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ただいま表示中:2018年5月24日(木)“つぶせ” 危険タックルはなぜ? ~日大アメフトOBたちの証言~
2018年5月24日(木)
“つぶせ” 危険タックルはなぜ? ~日大アメフトOBたちの証言~

“つぶせ” 危険タックルはなぜ? ~日大アメフトOBたちの証言~

「1プレー目でクオーターバックをつぶせば出してやる」「相手がけがをしたらこっちの得」関西学院大学とのアメフトの定期戦で「危険なタックル」を行った日大の選手による衝撃の告白。日大は「つぶせ」という指示をしたことは認めたものの、あくまでけがをさせるつもりはなかったと主張は対立している。しかし、取材を重ねると、内田前監督の選手管理法によって、選手が危険行為を「やるしかない」という心境に追い込まれていった姿が見えてきた。監督の指示を、コーチ、選手はなぜ拒否できなかったのか。その背景に何があったのか。スポーツ界で繰り返される「暴力」「パワハラ」の連鎖を防ぐために何が必要か、OBの証言から検証する。

出演者

  • 森清之さん (東京大学アメリカンフットボール部 ヘッドコーチ)
  • 友添秀則さん (早稲田大学スポーツ科学部 教授)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)
この問題についてはラジオでも緊急特番を放送します。

ラジオみらい会議
「緊急討論  悪質タックルは なぜ起きた
~日大アメフト部問題の背景を問う~」

<放送>
ラジオ第1 5月26日(土)午後1時5分~3時55分
NHKネットラジオ らじる★らじる
http://www.nhk.or.jp/radiosp/miraikaigi/

新証言・日大アメフト “服従”の構図とは?

日大アメフト部OB
「本当に絶対服従。監督が一番上で、逆らえないコーチを集め、そのコーチから逆らえない選手を作る。」

日本大学アメフト部による危険タックル問題。選手を追い詰めたものは一体なんだったのか。監督の絶対的な力が、選手、さらにコーチにまで及ぶ構造が浮かび上がってきました。
監督は、選手の就職にも関与。

日大アメフト部OB
「人事権を持っている監督の言うことは絶対。言うことを聞かざるをえない。」

指示に従わないコーチには、暴力も。

日大アメフト部OB
「監督が選手の前でコーチを殴ったり、そういった場面を選手が見ている。」

こうした支配は、10年以上前から行われてきたといいます。
スポーツ界を揺るがすアメフト問題に、新証言で迫ります。

食い違う主張

鎌倉:連日報じられている今回の問題。タックルを受けた選手は、警察に被害届を出すなど、異例の事態となっています。監督とコーチは辞任。しかし、反則行為の指示があったのかどうかについては、言い分は食い違ったままです。
反則をした選手は、「“つぶせ”という言葉は、けがをさせる意味で言っていると認識していた」。一方、内田前監督は「反則行為は私からの指示ではない」。井上前コーチは「いつもと違うプレーをしてほしかったが、けがをさせる目的では言っていない」としています。

しかし、NHKが入手した音声記録では、内田前監督が試合直後、反則行為を容認するような発言をしていたことが分かりました。

内田前監督 試合直後の音声
“それが反則であるのであれば僕の責任だし、そういうふうに持って行っているから。そうじゃないときついです。悪いんだけど僕のやり方。選手はよくやったと思いますよ。よくないかもしれないけど。”

鎌倉:昨夜の会見など、日大側の対応をどう受け止めたのか、日大アメフト部のOBに聞きました。

電話:日大アメフト部OB
“宮川選手に責任を押しつけて、保身による責任逃れという印象を受けました。私が現役の時も、厳しい上下関係があって、コミュニケーションのかい離はありましたから。自分としても、かなり憤りを感じます。”

“服従”の構図とは?

