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日大選手の会見で、事実は一応判明した。では、それですべてが判明したかというと、そうでもない。まだ謎が残る。
いくつもの謎
最大の謎は、なぜあの選手が選ばれたのか、ということだ。(反則・傷害行為をするものとして。)
あの選手は日本代表にも選ばれたぐらいで、特別優秀な選手だ。どうせ反則行為で相手選手を壊したいのであれば、こんな優秀な選手にやらせるのではなく、もっと劣った二流選手にやらせるべきだった。そうすれば、その二流選手が追放されたとしても、日大のアメフト部は影響を受けない。
なのに、アメフト部のなかでも最優秀と言えるようなエリート選手にやらせたのは、なぜか? 実際、この選手は退部になったが、たとえ退部にならなくても、反則で出場禁止期間が長引けば、日大アメフト部は損害を受ける。なのになぜ、エリート選手にやらせたのか?
また、別の謎がある。
監督はあの選手に、日本代表を辞退させた。これはおかしい。日本代表に選ばれることは、本人にとって名誉であるだけでなく、大学やアメフト部にとっても名誉になる。なのに、どうして辞退させたのか?
しかも、そもそも無理に辞退させるというのが、越権行為だ。日本代表に選ばれるかどうかは、日本アメリカンフットボール協会が決めることであって、大学が口出しするようなことではない。こんなことで口出しするのは理不尽だ。あまりにも道理が通らない。何だってそんな理不尽なことをしたのか?
さらに、別の謎がある。
監督はあの選手に、しばらく不出場の処遇をした。その理由は、「やる気がない」ということだ。これはおかしい。
技術的に下手だとか、プレーがまずかったとか、そういうことが理由であるなら、まだわかる。しかし、この選手は部内で最優秀レベルのプレーを続けてきた。つまり、プレーのことを理由にはできない。そこで、「やる気がない」というような変な理由を持ってきたわけだ。しかし、そんな理由を持ってくるのは、理不尽だ。何だってそんな理不尽なことをしたのか?
以上のように、いくつもの謎がある。これらの謎は解明されていない。そして、そういう謎が残る限りは、真相は解明されたことにならないのだ。
なるほど、監督が命じて、あの選手が実行したのだろう。しかし、どうしてあの選手が選ばれたのかという点については、真相が明らかになっていないのだ。
さらに、別の点でも、真相が明らかになっていない。それは、こんなことをしたことの(本質的な)目的だ。
なるほど、「被害を受けた選手をケガさせれば、自チームにとって得になる」というのは、理屈になっているように思える。しかし、よく考えると、まったく理屈になっていないのだ。
たしかに、関学大の選手をケガさせれば、関学大は弱くなって不利になるだろう。しかし、関学大が少し弱くなったからといって、日大が強くなるわけではない。他にもライバルはいっぱいいるのだ。特に、直接のライバルは、早稲田大学だ。(昨年度は日大と早稲田大が並んで1位となった。→ 出典 )
その早稲田大の選手をつぶすというのなら、まだわかる。なのに、別のリーグ(関東ではない関西のリーグ)の選手をつぶしても、直接的には利益にならない。これではまるで、「プロ野球で優勝するために、巨人の選手がオリックスの選手を傷つける」というようなものだ。つまり、セ・リーグの選手がパ・リーグの選手を傷つける、というようなものだ。そんなことをしても意味がないのだが。(それぞれ別のリーグであって、対戦がないのだから。)
※ 今回のケガをさせた試合は、公式戦でなく、春のオープン戦。
謎の解明
以上のように、いくつもの謎がある。では、これらの謎にどう答えるか? 真相は何なのか?
