今回は強化人間についてです。
Zガンダムの時代、宇宙世紀0087から強化人間が登場し始めました。スペースノイドとして人類が宇宙に移住の地を求めてから、木星圏などでニュータイプが生まれたことに対抗して、地球連邦軍はニュータイプを恐れるようになり、一年戦争で活躍したアムロを初めとした元ホワイトベース隊のニュータイプ分子はアムロのように幽閉されたり、ブライトは閑職に追いやられ、メンバーは転々バラバラにさせられました。
自然的に発生するスペースノイドのニュータイプ能力はアースノイドにとって脅威があるとして、ニュータイプに対抗するべく、ティターンズは強化人間を作る組織を作りあげます。意図的に普通の人間を薬物療法や対放射能レベル反応に対して強化するため訓練をして、無理矢理普通の人間を超能力者(エスパー)にする訳です。
シャアは言った。
『ニュータイプはエスパーではないのだ』
当ブログでのZガンダムシリーズのTVアニメ本編だけで考察するので、OVAなど外伝は取り上げません。あくまでもグリプス戦役でのムラサメ研究所、オーガスタ研究所が強化人間を開発研究していたことだけに注目していきます(ZZガンダム・第一次ネオ・ジオン抗争も取り上げません)。
一年戦争終了後、地球連邦からジオン残党狩りの別組織となったティターンズは、ニュータイプに興味を持って研究し始めた。元ジオン公国軍のニュータイプ研究機関「フラナガン機関」の開発した技術を運用してアースノイドでニュータイプが生まれないなら、人工的に作ってしまえ。ということだ。
Zガンダムで一番はじめに登場する強化人間「フォウ・ムラサメ」。
日本のニュータイプ研究所ムラサメから来た。ティターンズのニュータイプ研究所はムラサメ研究所とオーガスタ研究所がある。元々はムラサメ博士が作ったムラサメ研が最初で、その下で働いていたローレン・ナカモトがムラサメ研から離脱し、オーガスタ研究所の主任博士となる。
何故日本でニュータイプ研究所が生まれたか?って。
ガンダムでも日本の本土トーキョーがコロニー落としに遭い、街が都市が壊滅した。我々の現代史でも日本は世界で初めての原子爆弾を落とされた唯一の被爆国であり、そんな被爆国が原子力を推進している。それと同じ考え方なんだと自分はそう思ってしまう。結局日本人ってそういう民族なんだなって。
戦争はしてはいけない、平和主義を唱え非核三原則がある癖して、原子力を推し進めて開発し他国に原発を輸出する。憲法9条改正もするだろう。宇宙世紀でのガンダムにおいても日本はコロニー落としで酷い目にあったのに、強化人間という言わば戦争に使う超人間兵器を開発するのだった。
これは製作者が富野由悠季監督が意図して作ったとしか思いようがない。
フォウに名前は無かった。戦争孤児だからだ。
すぐにムラサメ研究所施設で育てられ、名前はニュータイプ候補生の4番目だから、ナンバー4。
名前の由来はそのフォウから来ている。
小説で「フォウストーリー」があります。
どうやってフォウがムラサメ研に来て、どういう過程で地球連邦軍の士官へ入隊したのかが書かれています。この話は17年間「アニメージュ」の付録として発表された小説が修正の上再発売された作品です。
ガンダムの物語が、同じ時空を共有する一連の流れを細かな歴史として隙間隙間を埋めていくことがガンダムファンにとっての、ガンダム製作者の楽しみなんですね。
さてフォウの話は少し置いておきまして、ティターンズのニュータイプ研究所の組織において考察したいと思います。
上記の図が地球連邦軍ティターンズ組織のニュータイプ研究所です。
ティターンズは強化人間を作るため地球でのムラサメ研究所での活動が中心的でした。だが結果フォウはカミーユとの運命的な出会いをする。
それにより強化人間の精神の不安定さが強力に出てしまい、フォウはニューホンコンシティでの戦いでカミーユを逃がし、キリマンジャロ基地での戦いはカミーユをかばいジェリドにトドメを刺されて、ティターンズの強化人間としての役目は失敗に終わる。
ティターンズ上層部は宇宙でのニュータイプ研究開発へとシフトする。
そこがオーガスタ研究所である。ゼータ後半のストーリーで、ティターンズの地球の本拠地キリマンジャロを捨て宇宙に上がったジャミトフ・ハイマン大将はバスク大佐からニュータイプ研究開発の進行状況とニュータイプ候補生の報告を受けた。
今まで沢山の強化人間のテストを見てきただろうジャミトフも「ロザミア・バダムの件か...あの女はいい女だ」と、どっちとも取れる(笑)意味深な発言をしている。
シロッコにドゴス・ギアを乗り回されていたバスク様は、その間密かにオーガスタ研究所でローレン・ナカモト主任博士と強化人間とサイコミュシステムのプログラム化を水面下で進めていた。