なぜこの問題が起きたのか。今夜はその構造に迫っていきたいと思います。強大な権力を持っていた監督。暴力まで受けていたというコーチ、そして、絶対服従を強いられていた選手たち。今回、私たちは複数のOBから話を聞きました。このうち3人が、ゆがんだ構造を正したい」とカメラの前で証言しました。まずは、選手たちが直面していた実態です。

“服従”強いられた選手たち

日大アメフト部 反則行為をした選手
「相手のQB(クオーターバック)を1プレー目でつぶせば出してやると言われた。本当にやらなくてはいけないのだと追い詰められて悩みました。」

15年前に就任した、内田正人前監督。選手を「干す」ことが、指導方法の1つでした。有望な選手を練習や試合から遠ざけ、奮起を促すことが、監督の常とう手段だったとOBはいいます。

日大アメフト部OB Aさん(30代)
「すごく真面目な選手を干すのかなというイメージですかね。僕が見たのは数人ですけど、言われたことを愚直に実行するような選手だったりとか、本当にアメフトに対して純粋な気持ちを持っている選手が多い。私が在籍していた当時も、1回干されたりとかするんですね。組織内での自分の立場がどこなのか、ちょっと不安になったりとか、そういう選手が多々いたんですけど、そういう状況に追い込まれると、もっと目立とうとか頑張らなきゃという気持ちに追い込まれると思う。」

さらに別のOBは、選手の卒業後の人生にも監督の影響力が及んだといいます。日大の職員として採用する大きな権限を持っていたのです。

日大アメフト部OB Bさん(20代)
「“日大に就職を就かせてやる”、監督自身がそういった考えがあるみたいで、日大に就かせることが何度もあったので、就職の心配を考えなくてもいいのかなと。現役の時はそういったこと(就職)は大丈夫だと考えていた。」

新証言・日大アメフト “服従”強いられる選手たち

ゲスト森清之さん(東京大学アメリカンフットボール部 ヘッドコーチ)
ゲスト友添秀則さん(早稲田大学スポーツ科学部 教授)

プレーヤー、指導者として日本一を経験し、現在は東大アメフト部でヘッドコーチを務めている森さん。出場機会だけではなく、その後の進路まで監督に握られている中で、選手たちがどれほどのプレッシャーを受けていたのか。森さんはどうご覧になりましたか?

森さん:今回の件でいいますと、宮川選手というのは、各年代のカテゴリーで全日本に選ばれる、日本代表に選ばれるすばらしいフットボール選手で、身体能力もすごく高い選手なんですね。ただ、性格的には非常に、いわゆる「いい人」というか気が優しいというか、それがゆえに、激しいコンタクトを伴うアメリカンフットボールのスポーツのようなスポーツですと、いわゆる闘志をむき出しにしてというところに欠けるということで、もっといい選手になれるはずなのにという、指導者の方の思いがあったと思うんですね。ただ、それが今回、こういう形で相手選手への反則によるプレーでけがをさせてしまったりとか、本人ももうフットボールをやめたいというような、キャリアの問題に発展したりとか、すごく残念なケースだったと思います。

そうしたプレッシャーのかけ方は、今回、誤っていた?

森さん:そう言わざるをえないですよね。これは、こういうプレッシャーをかけても大丈夫な選手、成長する選手もいると思うんですが、今回でいえば、やはり失敗であったと言わざるをえないですよね。

スポーツ倫理が専門の友添さん。OBたちの証言を聞くと、今回の問題は起こるべくして起きたと考えざるをえないが?

友添さん:極めて残念な事件だったと思います。ただ、これは日本のスポーツ集団に特有な構造的な病理が根っこにあるように思いますね。朝から晩まで、合宿所で生活をともにして、自分たちの風土や文化を作り上げていく。その中では自分たちの規範ができてくるわけですね。これはもう往々にして、社会の規範とずれる場合が多いですよね。勝つことを目指していくんだけれども、本当は、実はそうじゃない、お互いにその中で力関係を比べ合ったり、そして上下関係の中で、その頂点に監督が位置づくというようなヒエラルキーができ上がっていくという意味で、病理が生まれてきたんだと思います。

今のVTRで、選手に絶対服従を強いるために「干す」、ある時、その選手を練習や試合から外すということが行われているということでしたが、こうした指導法とは?

森さん:これは、いわゆる昭和の指導法だと思います。確かにこういうやり方で一時代、成功はしたと思うんですけれども、今は時代も変わり、学生たちの気質も変わり、そういう中で同じ指導をするというのは、今、なかなか難しいし、うまくいかないと思いますね。これでプレッシャーをかけたことで、心を病んでしまったりだとか、途中で辞めたりとか、そういう問題も多いですから。今の時代に合った、今の学生気質に合った方法を、なかなかこれ正解はないんですけれども、学生たちと向き合いながら、寄り添いながら、試行錯誤していかないといけない時代になったんだと思います。

友添さんは、国際的なこうした指導法の傾向、状況なども把握してらっしゃると思いますが?

