フェイスブックCEOが欧州議会で釈明 質問形式にも批判
米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ創業者兼最高経営責任者(CEO)は22日、欧州連合(EU)の欧州議会で英ケンブリッジ・アナリティカ社のデータ不正疑惑や、プラットフォーム上で偽ニュースの急増を許したことに対して謝罪した。
ザッカーバーグ氏は、フェイスブックの機能が「悪意を持って」使われたのを謝罪すると述べた。
しかし、同氏の証言は全ての欧州議員の納得するものではなく、何人かの議員は質問がかわされたと感じたようだ。
会議に出席した英議会のデジタル・文化・メディア・スポーツ委員会のダミアン・コリンズ委員長は、議会でのやりとりは「好機を逸した」と話した。
「残念なことに、(欧州議会の)質問形式はザッカーバーグ氏に一つ一つの質問に答えさせず、返答を選り好みさせる結果となった」
欧州議会での質問は、同氏が4月に米議会で行った質疑応答とは形式が大きく異なった。
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米上院の公聴会では、議員が1人ずつザッカーバーグ氏に厳しい質問を投げかけ、質問中にもやりとりがあった。
しかし欧州議会では、さまざまな会派がそれぞれいくつか質問をし、ザッカーバーグ氏は全ての質問が終わるまで待つ必要があった。
BBCのローリー・ケラン=ジョーンズ・テクノロジー担当編集委員はツイッターで議会の様子を実況するなかで、「欧州議員によるとてつもなく長い質問/演説とその形式はひどい。ザッカーバーグ氏は答える前に全部聞いていなければならない」とつづった。
ザッカーバーグ氏は22分にわたって、膨大な数の質問を読み、その中で返答する質問を選ぶことができた。
議員の何人かはこの方針にいら立ちを示し、ある議員はザッカーバーグ氏が「故意にこの形式を選んだ」と批判した。
フェイスブックの広報はBBCに対し、質問形式を指定していないと述べた。このことは、後にタヤーニ議長も認めている。
タヤーニ議長はその後の会見で、欧州議員はザッカーバーグ氏の時間が限られていることを知っていたものの、その時間の多くを自分たちが話すことに費やしたと付け加えた。
また、ザッカーバーグ氏が後ほど書面で質問への解答を提出することで合意したことも明らかにしている。
回答のなかったトピック
ザッカーバーグ氏は、フェイスブックが独占的かどうかという質問や、傘下のメッセージアプリ、WhatsApp(ワッツアップ)からのデータの用途については回答しなかった。
また、フェイスブックを利用しなくても勝手に作成されている「シャドープロファイル」についてや、そして非利用者のデータを集めるべきかという質問にも直接答えなかった。
フェイスブックの事業そのものに対する疑念を表した欧州議員も数人いた。
ベルギーのギー・ベルホフスタット元首相は、「デジタルモンスターを生み出した天才」として記憶されたいかという質問をしたが、ザッカーバーグ氏はこれに答えなかった。
英国のEU離脱派ナイジェル・ファラージュ議員はフェイスブックが政治的に中立なプラットフォームではないとの持論を展開し、中道右派の発言者を「意図的に差別している」のではないかと質問した。
ザッカーバーグ氏はこの点には答えず、フェイスブックは「政治的立ち位置によってコンテンツを選ぶという決定を行ったことはない」と述べた。
他の質問に答えるなかでザッカーバーグ氏は、顧客データを不正利用している他のソーシャルメディアアプリを見つけたいと述べた。また、第三者の開発者による何千ものアプリがケンブリッジ・アナリティカと同様の過ちを犯していないか国際的な調査を受けており、これには「何カ月」もかかると指摘した。
フェイスブックはこれまでに、200以上のアプリを利用停止にしたという。
「欧州に真剣に取り組む」
欧州議会の会派リーダーとザッカーバーグ氏の会談は、当初は非公開で行われる予定だった。
しかし批判の波を受け、会談はインターネットで生中継されることになった。
欧州議員から繰り返し出た質問は、25日から施行されるデータ保護規則の改革についてだ。
フェイスブックは先に、15億人に上る国際ユーザーの管轄をアイルランドにある欧州本部から米国本部へと移した。EU一般データ保護規則(GDPR)違反による法廷闘争とのそのコストを避けるためとみられている。
このデータ保護法の大改革で、消費者は個人情報利用についてより大きな決定権を得ることになる。
何人かの欧州議員はザッカーバーグ氏に、本当にこの規則に従うと約束できるかと質問した。
これに対しザッカーバーグ氏は、フェイスブックは規制導入の際には全面的に法に従うと答えている。
また、欧州ユーザーに対してはすでに設定の見直しが必要だと明らかにしており、「多くの割合の」ユーザーが見直しを行ったとしている。
英国の議員たちは、ケンブリッジ・アナリティカについてザッカーバーグ氏に質問する機会を求めているが、現在までザッカーバーグ氏は英国訪問を控えている。
<分析>デイブ・リー北米テクノロジー記者
欧州議会には不満が残った。
質問形式は、特にフェイスブック非利用者のデータ追跡といった、特定の懸念に対応するというより、ザッカーバーグ氏が複数の質問を分野ごとにまとめて回答するのを可能にした。
つまり、同氏はざっくりとした形の回答が許されたということだ。
きょう我々が聞いたことの大半は、フェイスブックが過去3カ月に公表したブログに書かれている。
この出来事は、明らかに何人かの欧州議員を怒らせた。自分たちの懸念に対して不十分な対応を取られたとして、いら立ちをあらわにしている。
しかし、膨大で、ほとんど実存的な質問にたった30分で答えなければならない時、どれだけ詳細に語ることができるのか。
フェイスブックは綿密な調査を受けているが、巨大な影響力を持つ人物たちに対する政治家の質問の仕方についても、同じことをするべきではないだろうか。
もしあなたがこの話題についてきているなら、これがザッカーバーグ氏の「難儀な」議会出席に対するスコアブックだ。
「米上院はほとんど何も得られなかったが、欧州議会はもっと少なかった」