May 23, 2018
「自分の HLA (ヒト白血球型抗原) と適合する患者さんがいる」
という情報を伝えられる。
5/22 のこと。
韓国出張から 4/21 に帰国した。
海外渡航した場合、帰国から 4 週間は献血出来ないので「そろそろ献血出来るなぁー」というタイミングで伝えられた。
業務の合間に会社を抜けて、会社から近い献血ルームに行き、HLA 血小板の検体採取をした。
いやにカタイ言い回しをしたが、平たく言うと「使う相手が決まってるちょっと特別な成分献血」だ。
そもそも「HLA 適合」云々がよくわからなかったので、長く退屈な待ち時間に手元のスマホで調べる…。
しかし、医療従事者向けの専門的な資料ばっかり引っ掛かってよくわからない…w
そもそも、成分献血には「血小板成分献血」と「血漿成分献血」がある。
名前が似ていて紛らわしい。
血小板献血の時に血漿も一緒に採取されてるのは何となくわかっている。
どちらもやったことはあるけど毎度どちらをやっているのかよくわからない。
終わったあとに献血カードを見て「ああ、今日は血小板だったのか」みたいに把握する感じ。
もっと言うと、終わったあとしばらくは献血カードを見もしないことのほうが多い気がする。
「え、そんなもんなの?」
どうだろう。自分が雑すぎるのか…。
いや多分、血液に詳しかったり、献血に特段拘りが強いとかでない限り、そんなもんなんだとおもう。
以前、本採血前のヘモグロビン測定の時
「今日は血漿が不足しているので、血漿成分献血でお願いしますねー」
と告げられた。
でも、献血終了後に献血カードを見返してみたら「血小板」と書かれていたことがあった。
もう、何がなんだかよくわからない。
「それはさすがに思い違いでは?」
でも、ヘモグロビン測定の合間の待ち時間に
「へー、今日は血漿なのか。珍しいな。血漿の "漿" って字ってどういうのだっけ?醤油の "醤" みたいな字?よくわからないな…。血を醤油とすると、血漿は醤 (ひしお) みたいなもの…?」
などというあまりに不毛な思考に耽っていたので、思い違いでも聞き間違いでもないとおもう。
「成分献血」で採取された成分は主に「成分輸血」に用いられる。
「血小板輸血」はどういう人に必要なのか?
自分の知識では、血小板の量が何らかの要因で少なくて、そのせいで出血したら血管を塞ぐことが出来ずに止血が出来ないので、そういう方に血小板を輸血する…みたいなことだと認識している。
ついでに「血漿輸血」もたぶん「血小板輸血」と同じ感じ?あんまり違いがわかってないw
で、HLA が適合しない血小板の輸血を繰り返している方には、抗体が出来るとか?拒絶反応が出るだとか?そんな感じで、血小板輸血をしても血小板の数値が上がらなくなり、どんどん止血効果がなくなってしまう。
そうなってしまった患者さんには「HLA 適合血小板輸血」が必要になってくるそうな。
で、この HLA は数万パターンあり、適合確率は、兄弟姉妹の場合は四分の一程度。非血縁者の場合は数百から数万分の一程度。けっこう幅広いが、「そこそこ稀な型」から「極めて稀な型」まで存在するとか。
ただ血液を提供する側にいると、何故血小板が少なく、かつ出血をする傾向がある人がいるのか?