シロッコはその話を部下から「バスクが強化人間の部隊を集めて急いでいる」と聞いた。「それでは遅いのだよ、数は集められまい」と、こき下ろしていた。まるで強化人間は使い物にはならないと知ってたような、物言いだった。
ローレン・ナカモトはフォウ・ストーリーにも登場しており、小説ではもともとムラサメ研に所属していたが、あることをキッカケにオーガスタ研に移ったこと、彼が柔軟性に欠ける思考の持ち主であったことをテレビ版では知り得なかった背景のことまで描かれている。
強化人間として試験投入されたのが「フォウ・ムラサメ少尉」ならば、本格的に実戦投入されたのは「ロザミア・バダム中尉」だろう。
そしてバスクのティターンズ強化人間部隊は、他にも存在したと考えてもいい(アニメでは出てこないが巨大な組織として考えたならば当然存在していてもおかしくない)。
何故なら、それを取りまとめるのがバスク大佐の切り札「ゲーツ・キャパ大尉」がいたからである。
なんともカッコイイキャラであって、私drake好みのパイロットです。そこは彼の能力の不思議さと声優さん(この後説明します)、あと外見にあります。
まず彼は一体どこを強化されたのか?といったくらいに普通でまともなパイロット。強化人間と複座搭乗用のグレーの新型モビルアーマーバウンド・ドックを操るが、クワトロの百式とは比べ物にならないお粗末な戦い方。ピンチになったら逃げるといった強化人間には有り得ない行動をとる。
しかしだ、クリーム色で髪型が左右違うカットという、なんともオシャレでイケメンなパイロットである。少し変えればカミーユと似たり寄ったり。
ゲーツはロザミアとは離れていても、彼女の感情と状態を感じ取れるといった能力は強化人間でしかできない。ニュータイプ部隊の上官として、あまり強化してしまうと精神が不安定になりすぎるから、ゲーツは程々にしかしなかったのだろう。
第39話「湖畔」でロザミアがアーガマ潜入任務のため、サイド3の13バンチ観光コロニー「モルガルデン」へ降り立つ。アーガマもそこに停泊していたから だ。
そこでローレンはニュータイプはニュータイプ(強化人間)同士を引き合い、互いに影響力を受け合うといった性質を知り、強化人間の弱点である精神の極度な不安定をカバーするため、ロザミアにカミーユがお兄ちゃんとプログラムする事で、ロザミアの精神の安定を図り、ゼータのパイロットを強化人間の出す波動でカミーユの能力を狂わせようとする思惑があったと思われる。
ロザミアは「モルガルデン」でカミーユを見かけると「お兄ちゃん!」と言ってカミーユを付け回し、まんまとアーガマ内部への潜入を成功させた。
ニュータイプとしての高い波動を持つカミーユはロザミィ(ロザミア)を狂わせ、カミーユの精神も脅かし自軍へ帰って行った。
やがてロザミィをフォウと見間違えるまでにロザミィを救おうと必死だった。カミーユの精神も限界だった。その点ではローレンの作戦は当たったことになる。
しかし戻ったロザミアはカミーユの影響を受けすぎた為に、ローレンはゲーツを第2のお兄ちゃんとして、ロザミアに再プログラムすることにした。
さて、先程の私のお気に入りゲーツ。この第2のお兄ちゃんである「ゲーツ・キャパ」の声優さんは『矢尾一樹氏』なんですが、Zガンダムの主人公カミーユ役の声優オーディションに矢尾氏は最終候補にまで絞られました。
その中にはジェリド役の『井上和彦氏』もいました。そして富野由悠季監督がカミーユ役に選んだのは『飛田展男氏』でした。後日談では矢尾氏はどうしてもカミーユ役をやりたかったそうです。そしてその熱意がZZガンダムのジュドー・アーシタ役を射止めたのです。
そのエピソードがあった中でZガンダムのアニメ(テレビ版。劇場版ではゲーツは登場しない)を見ると、面白い。第1のお兄ちゃんが飛田氏、第2のお兄ちゃんが矢尾氏と不思議に2人はロザミィのダブルお兄ちゃんになっています。偶然か?富野氏の演出か?カミーユ役の選考に落ちたので、後半でゲーツとして起用されたのでしょう。でもそれはゼータの物語で上手くハマったと思いますね。
ダブルゼータでの主人公ジュドーの声は矢尾一樹さんがピッタリです。矢尾氏のいつもジュドーが「このおぉぉぉぉーー!」って言ってる台詞がしっくりきます(笑)。
カミーユは鬱屈した暗い少年、矢尾氏のあの明るく元気のある声は結果的に合わなかったと思います。ゼータでの声優さんの「陰と陽」の使い方が絶妙だなあと思うのでした。
次回はニュータイプ専用機についてに続きます。
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