かつて必須だった、 DMP に幻滅するマーケターたち

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データ管理プラットフォーム(Data management platforms:以下、DMP)は、データをお金に替える錬金術を解き明かすものだと、すべての大手広告主が、いまだに信じているわけではない。

たとえば、アメリカの大手電池メーカーのデュラセル(Duracell)は、DMPを捨てることを選んだ。ラディソン・ホテル・グループ(Radisson Hotel Group)のように、DMPが必要だとは考えているが、バナー広告のターゲティング以外に活用する方法がわからないとする広告主もいる。

DMP神話の現実

4人のアドテク専門家たちによれば、こうした傾向がこの数カ月、加速している。まず、プログラマティックのあるコンサルタントが匿名を条件に米DIGIDAYに語ってくれた。このコンサルタントによると、クライアントたちは、データがDMPに入らないように広告やウェブサイトから一時的にタグを削除しているという。そうするとDMPにかかる費用を止められるのだ。「一般データ保護規則」(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)の実施が迫り、データ収集に注目が集まっているが、むしろ単純なビジネス上の懸念の方がマーケターたちを動かしている。

「話をしている広告主の8割は、DMPの力を最大限に引き出せていないと感じている」と、このコンサルタントは語る。「私が見る限り、マーケターたちは、ただ使用を停止して、この高価なテクノロジーがこれまで機能していなかったことを認めるだけではない。事態の解決のため、GDPRを利用してDMPとの契約にある解約条項を行使している」。

広告主たちが体面を保つ可能性はある。あらゆるリソースを使ってDMPをセッティングした末に、そのスイッチを無期限で切りたいCMOはいないだろう。ほとんどの場合、データとスキルセットの所有には、ブランド、エージェンシー、DMPの3者が絡んでいる。その構築には時間とお金がかかっている。それに、DMPへ一旦データが集まっても、そのデータをプランニング、実行、インサイトに活かせる組織プロセスを構築するのは容易ではなく、多くの時間、労力、苦難を必要とする。

求められる説明責任

だとすると、そうしたコストを正当化する見返りがDMPにあるのだろうかと、多くの広告主たちが考えているのも驚きではない。DMP事業も行っているアドテク企業のロテーム(Lotame)でプロダクトディレクターを務めるピエール・ディエネット氏は、迫っているGDPRによって、そうした不安が強まるかもしれないと語る。DMPへのデータを増やしたのに、それを示す結果が得られていないと実感している広告主が増えていることに、ディエネット氏は気がついた。

「多くの場合、ブランドが考えなければならない一番重要なことは、データの(DMPへの)持ち込み方だ」と、ディエネット氏は語る。「つまり、GDPRに限らず、DMP利用の最適化が成功の最大の課題なのだ。たとえばサイトのどのページにタグをつけることにするかなど、データをDMPにどのように送り込むのかを、ブランドは戦略的に考えるようにする必要がある」。

アドテク企業のハドルド・マシズ(Huddled Masses)のCEO、チャールズ・カントゥ氏は、DMPがデータの課題を解決してくれると「だまされて」信じているマーケターがいると語った。DMPは「アドテクのベンダーが経験しているのと同様に吟味される」ことになるが、「成長を維持するため、サービスと価格設定を調整するだろう」と同氏。それでも、「マーケターに予言している未来が、理論と頭字語と謎ではなくパフォーマンスと成功に満ちたものである」ことについて、DMPはさらなる説明責任を求められることになるという。

DMPの可能性

DMPを批判できるようになるのは、そうは言っても簡単なことではなく、多くの広告主はまだ、インハウス化の必要があるスキルを検討している段階だ。広告主は現在、ファーストパーティデータをプログラマティックチャネルで活用するためだけにDMPを使っていると語るのは、DMPの自社開発の方法を企業にアドバイスしているプログラマティックアドバイザリー(The Programmatic Advisory)のCEOのウェイン・ブラッドウェル氏だ。「DMPの可能性を完全に解き放つには、そのデータを広告主がすべてのチャネルで使えるようにならないといけない」。

「実際には多くのブランドはまだ、一部のバナーをターゲティング可能にするために、プロセスの準備を進めている段階であり、それならDMPがなくてもできる」と、ブラッドウェル氏はいう。

広告主がさまざまなデータソースから合法的に情報を収集できるようにしていくため、かつてないほど大事なこの時期に、DMPの役割が問題にされているのは皮肉なことだ。サードパーティデータではなくファーストパーティデータを管理するカスタマーデータプラットフォーム(CDP)に広告主は移行すべきだという話が、業界にはあふれている。新しく登場する技術に役割があるのは明らかだが、広告主が自社のデータや他社のデータを検証する方法に注目しないとすれば、気がつけばまた思い込みを追い求めていたということになってしまうだろう。

Seb Joseph (原文 / 訳:ガリレオ)

 

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