実はよくわかっていない。
想像するに「白血病」や「悪性リンパ腫」などのいわゆる「血液の癌」をはじめとする「骨髄移植が有効な患者さん」にこの HLA 適合血小板輸血が必要な方が多いのではないか。
いや、あくまで想像。
きっと抗癌剤治療などを受けている人にもその傾向があるのだとおもう。これも想像。
HLA 血小板の検体採取が終了したあと、帰りしなに
「今回の HLA 適合の患者さんが、今後も継続して血小板を必要とされるかも知れないので、可能であれば継続してまた血小板献血に来ていただけると助かります」
というような趣旨のことを、献血ルームの職員の方から言われた。
はて。適合される患者さん、一体何の病に苦しんでいるのだろう…。
どこのどなたなのか、全くの見ず知らずだけど、この日本で私と HLA が適合する方がいて、その方が病に臥せっているということを知らされることは、何かすごく特別なことにおもえてしまう。
当然ながら、今回献血した血小板を輸血される HLA 適合患者さんの情報については、こちらには一切知らされもしなければ、知る術もない。
知ることが出来るのは「ただそういう方が存在する」という事実だけ。
機微情報ゆえ、当然だろう。
そういえば骨髄移植の話においても「型が適合」云々「適合する確率」云々という話がよく耳目に触れる。
「この血小板輸血の "適合" と、骨髄移植の "適合" は同じ?どっちも HLA について言ってる?」
と疑問を持った。
雑に調べたら、やはり骨髄移植における "適合" の意味も「HLA が適合するか」のようなので、もしこの患者さんが骨髄移植を必要としているのであれば、私が骨髄バンクにドナー登録をすれば早々にこの人の命が助かるのかも?などと考えた。
以前、とある格闘家の方のご夫人が急性骨髄性白血病に罹り、闘病されていた。
「されていた」と過去形なのは…悲しいかな、お察し願う。
当時、格闘家をはじめ格闘技関係の方々が SNS 上で骨髄バンクのドナー登録を呼び掛けていたことがあった。
そして、知人にも一人、現在、急性骨髄性白血病で闘病中の人がいる。
それでも、ドナー登録をしようとはしなかった。
でも、今回 HLA 適合したという話をきっかけに、いよいよ骨髄ドナーになることが「他人事」におもえなくなった。
何故、これまで急性骨髄性白血病の人が遠からずの距離にありながら、骨髄ドナー登録をしなかったのか。
実は、当時も骨髄ドナーになることを考え、色々と調べた。
そもそも論を言えば、自分がドナーになったところで、その知っている方を今すぐに助けられるか (適合するか) どうかは別の話で、むしろ適合する確率はかなり低い。
そして、ネットで知ったことを挙げるならば…
非血縁者間の骨髄移植は移植成績 (寛解率、生存率) が血縁者間の移植よりは悪いという話。
ドナーが負うべきリスクが大き過ぎるという話。
端的に言えば「治らない可能性が高いのに、すごく重いリスクを背負うかも知れない」
これで二の足を踏み、そこから気持ちが前に進めなくなった。
骨髄ドナーのリスクに関しては、Wikipedia の 「骨髄バンク」のページにある「ドナーの後遺障害等の危険性と補償」の段落を見ていただけばそれなりに重篤なものがあるということがおわかりいただける。
血縁者ならまだしも、見ず知らずの第三者の命を救うために、最悪死亡例すらあるリスクまで負えるのか?
むしろ、血縁者ですら間柄によってはそのリスクは負いたくないとすら考える場合もあり得る。
要するに自分は、そこまで善人ではなかった。
「献血とかするくせに、いざ命が救えるかも知れない相手がいるとわかっても骨髄を移植できないのはただの偽善ではないか?」
という自問自答を繰り返し、自己嫌悪に陥りそうになった。
と同時に、今回の件は、個々人における「善意には上限がある」という、きわめて当たり前のことを明確に意識させられる出来事となった。
献血は「偽善」で出来るのか?
