南シナ海界隈で中国の動きが騒がしい

人工島で爆撃機離発着訓練、軍事的プレゼンス誇示

2018年5月23日(水)

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南シナ海上空を監視飛行する中国の爆撃機H-6K(写真:新華社/アフロ)

 米中通商協議で貿易戦争を暫定的に回避する合意が出た。この駆け引きの内幕に関する情報がそこはかとなく出てくるには、おそらくあと数日必要だろう。だが、その裏側で行われている様々な米中の駆け引きが影響を与えていることは間違いないと思われる。例えば6月に予定されている米朝首脳会談であり、もう一つ考えうるのは南シナ海情勢である。最近、南シナ海界隈で中国の動きが騒がしい。この機会に整理しておこう。

 南シナ海の島嶼の中国による実効支配が進んでいることはすでに何度もこのコラム欄で紹介してきた。これはオバマ政権下での痛恨の外交ミスともいえる。このしりぬぐいを任されている米トランプ政権だが、目下の関心は、中東と朝鮮半島に集中しているように見えて、実は南シナ海情勢については4月以降、急激に温度が上昇している。

 最近注目されたニュースは南シナ海の人工島に、中国解放軍初の爆撃機離発着訓練が行われたことだろう。中国国防部が5月18日に発表した。訓練を行ったのは中距離ミサイルや核搭載が可能な轟6K(H-6K)爆撃機。具体的な場所は不明だが、米軍事専門誌によればパラセル(西沙)諸島のウッディー島(永興島)だと見られている。この島はベトナムと台湾が領有権を主張している。

 中国国防部の発表によれば、「この訓練によって全辺境へいかなるタイミングの、全方位的な攻撃能力を向上できた」としており、「西太平洋進出をひかえ、南シナ海をめぐる戦いに向け、研ぎ澄ませた剣を掲げ、新たな航路を常に切り開く」と南シナ海で戦争を仮定した訓練であることも隠していない。さらに、この訓練について「宇宙と一体化した攻防を兼ね備えた戦略目標に着眼し、空軍が全辺境作戦の現代化戦略性に向かって前進するもの」と位置づけている。

 爆撃機の所属先は発表では南方の某基地としか記されていないが、郝建科という師団長の名前とH-6K配備の空軍師団という条件を考えると、北部戦区の西安基地を拠点とする中国空軍第36爆撃機師団(空36師団)でほぼ間違いないと見られている。空36師は原爆・水爆投下試験任務を2017年までに完遂しており、習近平政権においては重点建設部隊として注目されている。

コメント12件コメント/レビュー

これって、無茶苦茶日本にとっては重要な事柄ではないですか!
日本の大手マスコミは報道内容の選択が酷すぎて、目も当てられません。
このような情報に触れられない方々は、いきなり有事が起こっても理解できないでしょう。
テレビマスコミは放送法で国民の利益のために、電波利用をしなければならないのに、それを放棄する可能ような昨今の報道姿勢には、怒り心頭です。
せめてこのコラムの継続をしていただいて、少しでも多くの日本人が、いざという時に正しい判断できるよう願って止みません。
引き続きの情報提供と解説をよろしくお願い申し上げます。(2018/05/23 11:18)

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「南シナ海界隈で中国の動きが騒がしい」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

これって、無茶苦茶日本にとっては重要な事柄ではないですか!
日本の大手マスコミは報道内容の選択が酷すぎて、目も当てられません。
このような情報に触れられない方々は、いきなり有事が起こっても理解できないでしょう。
テレビマスコミは放送法で国民の利益のために、電波利用をしなければならないのに、それを放棄する可能ような昨今の報道姿勢には、怒り心頭です。
せめてこのコラムの継続をしていただいて、少しでも多くの日本人が、いざという時に正しい判断できるよう願って止みません。
引き続きの情報提供と解説をよろしくお願い申し上げます。(2018/05/23 11:18)

いったい中国は何をしたいのか。広大な国土を持ちながら、「南シナ海をめぐる戦いに向け、研ぎ澄ませた剣を掲げ、新たな航路を常に切り開く」とは、狂気としか思えない。南シナ海をめぐる傍若無人な戦い、経済支援から乗っ取りというパターンは、まるでヤクザそのもの。経済大国を自称する品位などみじんも無い。
日本はくだらない国内の政局争いに明け暮れ、目の前にある南シナ海の問題と危機に、日本のプレゼンスを内外に全く示していない。日本国民の喉元に刃があるというのに。(2018/05/23 11:05)

独裁者を排除するのが現代人類の共通の認識。独裁者国家は、みんなで排除しましょう。(2018/05/23 10:54)

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石橋 未来 大和総研政策調査部研究員