スタートアップやMakerにもオススメしたい専門施設
スタートアップやMakerの強い味方——試験のことで困ったら都産技研にGO!
開発の最後に要件が確保されているか確かめる重要な工程である試験。しかし、試験の重要性を理解していても、製品の目的から要求された性能や性質に対してどのような試験内容が必要なのか、専門的な知識が必要となり、悩んで後回しにしがちである。スタートアップやMakerは高価な試験装置を自前でそろえるのが難しいため、簡単な試験で済ませることも少なくないようだ。せっかく開発した製品だからこそ、要求に対して適切な試験を実施し、製品のクオリティをできるだけ上げていきたい。
そこで、試験機器や加工機を豊富にそろえ、さまざまな分野の要求や製品、材料の安全規格に対して必要な試験や測定、分析を行ってくれる公的な機関がある。そのひとつが、公設試験研究機関の東京都立産業技術研究センター(以下:都産技研)だ。
700台以上の豊富な試験機器と加工機を取りそろえる
都産技研は、産業技術に関する試験や研究、技術支援などにより中小企業の振興を図り、都民生活の向上に貢献することを目的として、東京都が2006年に地方独立行政法人化した公設試験研究機関である。都内の中小企業だけでなく、日本法人や日本の個人事業主であれば、誰でも利用できる。過去5年間で2万5500の事業所が利用した。ハードウェアスタートアップや個人事業主からの問い合わせや利用も増えており、幅広い企業規模の事業所が利用している。
施設は本部(江東区青海)の他に、城東支所(葛飾区青戸)、墨田支所・生活技術開発セクター(墨田区横網)、城南支所(大田区南蒲田)、多摩テクノプラザ(昭島市東町)、バンコク支所(タイ王国)の6カ所あり、試験機器や加工機は合計700台以上を取りそろえている。試験機や加工機の利用方法は、専門の試験担当者に依頼する「依頼試験」と、試験機器や加工機を利用する「機器利用」等があるが、どの試験装置を利用して、どのような試験内容を実施する必要があるか分からない人も少なくない。都産技研では、総合支援窓口に担当職員を配置し、試験や技術開発の無料相談を行っている。
「まずはお電話か技術相談受付フォームから総合支援窓口にご連絡いただければ、無料でご相談に乗りながら製品の要件に対して必要な試験内容をご提案できます」(技術経営支援室室長 山田一徳氏)
依頼試験の大まかな流れは、電話かWebサイトで問い合わせる。訪問の上、試験内容や料金を決定し試験を申込む。その時に試験品を渡して料金を支払った後に、試験が実施される。
依頼した試験が無事に終われば、後日、試験結果を書面で受け取ることができる。依頼が混んでいるときは1カ月以上かかるが、試験内容や試験装置の空き状況によっては2~3日で結果がでることもあるそうだ。
中小企業のための依頼試験や機器利用の料金設定
機器利用には、試験機器や加工機の設備があり、ものづくりで利用頻度が高いとされるレーザー加工機も、都産技研では基本料(最初の30分)の一般料金が3003円、中小料金は1573円になる。一般的なメイカースペースでは2000~3000円の利用料金が掛かることもあるのでお手頃だ。
また、メイカースペースでは、加工機を利用する前に使用方法についてレクチャーを受けなくてはならないことが多いが、都産技研では、ライセンス取得が必要な一部の機器を除いて、専門の研究員が試験方法や機器の利用方法をサポートする。慣れていない複雑な機器でも安心して作業に取り組むことができる。内容により指導料や調整準備料が加算されることがあるので詳細は確認して欲しい。なお、加工などの作業は試作品の製作に限られている。
アンテナ測定システムやレーザー加工機の他に、小型から大型までさまざまな試験装置がある。こちらは電力用機器や電気工作物の絶縁性能の試験が可能な交流高電圧発生装置。
(右)JIS C 0920:2003のIPX3,4に準拠した防水試験を実施する防水試験機。
(右)回路基板、電子部品等の表面温度を計測するサーモグラフィ。
(右)電子機器の透視検査およびCT撮影が可能な大型X線CT装置。
(右)製品の放射する電磁波が規制値を超えていないか測定する放射エミッション測定システム。
試験の他に、金属やガラス、セラミック、プラスチックから繊維までを対象にしたUV厚手対応プリンターやシール作成機、モーションキャプチャーシステムや3Dデジタイザー等も利用できる。
(右)人体の3次元形状のデータ化する3Dデジタイザー。
このように、加工機を利用して試作品を作ることや、人体やモーションをスキャンしてデータ化することもできる。スタートアップやMakerが自前で導入するのが難しい機器も多数そろっており、ぜひ活用していきたい。