いや、そうはおもわない。
爪楊枝程度の極太の注射針を腕に刺す。
まぁまぁ痛い。まぁまぁ怖い。そんな異物が、成分献血なら小一時間腕に刺さりっぱなし。
「血を抜かれる」のは想像するよりイージーなことではない。
成分献血は「返血」をされつつも、数回に分けて、延べにすると体内の循環血液の半分程度の血を抜かれ、遠心分離で成分を抽出された末に、抗凝固剤が添加され、止血効果の弱まった「残り」を体内に戻される。
考えようによってはとても怖いことだし、それなりに負担がある。
妙にヒンヤリしたのが返血され、吐き気や寒気がしたりする。
長時間の採血は、静脈血栓塞栓症の危険性が高まる。
献血後にはふらついたり、気分が悪くなったり、酷いと失神、転倒の危険性もある。
数時間、両腕には止血絆が貼られ、本採血を行なったほうの腕は包帯で圧迫される。
外気温が暑くてもカジュアルに半袖で行くのは少々憚られる。
ボランティアなので、対価を求めているわけではないが、ここまでの犠牲を払った結果、いただける対価は、だいたい「お煎餅」と「お茶」。しかもお茶は飲みたくて飲んでいるとかよりも、ホットの飲み物を飲むことで、採血時に血管を拡張するのが主目的。血管拡張のお茶と一緒にお煎餅を有り難く頂戴する。
食欲旺盛な苦学生なら、献血は空腹満たすには良いかも知れない。
献血ルームによってはドーナツやアイスやハンバーガーがもらえるところもあるみたいだし。
東京都内の人気献血ルーム!サービス充実がスゴイ - NAVER まとめ
その点自分は苦学生ではないので、血と引き換えに、こういうのを恵んで欲しいとおもうほど困窮はしていないし、加齢とともに食は細くなり、そこまで食欲は湧かない。
これが「偽善」なのなら、もっと楽で直接的に感謝されそうな偽善がありそうだ。
でも「善意」でやれることとして「献血」は間違いなく人のために貢献出来る。
特に何かのきっかけがあったわけでもないけれど、ある時
「この血はどんどん産生されるから、抜いてもらって人の役に立ててもらいたい」
という意識が芽生えて、無理のない範囲でコンスタントに行くようになった。
たぶん、基本的にどこかに「善意」の心が働いていたとおもう。
だから、自分はそんなに「悪人」ではないし、言うほど「偽善者」ではないとおもう。
少々脱線したので軌道修正。
移植成績が悪いと言われる非血縁者間の移植のために、後遺症などのリスクを冒してまで骨髄を提供するほどの善意なかった自分が、その見ず知らずの HLA 適合患者さんに対して出来る「善意の上限」を考えた。
それは、HLA 血小板献血を今後もコンスタントに続けること。
きっと、この患者さんは、私の血小板の輸血を受けて、ある程度元気になっているとおもう。
すこしの間、症状がけっこう改善されるのではないかとおもう。
偽善寄りの善人には、骨髄 (造血幹細胞) はあげられないけど、この患者さんが少しでも元気になるように、忘れずに行くことに心に決めた。
だからこの先、可能な限り、上限値まで、血小板献血を行ないます。
そのために、ちょこちょこ会社から抜け出すかも知れません。
ちなみに成分献血の年間上限数は合計 24 カウント。
1 回の血漿成分献血は 1、1 回の血小板成分献血は 2 にカウントされる。
このカウント方法だと今年現時点での成分献血カウント 5 なので、あと 19 カウントまで (最大 9 回) 血小板献血が出来る。
次回献血可能日までのインターバルが長い「全血献血」は、短時間で献血出来るという提供する側のメリットはあるけれど、今の自分の身でそれをやる必要はもはやない。
最初から最後までトータルで 2 時間程度かかるが、今後は成分献血専門で行こうとおもう。
このブログで、一体自分は何を言いたかったというと
「骨髄バンクはけっこう荷が重いけれど、血小板献血ならもっと気楽に出来ますよ」
という一つの提言。
一度血小板献血をすることで、あなたの HLA の型は日本赤十字社に登録される。
そして、あなたの HLA と適合する輸血が必要な患者さんがいたら連絡がくる。
そうやって、誰かのことを救える機会がもっと増えればいいなと感じた。
もちろん、こんな不肖私よりも善意のある方は、骨髄バンクにドナー登録するのもアリだとおもう。
「人の命」を意識する、一つのきっかけになれば幸いです。
HLA 適合血小板献血者登録 (血小板献血) も、骨髄バンクのドナー登録も、いずれも、お近くの献血ルームまでお出掛けください。
あー、なんか日本赤十字社の回し者っぽいなw
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朝日新聞社
朝日新聞社 (2018-01-17)
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