政治のマトメ 森友・加計問題

森友問題

なぜ問題になったか
森友学園:払い下げ価格が安すぎる

実質200万円で払い下げ

2016年6月、学校法人「森友学園」に大阪府豊中市の国有地が払い下げられました。目的は小学校の建設です。不動産鑑定士が出した土地の評価額は9億5600万円でしたが、国有地を管理する近畿財務局が地下のゴミ撤去費用などを反映させた結果、払い下げ価格は「約8億円引き」の1億3400万円となりました。

首相が便宜をはかったのではないかという疑惑

そこで疑われたのが安倍首相夫妻の関与です。小学校の名誉校長には一時、昭恵首相夫人の就任が決まっていました。森友学園の籠池泰典理事長(当時)が近畿財務局との交渉時に昭恵夫人との交流を強調していたことなども判明し、首相夫妻の影響で土地の価格が不当に安くなったのではないかとの見方が出ています。

なぜ問題になったか
加計学園:認可に官邸から働きかけ?

加計学園:認可に官邸から働きかけ?

学校法人「加計学園」は2017年1月、52年間どこの大学にも認められていなかった獣医学部を新設する「国家戦略特区」の事業者に選定され、18年4月に愛媛県今治市に開学しました。ただ、加計孝太郎理事長が首相の「長年の友」であったため「特別の便宜」を疑われています。

首相や政府は関与を否定していますが、愛媛県職員が作成したという備忘録には「15年4月に柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と首相官邸で面会し『本件は首相案件』と言われた」などと記されていました。柳瀬氏は当初、愛媛県職員との面会について「私の記憶をたどる限り会っていない」と説明していましたが、18年5月の衆参両院予算委員会の参考人招致で、加計学園関係者と首相官邸で会った時に「愛媛県や今治市の方がいたかもしれない」と軌道修正しました。

その後、愛媛県が国会に提出した文書には、首相が獣医学部構想を知ったとしていた時期よりも2年早く加計氏から構想を聞き「いいね」と言ったとも書かれていました。首相は直後、愛媛県文書にあった加計氏との面会を否定しました。

なぜ問題になったか
官僚の忖度による決裁文書改ざん?

売買に関する経緯の改ざん

森友問題では、財務省理財局による決裁文書改ざん問題も発生しました。財務省が国有地払い下げの経緯を記した文書を国会に提出した際、首相や昭恵夫人の関与が疑われかねない記述を削除していたことがわかりました。改ざんを始めたとされる時期が、首相が国会で「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と明言した2017年2月17日の直後とみられることから、首相への忖度(そんたく)があったのではないかと追及されています。18年3月27日には佐川宣寿元理財局長が国会に証人喚問されましたが、首相や首相周辺からの改ざん指示は否定しました。

問題の当事者同士の関係性

なぜ問題になったか
「ポスト安倍」や省庁再々編に影響も

・内閣支持率の低下・自民党総裁選の行方が不透明に・省庁再々編の議論が浮上

18年9月の自民党総裁選の行方がにわかに不透明になりました。一時は安倍首相の3選が確実といわれていましたが、内閣支持率は急落し、党内での求心力も低下しています。総裁選には石破茂元幹事長や岸田文雄政調会長、野田聖子総務相などの出馬が取り沙汰されています。

自民党内では、安倍首相の3選を前提に首相が悲願とする憲法改正論議が進んでいました。首相は年内にも国会で発議したい意向ですが、現在の改憲案に不満を持つ石破元幹事長などが9月の総裁選で勝てば、改憲スケジュールが大幅に変わる可能性もあります。

財務省の決裁文書改ざんを機に省庁再々編への議論が浮上しました。最近では裁量労働制に関する厚生労働省の不適切なデータ使用や防衛省の日報隠蔽など不祥事が相次いでいます。01年の省庁再編から長い時間がたち、組織にゆがみが生じているとみて、自民党は年内にも新たな省庁のあり方を首相に提言する方針です。

取材・制作
桃井裕理、安田翔平、大島裕子

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