獣医の需給調整
鳥取大学農学部獣医学科(当時)に進学した高校時代の同級生が「獣医は飽和状態。卒業後どうなるやら。進路を誤ったかもしれない」と心配していたのを思い出す。今から50年近く前のことである。同級生は鳥取県庁に就職したが、相当な難関だったらしい▼獣医師は余っているのか、不足しているのか。加計学園の獣医学部新設を巡る問題は「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」ことの真相究明は持ち越されたが、獣医師の「需給調整」の問題も見過ごされてはならない▼獣医師数について農水省は現状は足りているが、将来は余る可能性が高いとみているようだ。ペットブームがピークを過ぎ、今後獣医療需要は減少する見通しという▼現状は足りていると言っても総数の話であり、犬や猫のペット獣医か、牛などの産業動物獣医かによって偏在は大きい。大都市を中心にペット病院を開業する獣医は充足しているが、地方で家畜の伝染病対策などを担う公務員獣医の不足は深刻になっている▼島根県では家畜保健衛生所などに勤務する公務員獣医が足りない。定数96人に対し現状は80人。昨年は10人募集したが、応募者は3人しかいなかった。和牛などの畜産県である島根県にとって、このままでは口蹄疫(こうていえき)など家畜伝染病が広がった場合、対応できなくなる恐れがあるという▼医学部に負けず劣らず狭き門となっている鳥取大共同獣医学科と公務員獣医の不足。総理のご意向の真偽に目を凝らしつつ、地方の意向も忖度(そんたく)してほしい。(前)
2017年6月22日 無断転載禁止