ただ、これが人民日報系でもタカ派的傾向がある「環球時報」では、ややトーンが異なってくる。
4月16日付けの評論「中日関係改善 取り組まない側が愚かだ」では「過去7、8年の中日関係の低迷や摩擦により、お互いが消耗し、両国が国際的な戦略を発揮する上でマイナスの影響をもたらした」など、中国側にもマイナスだったと認めている。
だが「中日関係の緊張をもたらした核心的問題は中国の台頭だ。日本は中国が急速に自らを追い抜き、アジア第1の強国となったことに深刻な不適応を示し、中国と対抗し、中国台頭を抑え込むのに積極的だった。中国社会は日本のこうした反抗の心理を拒絶し、日本の傲慢を一掃することに固執した」とした。
さらに「だがこの8年間の衝突は徐々に過去のものとなっている。中国経済の総量が日本はもはや逆転が不可能な状況となり、中国の自動車、携帯、家電などの市場規模が日本を遥かに置き去り、高速鉄道や高速道路建設も日本は中国と同等に語ることができなくなった。日本社会はこうした両国の格差に徐々に適応し、中国とアジアのトップを争う心理は瓦解を始めた」とした。
そして「米国一辺倒の方針は日本に多くの損失をもたらし、日米関係が緊密になる一方で日本の米国従属が強まり、米国は日本をはばかることなく日本から搾取し、日本に指図し、日本が望んだ(米国による)中国押さえ込みは全く効果がなかった」と指摘した。
この文章は「中国にとっても(自らと)対立する日本を友好協力する隣国へと変えることは百利あって一害もない。中日間には厄介な問題もあるが、両国関係を好転させるのは緊張関係を続けるよりも気が楽である」「中国は米日同盟を変えることはできないが、同盟の中国への攻撃性を日本の方から弱めることは完全に可能だ」と、米中間で日本を自らの側に取り込むことは可能だとしている。
言い換えれば「これからは中国の時代だと、日本も分かっただろう。無駄な反抗はせずに、中国の側に付け」というようなもので、明らかに上から目線の物言いだが、ここまでは中国の本音は、まあそんなものだろうと理解することはできる。
だがより露骨な言い回しで、中国側の一方的な主張をまくしたてた文章もネットにはある。その1つが李首相訪日後に出た「雲石」というペンネームの「中日関係はなぜ新局面になったのか」という文だが、ここでもやはり「中日両国の争いの深層にあるには両国の国力の逆転の連鎖反応だ」として、「2010年、中国経済は日本を追い抜き、その差は拡大、昨年中国のGDP は日本の3倍となり、この100年ぶりの形勢変化は、日本に巨大な危機感を生んだ。歴史的な宿怨や現実面での多くの衝突から、日本は自分に実力があるうちに地政学的な利益を守り、中国の台頭を抑え込もうとした」とした。
このため「自由と繁栄の弧」という台湾、東南アジア、インド、オーストラリアと組んだ中国囲い込みや、経済面での環太平洋経済連携協定(TPP)による中国の締め出しを図ったものの、7年間の情勢の変化は日本の願いとは反対の方向に進んだとした。