友添さん:今、お話がありましたけれども、「言葉のない世界」、つまり監督が上官で、コーチが下士官で、そして選手が兵隊、その中で言葉なんかない、上からの命令は絶対的である。実はそういう集団ではだめで、本当に成果を上げていくには、科学的な治験にのっとって、しかもなおかつ監督・コーチは対話を重視していくというのが、今、世界的なコーチングの目指しているところで、なぜ今こういう練習をするのか、練習をすることでどんな成果があるのか、いわば説明をして、選手の合意を得て、インフォームドコンセントが終わって、なおかつお互いに共同の中で練習をしていくということが一般的に必要だと思います。

今回はそういったことが行われていなかった?

友添さん:全く逆のことが行われていたように思いますね。

鎌倉:その日大アメフト部の選手たちが強いられていた「絶対服従」の構図なんですが、実はそれは、指示をしていたコーチにも及んでいました。

コーチにも暴力を…

日大アメフト部OB Aさん(30代)
「日大のコーチは、半分ぐらいが日大の職員。人事権を持っている監督の言うことは絶対。自分が生活できなくなるから。それで更迭されたコーチもいる。いつの間に、どこに行ったんだって。その人が帰ってくることは、まずない。子ども、家族がいるコーチ陣は、言うことを聞かざるをえない。」

さらに、自分に従わないコーチに対しては、暴力も辞さなかったといいます。

日大アメフト部OB Cさん
「怖い監督ではあった。選手だけではなく、コーチも思っている。監督が来ない練習ではそこまで言わないコーチも、監督が来た時にはなぜか強い口調に変わったり、選手の前でコーチを殴ったり。見ている選手側も“自分たちのせいでコーチが殴られている”(と思ってしまう)。監督には何もしゃべれない状況になります。」

日大アメフト部OB Bさん(20代)
「絶対服従、ほんとに絶対服従の世界だと考えてますね。その中で監督が一番上で、逆らえないコーチを集めて、さらにそのコーチからは逆らえない選手を作る。」

内田前監督 力の源泉

鎌倉:長年、選手やコーチの上に立ってきた内田前監督。その力の源泉はどこにあったのでしょうか。
日本最大級、学生数7万人を誇る日本大学。内田前監督も、もともとはアメフト部の選手でした。卒業後は部のコーチを経て、15年前に監督に就任。チームを5回、リーグ優勝に導きました。
アメフト部の監督というだけではありません。延べ450人のオリンピック選手を輩出してきた体育会、その全体のトップも務めています。高校から大学に入る際の推薦枠や、特待生の枠を決め、卒業生の就職の世話もしていました。
それだけではありません。内田前監督は、日大グループ全体の常務理事です。人事担当として、系列の学校や病院など、全国およそ7,600人の職員の人事権を握っています。さらに、大学の年間予算およそ2,600億円の承認にも関わっています。日大グループの実質「ナンバー2」ともいわれ、大きな力を持っているんです。

“服従”の構図とは?

コーチに暴力を振るうというところまで、もしやっているとすると、教育に携わる者としての資質まで問われると思いますが、なぜそのコーチが逆らえないような風土ができてしまったのでしょうか?

森さん:これは1つには、日大のアメリカンフットボールのカルチャーも原因があるんじゃないかなというふうに思います。日大は1970年代、80年代に、本当に無敵を誇った栄光の時代がありました。これで一躍名門校になりました。この時は、篠竹監督という、もう非常に偉大な指導者がおられまして、猛練習によって選手を鍛え上げて、強豪チームを作り上げたと。その時、いわゆるスパルタ方式なんですけれども、この篠竹監督のパーソナリティーというか、フットボールに全てをささげる姿勢、これが求心力となって、みんな、猛練習についていったんですね。
ただ、それは時代が変わって、90年代から2000年代に入ると、どれだけ人間的に魅力があっても、徐々にそのスパルタ練習にだんだん選手がついていけなくなって、辞める選手だったり、入部を志す選手がどんどん減って、ちょっと低迷したんです。
その時に、篠竹監督の下でコーチを長くやってた内田前監督が監督に就任されて、チームを引き継いだわけなんですけど。内田監督は新入生のリクルーティングに力を入れて、チームを再建しようとしたんですが、やはりカルチャーとしては、その当時の「選手を鍛え上げて強いチームを作る」ということ。ただ、これは今の時代、なかなかパーソナリティーだけでは求心力になりませんので、そのスパルタ練習についてくるためのその求心力として、1つ、今、説明にあった「権力」というのがあったんじゃないかなという気はします。

スポーツ部の指導者が経営においても力を持つという、この構造はどう作られた?

