ADHDは注意欠陥・多動性障害のことだ。最近ではADHDという言葉もかなり浸透してきた。
だがそのイメージはというと、すぐに気を散らして、じっとしていられない。良く物をなくしたり、やたらと話が飛ぶ人といったマイナスのイメージを想像することだろう。
そんなことちっとも気にならないという人もいるだろうが、中にはADHDの人の相手をするのは耐えられない。むしろ悪夢だと考える人だっている。
ところが、私たちのイメージは必ずしも正しいとは限らない。例えば、強迫性障害の人はいつも綺麗にしておかないと気が済まないや、内向的な人は人付き合いができないといったイメージは典型的な偏見である。
ADHDもまた脳の多様性の一形態だ。精神科の医師であるペルペツア・ネオ氏は、その違いをレッテルにしてしまうのではなく、有効活用する術を学ぶべきであると訴える。
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常に落ち着かない=エネルギッシュ 短所は長所でもある。
ADHDの人は、じっとしていることができず、常に動き回っている、あるいは集中力が続かず、一つのことを完了できないといったマイナスのイメージで見られがちだ。
なぜなら、ほとんどの教育環境はじっとしている人に合わせて作られているからだ。社会とは本質的にそのように運営されるように作られている。
「ところがADHDの子供はエネルギッシュに動くことができるというのに、それに苛立つ人がいるという理由で無視されてしまいます。でも子供がじっとしていないのは授業が退屈だからです」とネオ氏。
そうした子はいわば少数派だ。しばしば完全にお手上げとなり、クラスの底辺へと追いやられる。いずれにせよ、ADHDの子は無視される傾向にあり、このために成人してからも自信を持てずじまいになる。
彼らが活き活きできる環境でないところで、ただ座っているよう命じても、不安を抱かせ、自分自身について恥ずかしいと感じさせるだけだ。
定住者と冒険者
ネオ氏は、ADHDについて人類に必須の差異のようなものだと考えることができると話す。なぜなら社会には”定住者”として生きる人間と”冒険者”として生きる人間が必要であるからだ。
定住者は一所に留まり、それに満足する人のことで安定を好む。しかし冒険者は、新しい土地を制圧し、チャンスを掴もうとする。
長い時間の間には必ず災害や天災が起こります。なので、新しいチャンスや土地をものするためには前進する冒険者も必要なのだ。ADHDの人たちは前進する。
これはリスクを取り、新しいことに挑戦するということだ。彼らはいわば冒険者なのだ。ADHDの人たちが様々な話題についてよく知っているのはこういうわけだ。
「脳が非常に活発であるため、とてもクリエイティブです。だから普通の人なら思いもつかない風変わりなアイデアを試してみたくなります。」
「ADHDの脳は好奇心旺盛であるために、博識になるかもしれません。とても柔軟かつ創造的です。また取り憑かれたかのように没頭します。こうやって新しいフロンティアにチャレンジするのです」
ADHDならばまずは20分だけ集中しよう
座って作業するような場合、ADHDの人はなかなか集中できず、先延ばしにしてしまう。ネオ氏が勧めるのは、一度に20分だけ作業をすることだ。
大切なのは、費やした時間の長さではなく、その時間をどれだけ有意義に使ったのかである。ADHDの人は類い稀な集中力を発揮するため、この短く区切られた時間で多くの成果をあげることができる。
「ADHDの人の武器はまるで時間を曲げてしまえるかのような能力です。20分のように時間が限られていると、脳のギアが入ります。すると行動の閾値(いきち)を超えるので、その20分で超人のような成果を出せます」
身近にADHDの人がいた場合の対処法
身近にADHDの人がいるなら、あなたとは脳の回路が少々異なっているということを知っておいたほうがいい。
その違いを理解すれば、あらゆる人間関係において妥協点を見出すことができる。だから、あなたは自分の周囲にいる人との妥協点を探るべきだ。
例えば、相手に少しゆっくり話してもらうようお願いすることができる。あるいは少し落ち着きたいと考えているなら、彼らの野心的なプロジェクトは数時間ほど置いておくよう勧めてみてもいい。
「こうした妥協は人間関係の潤滑油で、相手をやり込めるためのものではありません。これによって人間関係が円滑になるでしょう。」
ADHDかどうかに関わらず、人間関係の基礎は相互理解であり、攻撃ではないのだ。
References:.sciencealert/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1.
