カップリング:シャルル×マリナ
若いシャルマリの、シャルルの誕生日の話。
鍵付きじゃないですが、エロいので苦手な方はお気を付けて。
成人の日の話から続いてます~。シャルル21歳の誕生日ってことですね。
「Faux Histoire」を読んでいないかたは、できればそちらからお読みください。 →目次
またもし読んでいない方がいましたら、「ご案内」に目を通してください。
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去年と違うのは、あたしも大人になったこと。
去年は、あたしはまだ子どもだった。
こういうのは年齢じゃないのかもしれないんだけど、きっかけって必要なのよ。
そしてシャルルとそういう関係になって、それなりの時間が過ぎたってこと。恋人同士にも、時間が経つと倦怠期が来るんだって言うのよ。
……薫がね。
日本から帰ったとき、空港まで運転手さんといっしょにわざわざ迎えに来てくれたんだけど……
「どうだい? 久しぶりの日本での夜は燃えたかい?」
車に乗る前に、こっそりそんなこと言うのよ。いや、シャルルに聞こえるように言わないだけマシなんだけどっ。
そりゃもう、思い出しちゃって、真冬なのに汗かくほど暑くなるわ……
もちろん、燃えました、なんて言えるわけないっ。
「そ、そんなことあるわけないでしょっ」
「おやおや、マンネリは打開できなかった? 倦怠期の刺激には足らなかったか」
「夫婦じゃないんだから! 倦怠期ってどうなのよ」
「恋人だって倦怠期はあるだろ?」
「……倦怠期ってどうなるものなの?」
「そりゃ飽きてくるのさ」
飽きて……
……悪代官シャルルを思い出した。
やっぱり普通のに飽きてたから、着物が新鮮だったのかしら。
「飽きるの?」
アレって飽きるものなの……って、違うわっ。
飽きるっていうのは、あたしに飽きるってことじゃないのっ!?
はっとして、青ざめたわっ。
「あっ飽きたのかしらっ?」
その意味がわかって薫にしがみついたら、薫ったらにまにま笑うのよっ。
「そこんとこはあんたのほうがよくわかるだろ? どうなんだい?」
どう……
って考えこんだところで、シャルルに呼ばれちゃったの。
「マリナ、なにこそこそ話してるんだ。帰るぜ」
ちょっと不機嫌そうなのは薫と内緒話してたからだと思うの。
あたしに飽きたからじゃないと思うのよっ。
でも、あたしはドッキドキっ。
「い、今いくわっ! ……薫、あとでね」
「いいよ、あとで」
薫はやっぱりニヤニヤしながら、そう言った。
それで、お屋敷に帰ってから薫と倦怠期についてこっそり語った。
薫は、新鮮な刺激が倦怠期には必要なんだって言うの。
あ、あたしには必要ないのよ?
シャルルが倦怠期じゃないかしらっていう、ちょっとした心配っていうかね……
薫は今まで年単位でイチャイチャしてきたのが、ずっと本当に普通のイチャイチャだったってことにびっくりしたとか言うのよっ。おもちゃでも使ってみたらって言われたけど、でもそのおもちゃってあたしに使うもんじゃないっ。
あたしは倦怠期じゃないんだってばっ!
シャルルを飽きさせないための、新しい刺激なのよ。
でも勉強するにしても誰かと実践するわけにはいかないから、DVDを買ってくれたの。……薫が。
それで勉強したわ。
だって日本から帰ってきたら、もうシャルルの誕生日は目の前だったんだものっ。
きっかけって必要なのよ。
それまでしたことないことをするためにはっ!
そんなわけで、シャルルの誕生日当日。
アルディ家にしてはささやからしい誕生日のパーティーがあって、まだ表向きは仲良しのミシェルとシャルルの共同開催だった。
ビジネスのお付き合い半分、身内向け半分のパーティーだからって、あたしももらった振袖でパーティーのすみっこで料理をもらったのよ。おいしかったわっ。振袖じゃなかったら、もっとたくさん食べられたのに、惜しいっ。
でも社交界のパーティーじゃないのにシャルルとミシェル狙いの女の子がたくさんいて、ミシェルもシャルルもあしらうのが大変そうだったわ。シャルルなんか最初からあんまり機嫌良くなかったのに、二人ともどんどん機嫌悪くなっちゃって、シャルルの周りに女の子がっ! ……なんてヤキモチ妬いてる場合じゃないって感じ。
結局、予定の半分くらいの時間で二人とも退場。
シャルルが自分は退場するのにあたしが残るのを許すはずなくて、もちろんあたしも退場……うっうっ、お料理はまだまだあるのに惜しいわっ。
ともあれシャルルに連れられて、戻る部屋はシャルルの寝室。
そして部屋についても、シャルルは不機嫌のまんま。
「……マリナ」
振袖のまま、部屋に入った途端に抱き締められてドキドキする。
やっぱり着物が新鮮でいいのかしら……
「君からプレゼントがどうしても欲しいと言うつもりはないんだが」
「あら?」
そっち?