友添さん:日大の例に限らず、少子化社会の中では、どこの大学も受験生を集めるのに非常に苦労するわけなんですね。それまでは自治的な単なる運動部だったところが、大学にとって強豪校だとか、強豪のチームは、重要な経営資源になっていくわけですね。特にそこの花形の部の指導者だとか、あるいは監督っていうのは、そういう意味でいったら、非常に経営資源を持ってるわけですから、学内的にもパワーを持つようになっていく、力を持つようになっていく。その監督さんが職員であれば、もちろんその職員の集団の中でも大きな力を持っていくという構造が生まれてくると思います。

鎌倉:日大アメフト部の今回の問題、さらにそのすそ野にも影響を広げています。

日大アメフト問題 広がる影響

日大アメフト部に20人以上の選手を送り出してきた、高校の強豪チームです。生徒たちにも動揺が広がっていました。顧問の高濱陽一さん。日大アメフト部に今も所属している、5人の卒業生のことが気がかりです。

足立学園 アメフト部顧問 高濱陽一さん
「日大フェニックスへ行っている子たち、今後、大丈夫なんだろうか。すごく心配しました。フットボールが大好きな子たちのフットボールが断たれてしまって、路頭に迷うことがあってはならないと思っている。」

日大だけにとどまらず、アメフト界全体への影響が広がっているようにも思えるが?

森さん:今回の衝撃的な映像で、初めてフットボールというものを知ったという方も少なからずおられたと思うんですね。その方たちが、自分の子どもにこのスポーツをやらせるかというと、かなりこれはマイナスに働くと考えざるをえないです。ですから、ただでさえ少子化なのに、僕たちはもう本当にスポーツの存続そのもの、この競技の存続そのものに関わる、非常に危機感を持ってます。

“支配の構図” ほかにも…

鎌倉:今回の問題、日大だけが特別ではないと感じている人もやはりいらっしゃるようでして、例えば視聴者からも、クラブ活動などで同じような経験をしたという声が寄せられています。

20代女性
“テニス部のエースだったのに、コーチに嫌われて試合に出してもらえなくなった。理由や疑問を聞ける環境でもなかった。”

女性
“息子の高校の野球部で、体罰を受けている人もいるが、子どもが人質なので逆らえない。”

60代 男性
“サッカー部だったが、指導者に絶大なカリスマ性や偉大な過去があり、反抗できなかった。”

ほかの競技でも、指導者による問題や、いわゆるパワハラ問題もあったと思うが、今、スポーツ界で何が問われている?

友添さん:残念ながら他の競技でも、監督さんのパワハラ、あるいはいじめ問題が大きな社会問題になってるわけですけれども、自分の競技の中だけ、あるいは自分の部内の中だけで閉じこもっている指導者というのは、もう限界がきてて、自分の指導法を、他の指導者、あるいは他の種目、あるいは大学を超えて、みんなで交流を持って、そして新しい指導法の開発をみんなと協力してやっていかなければいけない時代が来てると思います。

そういう中で、競技、あるいは自分のクラブだけのカルチャーを変えていくということですね。

友添さん:そうですね。まずはオープンにしていかないといけないですね。閉じた空間だと、実は密室の行為というのは手がつけられませんのでね。

森さん:まさにこの閉鎖的な構造を作らないということが、僕はポイントだと思います。どうしても特に学生スポーツっていうのは、「任意団体」「課外活動」と位置づけられています。ということは、指導者の人事もほとんどをOB会が握ってることって、実態として多いと思うんです。OB会が握った人事、これが教育の一環としてのスポーツで、本当に指導者として資格のある適切な人を置けるかどうか。これも構造的な問題だと思いますね。

