低炭素から脱炭素。世界の流れ。六年ぶりに改定された環境基本計画も、脱炭素化社会を目指す。推進力は再生可能エネルギー。スタートダッシュの遅れを取り戻すには、地域の力が欠かせない。
国の環境政策の指針となる環境基本計画は、およそ六年ごとに見直され、今回が四度目の改定だ。
今回は、国連が国際社会が解決すべき「持続可能な開発目標(SDGs)」を世界に示し、温暖化対策の新たなルール「パリ協定」が採択された二〇一五年を「転換点」と位置付けた。
この年世界は、化石燃料から再生可能エネルギーへと推進力を切り替えた。地球温暖化や原発事故への危機感を共有し、脱炭素化社会への大転換が始まった。
新基本計画は、世界の流れに沿った転換を国内で促すための指針でもあるべきだ。その象徴が<目指すべき社会の姿>とされた「地域循環共生圏」の創造だろう。
<各地域がその特性を生かした強みを発揮、自立・分散型の社会を形成、地域の特性に応じて補完し、支え合う>ことだという。
例えば電力。南北に細長く、起伏に富んだ日本列島は、気象条件もさまざまで、温室効果ガスを出さないクリーンな資源を豊富に秘めている。
地熱や波力、バイオマス。新基本計画にも登場する雪氷熱や温泉熱、海水熱、河川熱、下水熱など“未利用資源”は枚挙にいとまがない。地元の資源を使って地元で電気を開発し、きめ細かく送電網を張り巡らせて、互いに融通し合いましょうというのである。
火力や原子力は、いわば中央集権型、風力や太陽光は地方分権型のエネルギー。太陽や風、大地の恵みは無尽蔵、しかもタダ。石油やガスに依存しながら、老朽化が進む原発の延命を図るより、はるかに安全、安価である。
電力だけのことでもない。食べ物の地産地消や、都市機能を中心市街地に集約するコンパクトシティーのデザインなどについても同様に、主役は地域。欧米では温暖化対策も自治体主導で進む。
さまざまな地域資源を発掘、活用し、足りないものは分かち合う。そうやって今のこの豊かさを次の世代へ伝えていこう、脱炭素化を実現し、持続可能性を維持しよう-。
大転換期の基本計画。実現のかぎを握るのは、企業を含めた地域の力、自治の力にほかならない。
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