「……なんだ、その反応は」
シャルルは目を眇めて、あたしの顔を覗き込んできた。
「あ、ううん。えーと……シャルルってば着物が新鮮で刺激的だったりするのかしらって思って……」
「なんだい、それは。確かに君、着物似合うけどね」
「ねえ、あたしがプレゼントあげなかったから、今日、機嫌悪かったの?」
そう訊いたら、ぷいってシャルルは顔を背けた。
「どうしても欲しいって言うつもりはないよ」
……ほしかったんだ。
「ごめんね、形に残るものは用意してなくて」
「形に残らないものなのか」
うーんと、残らない、わね。
うん、と頷いたら、ふーんってシャルルが答えた。
あたしを抱き締めてた腕が、帯を解き始めてる。
くれともなんとも言わずに、そういう行動に移るって、それってつまりどういうことかわかってるってことかしら。
そう思ったら、もう恥ずかしいんだけどっ。
「えっと」
「なに?」
「なにがプレゼントだかわかってる……?」
「具体的になにかはわからないが、どういう系統のものかは見当が付く。全部ではないということも」
全部とかむりよっ!
DVDに入ってるのは、一通り見たけどっ!
「ひ……一つずつよ。初心者なんだからっ」
「君から言い出してくれることは期待してなかったから、一つずつで十分嬉しいよ」
シャルルがちゅってキスしたら、それを合図にしたみたいにばらっと帯が床に落ちた。
「ただ、一つだけ確認はしたい」
「なに?」
「なにで勉強したのか」
「DVDよ。薫にもらったの」
「なるほど……あの男女が君になにか吹き込んだんだな」
「いけなかった?」
「君が他の男の裸を見るのは微妙だが、仕方ない範囲だと思うことにするよ。誰かで練習されては困る」
「そんなことしないわよっ」
そう言ってるうちに振袖を脱がされて、今日もやっぱり肌襦袢だけになった。
「……シャルル」
「なに?」
あたしも聞いておかなけりゃって、シャルルを見上げた。
「あたし、もっと早くにこうするべきだった?」
「君に無理強いするつもりはなかった。だから一生しなくても、文句を言うつもりはなかったよ」
「……してほしかったのよね?」
「それはもちろん」
シャルルが予想以上に真顔だったから、ごくりと息を飲んだ。
「君がオレを愛してくれることには、オレが君を愛する以上の価値があるからね」
愛か……愛ね。愛がなければ、できないわよね。
シャルルを飽きさせない新鮮な刺激。これって、シャルルを喜ばせようってことなんだもの。
「頑張るわ。これからは、あんたを飽きさせたりしないから」
「…………」
あたしは決意を唱えたのに、シャルルは顔を顰めた。
「どうしたの? シャルル」
なんでそんな怪訝な顔をするのか。
「今のはなんだ?」
「倦怠期だったんでしょ? 薫が言ってたわ。恋人でも飽きてくるんだって」
「飽きた? オレが? 君に? 馬鹿を言うんじゃない。そんなことあるわけがないだろ」
……あら?
「違うの?」
「違う。一生、君に飽きたりするものか。あの男女、適当なことを吹き込んで……マリナ、君も君だ。オレが君に飽きたなんて信じたのか」
えっと……
「だ、だって」
「心外だ。オレにあんなに抱かれても、疑うのか? 君にオレの生涯の愛を信じてもらえないとは。君の体には十分な満足と、それを十分受け止めて感じられるようにしてきたつもりだったのに、まだ足りなかったってことか」
え、いや、体には十分……
「もっと君の体に理解させないと」
いやいやいや!
もう十分だからっ!
「オレも頑張るよ。君がしてくれるって言うんだから、もちろんこれからはそういう技術を教えることも含めてね」
あたしっ、プレゼントどころじゃないんじゃないのっ?
だっ大丈夫なの――っ!?
……ええと、結論だけ言うと、あんまり大丈夫じゃ、なかっ……た……わ……