相次ぐ外国人収容者の死。牛久の東日本入国管理センターで何が起きているか

「牛久入管収容所問題を考える会」の方々が抗議 昨今、ネトウヨの皆さんが自慢げに語るのは「日本は素晴らしい国だ」という話です。日本の文化に世界が釘付けになっているとか、日本企業の戦略に世界が震撼しているとか、まるで日本が世界中から絶賛されているかのような言説を述べる人が増えていますが、日本はけっして素晴らしい国ではありません。日本は「人権が守られていない国」であり、「人間が人間として扱われない非人道的な国」なのです。

 これはつまり、北朝鮮やシリアのことを、けっしてバカにできない「恥ずかしい国」に成り下がっていることを意味します。こんなことを言うと「反日だ」と言われるのですが、人権が無視されていることに見て見ぬフリをするなんて、どんな地獄でしょうか。

 この国の人権のレベルを引き上げていかなければ、外国人のみならず、やがては日本人が困ることになってしまいます。我々はもう一度、「人権」を見直す時期に差し掛かっているのです。

ディパク・クマルさんの自殺

 かねてから日本の入国管理局が不法入国の外国人に対し、とても人間として扱っているとは思えないような酷い扱いをしていることは囁かれていましたが、政治に無関心を極める日本では、ほとんど問題視されることもなく、なんとなく見過ごされてきました。

 しかし、ここ数か月で起こった入国管理局でのトラブルは、いよいよ見過ごすことのできないレベルに達したと言っていいのかもしれません。

 牛久にある「東日本入国管理センター」では、かねてから収容されている外国人の処遇が問題視されており、たびたび自殺者や死亡事件が起こっていました。かねてから「東日本入国管理センター」で起こっている人権問題に取り組んでいる人がいたことはいたのですが、あまり人々の目に触れることはなく、粛々と改善を求めていただけでした。

 ところが、昨年3月には体調不良を訴えていたベトナム人を放置し、診察を受けさせず、そのベトナム人はくも膜下出血で亡くなりました。再発防止が求められている中で、今度はインド人のディパク・クマルさんがあまりの処遇の悪さに自殺してしまう事件が発生したため、この国の人権意識の低さに驚き、人々が抗議に訪れるようになり、この人権問題が少しだけ知られるようになったのです。

最初の自殺者は2010年

東日本入国管理センター「東日本入国管理センター」が開設されたのは1993年ですが、2010年まで死亡事故こそ起こらなかったものの、職員による非人道的な扱いは、かねてから問題になっていました。例えば、2004年には難民申請が却下されたクルド人男性が職員と口論になり、押し倒された際に腰や背中を踏まれ、車椅子生活を過ごさなければならなくなりました。もともと腰が悪かったとはいえ、再起不能なほど腰を潰すなんて、明らかにどうかしています。

 しかし、当時の課長補佐は「方法、程度とも正当な職務の範囲内」としており、まったく問題視する様子がありませんでした。ただ、仮放免中の難民たちは、この当時から「入管職員には私たちの人権を分かってほしい」「職員から暴行を受けた」などと証言していました。

 最初に自殺者が出たのは2010年2月でした。25歳のブラジル人男性が部屋の掃除に使うビニール袋のゴミ袋を折りたたんで紐状にし、首を吊って自殺したのです。この時には「ゴミ袋を使って自殺するとは考えてもいなかった。危機管理の徹底などをもう一度図りたい」とコメントしていたのですが、その2か月後には47歳の韓国人男性が自殺を図りました。この様子から見ても、収容されている外国人が自殺をしたくなるほど劣悪な環境であったことが推測されます。

民主党政権下では見直しが図られていた

 2010年に収容された外国人が相次いで自殺したことを受け、当時は民主党政権だったため、国会議員や牛久市議、人権団体「アムネスティ・インターナショナル日本」のメンバーらが東日本入国管理センターを視察。民主党の藤田幸久参院議員はセンター側と話し合い、半年以上の長期収容者について、できるだけ早く仮放免を検討し、仮放免に必要な保証金額も収容者の所持金などを考慮するなど、弾力的な対応を示唆したとしています。

 また、未成年の収容者についても、受け入れ先が見つかり次第、早期に収容所から出られるように協力することなどを確認したといいます。その年の秋には入国管理局が対応を改め、送還予定日を事前に連絡したり、弁護士に無料相談できる環境を整えるなど、一旦は外国人に対する非人道的な対応が改められるようになったのです。

 ところが、自民党に政権が戻り、「日本会議」の思想を色濃く反映する安倍晋三総理のもとでは「外国人=悪」なので、再び収容された外国人の人権が考えられることはなくなりました。こんなに問題になった今でも、およそ考えてくれているとは言えない対応です。

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