そう考えると、物事をあるがままに見ることで、真相に気づく。こうだ。
「彼がことさら選ばれたのは、彼が特別に優秀だからだ」
そうだ。彼は「特別に優秀であったにもかかわらず、なぜか選ばれた」のではない。彼は「特別に優秀であったからこそ、選ばれた」のである。(反則・傷害行為をするものとして。)
物事を素直に見る限りは、そう見る以外にはない。監督としては、他の下手な選手を選ぶことは、いくらでもできた。しかし、それらの下手な選手を選ぶのでは意味がなかった。部のなかでも最も優秀な選手を選んで、その選手にやらせることこそが大切だった。
ではなぜか? チームを勝たせてくれる優秀な選手を(反則で)不出場処分にさせるというのは、常識的には理屈が通らない。それではまるで、「チームを勝たせまい」としているかのようだ。そんなことはありえそうにない。勝利を目的とするチームが、勝利を遠ざけるようなことをするというのは、ありえそうにない。
しかし、論理的に考えれば、新たな結論が出る。
いくらありえそうにないとしても、それは現実にあったのだ。まずは事実を先に取るべきだ。そして、その事実を先に取ったあとで、論理的に考えれば、こうなる。
「ここでは、チームの勝利よりも、もっと大切なものがあった。それを優先させるために、あえて優秀な選手をつぶそうとした」
では、それは何か? 「チームの勝利よりも大切なもの」とは何か? そんなものがあるのだろうか?
ここまで考えて、推理すれば、ようやく真相にたどりつく。こうだ。
監督にとって最も重要だったのは、「チームの勝利」ではなくて、「自分の権威の確立」だったのだ。
なのに、特別に優秀な選手がいて、大活躍すれば、世間の目はそちらに向く。「監督のおかげで勝利した」というふうには見えず、「優秀な選手のおかげで勝利した」というふうに見える。世間はいつも、スターに着目するものだ。ちょうど、大リーグで大谷がスポットライトを浴びるように。
だから監督としては、そういう事態を避けようとしたのだ。特別に優秀なスター選手が注目されないように、その選手を何としてもつぶそうとしたのだ。自分の圧倒的な権威を保つためには、少しでも自分に並びそうなスター選手を押しつぶそうとしたのだ。監督にとって何よりも大切なのは、自分の権威を保つことであり、それを揺るがそうとするようなスター選手は、何としても押しつぶしたかった。
こうして、すべてが説明される。
・ 二流の選手でなく、最も優秀な選手を選んだ。
・ 理不尽な理由で、試合に不出場にさせた。
・ 日本代表も、理不尽ながら辞退させた。
・ 屈辱を味わわせるために、絶対服従を命じた。
このうち最後のことが、「スポーツマンシップにもとる反則行為をさせる」ということだ。あの選手は、反則行為でケガをさせた試合後に、一人で泣いていたそうだ。( → 出典 )
これは不思議ではない。こういうふうに屈辱を味わわせることこそが、監督の真の目的だったのだ。
つまり、関学大の選手を[肉体的に]傷つけることでなく、日大のスター選手を[心理的に]傷つけることが、真の目的だったのだ。
( ※ 傷つけたかった相手がまったく逆だ。)
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ここまで理解すると、別の謎が解明される。
「関学大の選手にケガをさせても、意味がない」ということだ。「関学大の選手にケガをさせれば有利になる」という陳述書にある言葉を、人々は字義通りに信じているようだ。しかし、よく考えれば、そんなことはあり得ないとわかる。
実際、今回のケガの被害者は、3週間で治るぐらいであった。これでは、五月中にケガは治るので、秋の公式戦には影響はない。かといって、秋までケガが続くような大怪我を指せたら、選手生命を奪うも同然だ。だが、そんな大怪我をさせることは、普通のプレーではまず不可能だ。(刃物のような凶器を使うのならば別だが。)
また、そもそも、ケガをさせたとしても、別のリーグなので、損得は生じない。(前出)
結局、「関学大の選手にケガをさせても、意味がない」と言える。そして、意味のないことをさせたのは、なぜか? 関学大の選手を傷つけることが目的だったのではなく、日大のあの選手を傷つけることが目的だったからだ。
監督やコーチは、「つぶせ」と言ったが、そのとき、真に傷つけたかったのは、関学大の選手ではなく、日大のあのスター選手だったのだ。
では、なぜ? スターをつぶして、自己の権威を確立するためだ。
まとめて言えば、こうだ。
「この監督は、自チームを敗北させてでも、自チームの選手をおとしめようとした。故意の反則行為をさせて、退場処分や出場禁止という屈辱を味わわせて、スター選手の座から蹴落とそうとした。そのことで、自己の絶対的な権威を保とうとした」
これが狙いだったのだ。
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では、絶対的な権威とは、何か? たかがアメフトの監督ぐらいに、そんな立派な権威があるのか?
