エリッソンド(フランス、チームスカイ)がペースアップ。総合3位ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)が遅れるとともに、エリッソンドに発射される形でフルームがアタックした。
フィネストレ峠の頂上まで5km、フィニッシュまで80kmを残したタイミングで加速して独走に持ち込んだフルーム。後方では総合2位デュムラン、総合5位ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)、総合6位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、総合9位リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)が追走グループを形成する。「故郷アフリカの道を思い出した」と語るフルームは快調に未舗装路を駆け上がり、追走4名に対して38秒のリードでフィネストレ峠を越えた。
雪解け水によって濡れ、タイトコーナーが続く曲がりくねった下り区間でフルームはさらにリードを広げることに成功する。ダウンヒルテクニックを生かしてさらに1分のリードを上乗せしたフルームは、追走グループに1分36秒差をつけて続く3級山岳セストリエーレの登坂に取り掛かる。この時点でポッツォヴィーヴォを含む第2追走グループは2分38秒遅れ。マリアローザのイェーツに至っては18分もの遅れを被った。
後続を寄せ付けず、3級山岳セストリエーレでさらにリードを広げる走りを見せたフルームが独走のまま最後の難所である1級山岳バルドネッキア(全長7.3km/標高差654m/平均勾配9.1%/最大勾配14%)へ。ピノのチームメイトであるセバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマFDJ)が献身的に追走グループを率いたものの、登りでも下りでも、高速道路を走る平坦区間でも、タイム差は縮まるどころか拡大した。独走を続けるフルームは、デュムランやピノを含む追走グループから3分20秒のリードで残り10kmアーチを通過した。
1級山岳バルドネッキアの登りが始まっても、すでに70km以上を独走しているフルームのペースが落ちることはなかった。3分後方の追走グループ内ではピノ、ロペス、カラパスがそれぞれ総合ジャンプアップのためにアタックし、デュムランが一定ペースを刻んで追いつくシーンが繰り返される。最終的にカラパスがライバルたちを引き離すことに成功したが、その3分前方ではフルームがガッツポーズを繰り出していた。
80kmにおよぶ独走劇。まさに圧巻の走りでフルームがモンテゾンコランに続くステージ2勝目を飾った。さらにデュムランを3分23秒引き離したフルームは、ボーナスタイム13秒(フィニッシュ10秒+中間スプリント3秒)も加算して総合4位から総合1位に大躍進。自身初となるマリアローザに袖を通した。
「このジロでは苦戦を強いられていたので、何かクレイジーなことをやり遂げる必要があった。これまでのキャリアの中で、残り80km地点でアタックしてそのまま独走で逃げ切るなんて初めての経験。まずはサイモン・イェーツを置き去りにし、トム・デュムランを引き離す作戦だった。チームのお膳立ては完璧だったよ。総合4位から総合1位まで順位を上げるには、最後の登り(バルドネッキア)でアタックしても十分なタイム差を奪えない。だからフィネストレ峠は完璧なアタックポイントだった」。歴史的な独走を終え、マリアローザを着てスプマンテを開けたフルームはこの日の作戦をそう振り返る。
「フィネストレ峠は試走済みだったし、独走に持ち込んでからは正しいペースを刻み続けた。後方の総合ライバルたちはアシストを失った状態だったので、彼らも同様に自らの力で踏まなければならない状況だった。計算の上での走りだった」。
1級山岳が3つ登場する第20ステージを前に、総合2位デュムランとのタイム差は40秒。「明日も厳しい山岳ステージが待っているけど、日を追うごとに脚の状態は良くなっている」と、4度のツール・ド・フランス覇者は語る。誰もが予想だにしない独走で、3連続グランツール制覇のチャンスを強くたぐり寄せたフルーム。この日だけで87ポイントを稼いだフルームは山岳賞でもトップに立っている。
ポッツォヴィーヴォが8分以上遅れたため、デュムランらとフルームを追い続けたピノが総合3位に浮上。14分遅れたローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)に代わってステージ8位のサム・オーメン(オランダ、サンウェブ)が総合トップ10入りした。38分遅れで1級山岳バルドネッキアにたどり着いたマリアローザのイェーツは総合18位まで順位を落としている。また、ヤングライダー賞3位のベン・オコーナー(オーストラリア、ディメンションデータ)は第2追走グループ内でレースを展開していたものの、下り区間での落車によりリタイアを喫している。
ジロ・デ・イタリア2018第19ステージ
1位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 5:12:26 |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) | 0:03:00 |
3位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:03:07 |
4位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:03:12 |
5位 | トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) | 0:03:23 |
6位 | セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマFDJ) | 0:06:13 |
7位 | ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:08:22 |
8位 | サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) | 0:08:23 |
9位 | パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
10位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ) | |
11位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:08:29 |
12位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) | 0:08:38 |
18位 | ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) | 0:14:38 |
79位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:38:51 |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 80:21:59 |
2位 | トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) | 0:00:40 |
3位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:04:17 |
4位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:04:57 |
5位 | リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) | 0:05:44 |
6位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:08:03 |
7位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ) | 0:11:08 |
8位 | パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:12:19 |
9位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) | 0:12:35 |
10位 | サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) | 0:14:18 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) | 290pts |
2位 | サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 232pts |
3位 | ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク) | 119pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 123pts |
2位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 91pts |
3位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 70pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 80:26:56 |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) | 0:00:47 |
3位 | サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) | 0:09:21 |
チーム総合成績
1位 | チームスカイ | 241:43:08 |
2位 | アスタナ | 0:17:06 |
3位 | グルパマFDJ | 0:39:16 |
text:Kei Tsuji in Bardonecchia, Italy