image credit: Wikimedia Commons
メキシコ北西部のバハ・カリフォルニア・スル州には変わった特性を持つサボテンが存在する。
地元ではクリーピング・デビル(地を這う悪魔)と呼ばれていて、成長すると片端だけが伸び、枯れたほうの体の一部を切り捨てながら、時間をかけて砂漠を動き回るのだ。
スポンサードリンク
和名は入鹿(いるか)
学名Stenocereus eruca(和名:入鹿)というこのサボテンは、メキシコ北西部のバハ・カリフォルニア・スル州固有のユニークな植物で、動き回るサボテンとして知られている。
ちなみに和名の「入鹿(いるか)」は、日本にこれを持ち運んだ学者が、「サボテンの横たわる姿が、蘇我入鹿(そがいるか)が倒れる姿に似ていたから」この名になったと言われている。「地を這う悪魔(クリーピング・デビル)」より幾分マシかもしれない。
image credit:Pamla J. Eisenberg /flickr
生き残るため。砂漠を移動する独特な能力
空に向かって垂直に成長するほかの一般的なサボテンと違って、このサボテンは先端だけをわずかに上げて地面に這いつくばって生きる。
こうした体勢が、この植物が単独で生き残るのに大きな役割を果たしているだけでなく、長い年月の間に自らの力で砂漠を移動する独特な能力を育んだ。
この地域が寒冷な海洋気候だった時代、クリーピング・デビルは毎年約60センチほど成長し、その棘だらけの幹で近寄る者を阻む大きなサボテン群を形成していたと思われるが、乾燥した気候になると、その成長率が10年に60センチというペースに落ち込んだ。
バハ・カリフォルニア・スルという限られた環境になっても、この多肉植物は受粉媒介者の助けをかりることなく、自分で自分のコピーを作るという生き残り策を選んだ。
地面と平行に這うように成長しているうちに、クリーピング・デビルの幹は先端に向かって根をはるようになり、砂の多い土壌にしっかりと根づくと、後方の古い部分が死んで腐り、最終的に新しい幹が育つための栄養分になる。
こうしたプロセスを経て、このサボテンは長い間に砂漠を這いまわることができるようになった。ある意味、このサボテンは生き延びるために死ななくてはならないとも言える。
image credit:Raffi Kojian/CC BY-SA 3.0
現在は絶滅危惧種植物
クリーピング・デビルはとても魅力的な植物だが、現在、絶滅の危機に瀕している。希少種ゆえに、サボテンマニアが莫大な金額を投資して、自分の庭の多肉植物コレクションに加えようとするのだ。
闇市場で4000~5000ドルで売られることもあるという。だが、違法取引だけがこのサボテンが直面している脅威ではない。
棘だらけのサボテンが地を這って広がり、バリケードのようになってしまうため、草を食む家畜にとって厄介な存在なのだ。
image credit:Raffi Kojian/Gardenology
農場主がその都度このサボテンの群生を破壊したり、作物の農地を整えるために根こそぎ駆除してしまうこともある。
クリーピング・デビルは、現在メキシコの絶滅危惧種植物のリストに入っている。
ここ数年と同じような状態が今後も続いたら、このユニークなサボテンはバハ・カリフォルニア・スルの海岸を横切ることができなくなるかもしれない。余計なことをしなければ、100年は生きられるだろう。
Succulents: Stenocereus Eruca The Creeping devil
References:wikipedia / odditycentral/ written by konohazuku / edited by parumo
あわせて読みたい
今、あなたにオススメ
Recommended by
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「知る」カテゴリの最新記事
- ツイッターは憤怒、ネットフリックスは怠惰。「七つの大罪」をネット社会にあてはめてみたら?