もちろん、違う。そもそも、この監督が狙ったのは、アメフトの日本一ではなくて、もっと大きな権力の座なのだ。
そのことは、下記記事からもわかる。
《 日大アメフト内田前監督は「次の理事長」ともいわれた実力者 》
内田氏とは、どういった人物なのか。
監督であると同時に、日大卒業後は大学に就職した職員でもある。保健体育事務局長という役職から、理事を経て、現在は5人しかいない常務理事となっている。日大関係者が明かす。
「内田さんは出世街道を歩んできた“日大エリート”です。日大には体育会の入部人数や予算を差配する保健体育審議会があり、その事実上のトップが内田さん。前トップが今の田中英壽理事長で、このポジションは日大の出世コースといわれています。
内田さんは人事部長も兼ねていて人事権も持つ。学内では田中理事長の側近と見られており、“理事長に万一のことがあれば次は内田”といわれている実力者です」
( → zakzak )
では、現在の理事長とは、どんな人物か?
《 【日大の闇】悪質タックル問題の元凶は、日大・田中理事長体制 》
田中理事長は69年に日大を卒業して、同大学に入職。保健体育事務局長や校友会会長を経て常務、理事長と階段をのぼってきた。日大相撲部の現役時代は学生横綱、社会人ではアマチュア横綱にもなり、日本オリンピック委員会(JOC)や日本相撲連盟の要職も務めるなど、「日大体育会のドン」として君臨してきた。
日大HPに掲載された写真でわかる通りのコワモテで知られるが、田中理事長の写真をめぐっては一時期、キナ臭い噂が流れたこともある。米国のニュースサイトに、田中理事長と司忍(篠田建市)6代目山口組組長とのツーショット写真が掲載されたのだ。
大学関連の工事業者から金銭を受け取っていたと報道されたこともあり、本来なら学校法人の理事長として適格性が問われる「はず」だ。しかし、田中理事長の座が揺らぐことがないのは、体育会特有の暴力性と押し出しの強さで理事会を牛耳っているからだ。実際、日大の理事長選は怪文書が飛び交うキナ臭いものになっているという。
その側近中の側近といわれるのがアメフト部監督の内田正人氏。
( → データ・マックス NETIB-NEWS )
記事で言及された闇情報は、次のサイトにある。
→ 山口組六代目・司忍組長と日大理事長兼日本五輪委員会副会長・田中英寿氏ツーショット公開
→ ヤクザとオリンピック - 最も危険な写真を公開 | VICE JAPAN
→ 日大の暴君!田中英壽理事長が追徴金七億円で国税を口封じ?
他にも情報がある。その一覧をまとめたページ。
→ 悪のデパート日本大学 - Hagex-day info
また、次の情報もある。
1994年財団法人日本オリンピック委員会理事に就任、後に副会長を務めた。
( → 田中英壽 - Wikipedia )
ここまで見れば、真相がわかる。
この監督が狙っていたものは、とても大きなものだった。この人にとって、アメフト部の監督などは、ほんの腰掛け仕事にすぎなかった。この人がめざしていたのは、(次代の)日大理事長であり、また、日本オリンピック委員会(JOC)の要職(たとえば副会頭)だった。そういうところをめざしていたのだ。そして、そのために、今回の日大選手は、ただの捨て駒にすぎなかったのである。
この監督にとって何よりも大切なのは、誰もが逆らえないような絶対的な権力体制の確立だった。それを少しでも揺るがせるような有名人(スター選手)などは、有害無益だった。だからこそ、この日大選手を傷つけようとしたのだ。
このあと、この選手が、心理的にボロボロになって使い物にならなくなっても、あるいは、絶対服従するような盲目的な忠犬になっても、どちらでも良かった。この監督にとってアメフト部が優勝するかどうかというようなことは、どうでも良かった。大切なのはあくまで、自己の絶対的な権力の確立だったのである。
特に、現理事長が退任するのが間近になっているので、今のうちに何としても権力体制を構築しておく必要があったのだ。
( ※ 現理事長は、71歳と高齢であり、引退が近い。また、すでに JOC の理事からは引退している。現理事長が引退して、この監督が理事長になるのは、近い将来に予定されていたのだ。だからこそ、自己の権勢を見せつけておく必要があった。あの日大選手は、そのためのコマとして使われた。)
【 関連サイト 】
→ 日本大学不正疑惑追及も佳境へと 田中英寿理事長独裁体制崩壊の日(2013年12月?)