2. 匿名処理班
細かい物を多く積み上げるとかね。早稲田の試験みたく。(この場合、健常者は慶應となるが。)
3. ADHDの会社員
ADHDに関する記事って大抵こういうふんわり柔らかで何が言いたいか全く伝わらない内容になるよね。
4. 匿名処理班
40過ぎてからADHDと診断された俺はどうすればいいですかね?w
とっくに手遅れだと思うんですけどw
5. 匿名処理班
逆に言えば人の多様性がちょっと逸脱したものを病気って言ってるのが昨今の風潮なんだよね
医療化っていうらしいけど
6. 匿名処理班
一口に「身近な人」と言っても学校の同級生や会社の同僚、家族では当事者とそれぞれ関わる距離が違うのでひとまとめに言ってはいけない。
7. 匿名処理班
「ADHD(注意欠陥・多動性障害)は脳の多様性の一形態」確かにその通りだと思う。
例えば、オーケストラにはものすごく大きな音を出す楽器もあれば、かなり小さい音を出すものもある。
こういう、いろんな音の「個性」を有する楽器が一つ一つ組み合わされて、「交響曲」が完成する。
ADHDもこういう「楽器」の一つだと思えば、生かす道も見つかるんだろう。
8. 匿名処理班
ADHDと言っても人によって程度は様々
幼少期の養育によって日常生活支障がでないくらいまで改善するって話もある
結局この医者もそれぞれの違いを無視してぜんたいをレッテル張りしてるように見える
9. 匿名処理班
なかなかいい記事でした!
自分の子供にそう言った障害が無いといい、みたいに心配していた時期もありましたが、こういう考え方を育児書や出産の手引書に載っているといいんじゃないかなー。
10. 匿名処理班
結局、相手は「変われない」から、こっちが妥協していくしかないんだよね。
正直に言うが、相手が赤の他人ならさっさと関係切りたいよ。
11. 匿名処理班
短所は長所にもなる、、なんでもそうだね
12. 匿名処理班
人の長い歴史の中で彼等は必要だよ。
蛸やナマコやキノコを真っ先に食べてくれた。
で「どれが安全でどれくらいなら死なないのか」身をもって教えてくれたのさ。
(だって止めても無駄だもの、色々理由をつけて食べるんだ)
いまでも賞味期限が切れたモノを「大丈夫、大丈夫」食べるしね。
13. 匿名処理班
ADDとうまくつきあう方法も知りたい
14. 匿名処理班
※13 カラパイアの過去記事にある。 もし彼女がADHDだったら?意外と身近にいる女性のADHD、その特徴と付き合い方
http://karapaia.com/archives/52240944.html
15.
16. 匿名処理班
いわゆる「発達障害」は、人類が進化の過程で獲得した形質の一つだと思うんだよ。全員が「健常者」である集団よりも、一定の割合でADHDやASDなどの「障害者」を含む集団のほうが、生存率が高かったのではないかと。本来は障害でも病気でもなくて、一定の割合でそういう個体が生まれるような遺伝子になっているんじゃないかと思うんだ。
たとえばオスとメスだって、人間はだいたい1:1の割合で生まれるようになっているけど、生物によってはその比率が偏っていたり、卵にいるときの温度で性別が決まったりする。それは、そういう仕組みがその生物にとっては生存に有利だったので、そういう方向に進化したということだろう。
17. 匿名処理班
学者、研究者、スポーツ選手、芸術家にはADHDが多いって事で良いのかな。でも、上で挙げられている特徴なんて血液型占いや星座占いと同じ位バーナム効果によってそう思い込まされているだけだと思うけどなぁ。
上で挙げられている疾患の大半に言えることだけど、何か問題が起きた時に相手に疾患を当てはめて事の全貌を理解しようとする行為は、自分や環境が抱えている問題を正しく観察して分析することが出来ないが故に、反抗して来ないような社会的弱者に(若しくは反論されない様に自らの内で)全ての原因を押しつけてるに過ぎないよ。要するに自省をしない。
最近の若者は、老害はとかいうフレーズも大体これと同じ理論だよね。
専門家の言葉を借りた口喧嘩をしてるに過ぎないんだよ。
18.
19. 匿名処理班
パルモ 注意欠陥も、多動性の疾患も元々はみんな有るんだよ あるのかな? それはわからない メディアがこの時期に今上げてるけど あまり流行語にしても、私は辛いかな 何故か 複雑過ぎ それが目に見える時代になると嬉しいけど なってもどれだけ現救えるかな 色んな疾患を見てきたけど、かなりなのテーマだと思うよ。
20. 匿名処理班
たしかに過集中で人の数倍の力が出せるけど、数倍疲れちゃうんだよな。みんな、私みたいに体壊したりしないよう、過集中後は安静時間取ろうな!(診断済アスペでADHDです)
こういう脳って車で例えるなら、スポーツカーとか、クレーン車とかミキサー車とか、トンネル掘るドリルの車とか、そんなちょっと特殊なはたらく車なんじゃないかって、最近つくづく思う。
燃費は良くないけど、特化した性能を生かす場所でなら普通の車にできない成果を出せる。でも特化性能以外の性能は落ちちゃいがちで、全力出しても普通の車ついてけないことも多いし、乗り心地(人付き合いのうまさ)も一部の例外のぞいて良くないことが多い。
あと、使い続けるならメンテナンスが普通より大事なの。
それでも必要とされる場所はあるし、愛されることがある。
生きような、みんな。
21. 匿名処理班
俺がさ、疾患あるから、腫れ物触る様に言ってしまったけど、だいたいあるよ。みんな。