- 肉汁ジュワーで食感も味も本物の牛肉。オランダの企業が植物100%のビーフステーキを開発。受注販売開始
- マジなのネタなの?暑すぎてトラックに積んでおいた卵が孵化した件(中国)
- 人工知能(AI)が人類を驚愕させた10の瞬間
- 日本の子どもの数が37年連続して減少、過去最低を記録。それに対する海外の反応
- 絶滅したと思われていたかわいい生き物「カンガルーネズミ」が32年ぶりに発見される(メキシコ)
- 罪と罰を知る。世界8つの犯罪博物館
- 隠し財宝が現実のものに!?裏庭で発見した金庫にお宝がザクザク入っていた件に関するツイッターの反応
「植物・菌類・微生物」カテゴリの最新記事
- トマトは危機が迫ると事前にそれを察知し、毒性物質を作り出し防衛に備える(米研究)
- その見た目、透明なキャビアのごとし。世界各国のシェフが大注目の高級フルーツ「フィンガーライム」とは?
- 150年ぶりに発見されたエイリアンじみた植物「ティスミア・ネプトゥニス」(マレーシア)
- 脳が大きいほど筋肉が少ないことが霊長類の研究で明らかに(米研究)
- 複眼に映る花々はこんなにも美しくて神秘的!不可視光を見る昆虫たちの独特の視覚を再現
- 世界一孤独な樹木。ニュージーランドの最南部にあるキャンベル島に1本だけある針葉樹、ベイトウヒ(シトカスプルース)
- 麻酔にかかる植物。ということは植物にも人間のような意識があるということなのか?
- 夜は枝の先端を下げて眠る。世界で初めて眠る木々の姿を観察(ハンガリー研究)
この記事をシェア : 240 42 5
人気記事
最新週間ランキング
1位 2551 points | 幼少期につらい経験をした子供は創造性が向上するという研究結果(米研究) | |
2位 2400 points | プーチンよりも先だった。完成した40億ドルのクリミア橋を最初に渡ったのは猫 | |
3位 2216 points | 犬ってやっぱりすごい。犬と過ごすことでチーターの緊張と恥ずかしがりが改善されるらしい。 | |
4位 2012 points | ドーナツ店でトイレの使用を断られた女性、レジ前でうんちっち、でそれを店員に投げつける(カナダ) | |
5位 1782 points | タコは宇宙由来?数億年前に宇宙から卵の状態で地球に飛来したとする論文が発表される(国際研究) |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
このサボテンと共生して依存している生物群もいるんでしょ?
2. 匿名処理班
なんでそがのいるかさんなんだよう
センスぶっ飛んでません?
3.
4. 匿名処理班
定点カメラの早送りで成長と移動を見てみたいな
5. 匿名処理班
庭に植えても逃げ出すんじゃないか
6. 匿名処理班
止まるんじゃねえぞ
7. 匿名処理班
写真を見てると芋虫の大群のように思えてゾワゾワする。それが這い回るとなると…
((( ;゚Д゚))
しかし、「蘇我入鹿が倒れてる姿に似ていたから」和名『入鹿』って、そんなに古くから日本に入ってきてたんかいなw
8. 匿名処理班
クリーピングデビルか・・・
名付けた人はコレ踏んづけたのかもしれないな
9. 匿名処理班
なんか誤解がある。
入鹿は園芸市場でも出回っているが、わざわざ野生個体を違法に採集、輸入している例はほとんどないと思う。
だって栽培株が千円から万円ぐらいで手に入るし。
ちなみにサボテン全種がワシントン条約対象。だからといって合法的に輸入できないわけじゃないぞ。
10. 匿名処理班
動く植物話の中でもトップクラスで驚異的なエピソード
11. 匿名処理班
蘇我入鹿って蝦夷の息子の!?
12. 匿名処理班
横たわる姿に週末にゴロゴロするおっさんの姿が重なって見えたけど
和名の由来的にそこまで的外れな連想でもない……んだよな
13. 匿名処理班
これもう生物やん
14. 匿名処理班
もう植物やめろってかそんなんならはじめから植物になるなよ
15. 匿名処理班
お前らの足の裏をつけねらう悪魔の姿だ
16. 匿名処理班
動物のイルカは海豚。
17. 匿名処理班
というかサボテンの種類のイルカってのが海に居るイルカっぽくないし他米みたく毛虫の大群みたいだしなんでそんな名前付けたのかと長年の疑問だったけどまさかの蘇我入鹿だったとは思わなんだか。
18. 匿名処理班
すごい発想力だな、蘇我入鹿…
19. 匿名処理班
その学者は蘇我入鹿に
どんなイメージ持ってんだよwww