次の記事もある。
元教職員の一人はこう語る。
「日大のガバナンスはトップの田中英壽理事長の独裁体制で、その下にいるナンバー2の内田常務理事が日大グループ12万人の人事権を握っています。その本人が関わる問題とあっては、とても一般職員が勝手に動けるような雰囲気ではありません」
( → 日大の内田前監督らが会見でまさかの否定 「ラフプレーは日大の伝統…」とアメフト連盟元監督|AERA dot. (アエラドット) )
[ 余談 ]
日大広報部が監督を擁護していることについて、疑問の声が出ている。たとえば、下記。
→ 日本大学アメリカンフットボール部はいつどのタイミングで謝ればよかったのか?
「あの時点で謝罪すれば良かった」
というような話がいろいろとなされている。しかし、無意味だ。
なぜか? ここでは、監督と日大とが、別の立場にあると見なしている。つまり、監督が失敗したあとで、日大が監督の失敗を見咎めて、監督を切るべきだった、と考えている。
しかし、本項で示したように、日大(理事長たち)は、監督と一体化しているのである。一衣帯水とも言えるし、一蓮托生とも言えるし、同じ穴のムジナとも言える。彼らは別々のものではなく、同じ仲間なのだから、一方が他方を切るというようなことはないのだ。それはいわば、親が子を売るというようなものだ。とうていありえない。
ここでは「組織ぐるみ」という状況が見られる。誰かが誰かを処分すればいいのではない。組織そのものが腐っているのだ。とすれば、「健全なものが腐っている部分を切り捨てる」というような具合には行かないのだ。
なお、似た例は、政界でも見られる。佐川氏や柳瀬氏がとんでもないことをしたが、ここで、安倍首相は、佐川氏や柳瀬氏を切り捨てたか? いや、切り捨てなかった。最後まで守ろうとした。同様に、佐川氏や柳瀬氏は、首相を守ろうとした。
親分と子分というのは、そういう関係なのである。「親分が子分を切り捨てて済ませる」というふうには行かないのだ。
その意味で、「日大はいつ謝罪すれば良かったか? いつ引き返せば良かったか?」というような問いかけは、無意味である。ヤクザ組織のようなものは、その組織が誕生した時点で、以後の悪が決まっている。「途中のどこかで引き返せば良かった」というようなものではないのだ。
似た話は、下記にもある。(イソップふうの話)
→ サソリとカエルの寓話
サソリは「やるべきではない」とわかっていながら、それでもなぜか、そのことをやってしまった。自分で自分にあらがえなかった。
ここには、「生来の性質」というようなものがある。それは本人にはどうしようもないものなのだ。
【 関連項目 】
→ 日大監督の会見の矛盾: Open ブログ (前々項)
→ 日大監督の居直り: Open ブログ (次項)
伊調選手のようなゴールドメダリストですら、そのような目にあうのですから。
自分の気に入らない選手は干す、今回は捨て駒にしたのでしょう。
会社という閉じた世界でも、ワンマン社長が喜ぶのは自分の話しを聞いてくれる部下です。
でも、調子に乗って意見をするようになったり、言うことを聞かなくなれば、疎んじられて干されて(左遷)しまいます。
日大は言わば猿山の世界です。
自身を上回る権威の出現は許さないでしょうね。