解決の糸口は

鎌倉:指導者によるパワハラといった、クラブという閉鎖された集団の中での問題をどう防ぐのか、そのヒントがアメリカにあるという専門家がいます。
アメリカの学生スポーツ事情に詳しい、追手門学院大学の吉田良治さんです。吉田さんの具体的な提言が、「さまざまな大学を横断する強固な組織を作ること」。この提言のベースにあるのが、全米の大学のおよそ半数、1,100校が加盟するNCAA・全米大学体育協会です。このNCAAというのは、アメフトで相次いだ死亡事故をきっかけに作られたものでして、加盟する大学のクラブの運営を監視する、強い権限があります。さらに、共通の選手育成プログラムを作ったり、指導者を教育して資格を与える権限もあるんですね。吉田さんは、日本でもこういったNCAAのような組織を作れば、クラブ運営が透明化されて、指導者のパワハラを防止することにもつながると考えているわけです。

森さんは競技団体の当事者として、例えばこうしたNCAAのような組織を作るというアイデア、どうご覧になりますか?

森さん:もしこれが、自分が学生だった30年以上前にこういう話があったとしたら、僕は反対してたと思います。僕たちが、自分たちがやっていることに対して、学校だとか、お上だとかが口を出してくるというのは、もうやりにくくなるという、そういう気持ちだったと思うんですね。
ただし今は、僕は考え方ががらりと変わりまして、今の時代、それから学生の変化、これを考えると、こういう組織っていうのは今、必要なんじゃないかなと。こういう構造的な改革が、やっぱりスポーツ改革につながるんじゃないかなというふうに今は思ってます。

友添さんは、世界各国の事情も研究なさってるそうですが、こういったアイデア・団体をどうお考えですか?

友添さん:中学校、高校には実は組織がしっかりあって、教育委員会があったり、親が見たりとか、先生方がしっかりしている。ところが大学っていうのは空白区だったわけですね。そういう意味でいうと、大学のスポーツを統括する、あるいは競技を横断したり、大学を横断したりするような、しっかりしたガバナンス機能を持った組織が必要だと思いますね。ただ、NCAAがいいか、あるいはイギリスで教育を重視した「BUCS」という組織もあるわけですね。

今、国がこれの議論を始めてまして、来年(2019年)の4月から立ち上がるということで、いいものを事例にしながら、そういう組織を作っていく時期に来てるというふうに思っています。

例えばその組織を使って外部の目を入れていく、指導者と選手の関係を監視していくというようなことを、具体的にやっていくということですか?

友添さん:監視よりも、むしろ改善・勧告していく、指導者の質を保っていったり、指導者教育をしていく。あるいは競技偏重ではなくて、学業重視ということも、もちろんアドバイスしていくという組織だと思っています。

今後の対応は

鎌倉:今回の問題の今後ですが、今日(24日)、日大は関西学院大に回答書を提出しました。関西学院大は、この回答を精査したうえで、明後日(26日)、記者会見をして、見解や今後の対応を説明することにしています。

また関東学生連盟は、今月(5月)中には反則行為をした選手や、内田前監督だけでなく、アメリカンフットボール部に対しても処分を検討していることを明らかにしています。

アメフト界としては、今後どう対応していく?

森さん:この日大の今回の一件が収束して、終わりではないと思うんですね。僕はこの問題の本質っていうのは、先ほど来、出てきている、この日本のスポーツ界の構造的な問題というのが本質だと思います。ですから、この改革の第一歩にこれがなればいいなというふうに考えています。アメフト界としても、それを先頭を切ってやっていきたいというふうに考えてます。

競技団体やスポーツ界全体で、こうした問題を防ぐという議論をしていくべき時期に来ていると思うんですけれども。

友添さん:私は、日本人のスポーツ観を変えていかなければいけないと思ってますね。勝ちと負けが、いつも勝負が出てきて、勝ちと負けを足すといつもゼロになるような、こんな誰もが幸せにならないようなゼロサムゲーム、和がいつもゼロになるようなゲーム観はもうやめたほうがいいと思いますね。私と相手はパートナーで、敵ではありません。パートナーとしてお互いに協力しながら、より高いパフォーマンスを目指していく、お互いに高め合っていく。大学スポーツは教育の一環ですから、そういうスポーツ観を大学から発信していく必要があるというふうに思っています。

それは、スポーツを見るわれわれも、そういうことは意識していくべき?

友添さん:国民全体で、やっぱりスポーツ観を新しく作っていく必要があると思っています。

なんの落ち度もない選手がけがをさせられた、今回の事態。反則行為は決して許されるものではありませんが、選手を追い込む構造的な問題も浮かび上がってきました。今、指導の在り方をスポーツ界全体で見直す機会にすべきだと思います。