【シゴトを知ろう】リサーチャー 編

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【シゴトを知ろう】リサーチャー 編

2017.08.07

提供:マイナビ進学編集部

【シゴトを知ろう】リサーチャー 編

リサーチャーの仕事は、主にテレビ番組などのトピックス情報や取材先などを調べること。調べることやテレビが好きな人にとっては天職だといえるかもしれませんね。今回お話を伺った喜多あおいさんは、まだリサーチャーの仕事を専門にする人が少なかった時代に業界に入り、道を開いてきたリサーチャーの第一人者です。喜多さんは「調べ物」のスキルはあらゆる人にとって武器になると言いますが、それはなぜでしょうか。

この記事をまとめると

  • 博識であるより「何も知らない状態に戻れること」が大切
  • 代案なきNOはあり得ない
  • やりたいことや好きなことを常に心に描いていれば引きが強くなる

1時間の番組のために1カ月以上リサーチをすることも

Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください

映像制作・コンサルティング・広告代理業などを行う株式会社ズノーという会社の、「知的生産計画室」という情報に特化した事業部でリサーチャーとして働いています。今は『行列のできる法律相談所』『ガッテン!』『あさチャン!』『林先生が驚く初耳学!』などの番組を担当しています。ドラマ作りのためのリサーチを行うこともあり、2016年には『家売るオンナ』『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』を担当しました。企業や官公庁からの依頼でリサーチを行なうこともあります。調べ方は書籍・新聞・雑誌・インターネットなどを使ったり、人に取材をしたりとさまざまです。1時間の番組を作るために1カ月以上かけることもあります。

リサーチャーは物知りだと思われることがあるのですが、むしろ「知っている」ことがマイナスになる仕事です。極端な話、私たちはクイズ番組で「1+1は?」という問題があったとしても、「本当に答えは2なのか」を調べます。算数として尋ねているのか、哲学として尋ねているのか、回答者がどんな分野の人なのかによっても文脈は変わり、相応しい回答も変わるからです。あらゆる可能性を考えないといけません。とても地道な仕事です。先入観を捨てて、自分の知っていることも疑わないといけません。だから私は博識であることより「何も知らないゼロの状態に戻れること」をプロとして誇りに思っています。すごく頭の良い方だと逆にやりにくい仕事かもしれませんね(笑)。

一日のスケジュールは流動的で、朝は新聞に目を通して情報をインプットし、チームメンバーへの指示出しや依頼主への提出物の最終確認などを行います。日中はいくつかの会議に参加し、会議が少ない日はオフィスで調べ物を行います。夜はチームメンバーの進捗確認や彼らの作った資料の精査をします。仕事が終わったら自分の好きな分野の情報に触れます。この時間がないとリフレッシュできません(笑)。週1回は情報収集のために書店へ行き、月1回は4~5時間かけて書店の全ての本の背表紙を見て回ります。


Q2. どんなときに仕事の楽しさ・やりがいを感じますか?

私たちが調べて企画した内容を依頼主に喜んでもらえたときです。この仕事は結果が早いんです。会議でプレゼンした案はその場で「興味の有無」を番組プロデューサーや演出家に判断されます。勝つか負けるかのどちらか。その分かりやすさも自分に向いているなと思います。ボツになるときは相手の表情ですぐに分かりますし、落ち込むこともありますが、私が大切にしているのは「負けから逃げない」こと。来週また同じ会議があるので引きずってはいられません。二度と同じ思いをしないよう、ダメだった理由を分析して次につなげています。


Q3. 仕事の大変さを感じるのはどんなところですか?

限られた時間の中でどれだけ自分のイメージしたゴールに近い結果を出せるか、常に時間との戦いという大変さはあります。また、この仕事は努力と比例しないことがあります。一生懸命調べて探しても取材先が見つからなかったということもしょっちゅうです。ただその場合でも、手ぶらで「NO」と言うわけにはいきません。知恵や努力を振り絞って代案を出すことが大切です。この「代案なきNOはあり得ない」という考えは、若い頃に一緒に仕事をさせていただいた人気クイズ番組のプロデューサーに教わりました。

諦めどきの見極めも大事です。「もう少しやれば見つかるんじゃないか」と引っ張った揚げ句見つからず、締め切りに間に合わないのは一番良くないパターンです。早めに白旗をあげれば別の提案につなげることができます。そのためには「この人がNOというなら本当に芽がないのだろう」と思ってもらえるような信頼関係を築いておくことも大切です。

「調べる」を軸にさまざまな仕事を経験した20代

Q4. どのようなきっかけでこのお仕事に就きましたか?

大学卒業後に教育系の出版社で働いたり、作家秘書として小説作りのためのリサーチをしたり、「調べる」ことを軸に自分に合う仕事を模索していました。
リサーチャーの仕事を知ったのは28歳のときで、当時は地元神戸で、予備校の国語教師をしていました。新聞の娯楽欄に載っていた『世界ふしぎ発見!』のリサーチャー紹介の取材記事を見て、調べることもテレビも大好きだった私は「これだ!」と思ったんです。当時リサーチャーを起用する番組はほとんどなく狭き門でしたが、その日から毎日求人欄をチェックし、29歳のときに遂にリサーチャーの求人を見つけて応募し、転職しました。

まだメールもインターネットもなく、「情報」が世の中の鍵を握るとは誰も思っていなかった時代です。私が転職したのは構成作家さんの事務所で、その頃はまだリサーチャー1本で生活している人はほとんどいませんでしたが、それなら私がその最初の人になろうという決意で独立しました。その後、今の会社の社長と意気投合して入社し、社内に調査部を立ち上げてリサーチャーの養成も行うようになりました。今は「知的生産計画室」という新規部署を立ち上げ、リサーチャーとしての経験を生かして「調べる」をテーマにした教育活動にも力を入れており、講演や講座を行うこともあります。


Q5. 大学ではどのようなことを学びましたか?

文学部で国文学を専攻しました。1~2年次の基礎ゼミで学んだ調べ物や研究の基本スキルは今の自分の土台になっています。国文学で何かを研究するときは「何をソース(情報源)にするのか」というところから始まります。そのため、世の中にどんなニュースソースがあるのかをまず知っておく必要があります。例えば、江戸時代のことを扱うなら、その時代の基本のニュースソースとなるのは『群書類従』という百科事典です。それを引用した書籍は多くありますが、孫引きではなく原典にあたるのが基本です。また、そのテーマを扱った研究本を読むだけでなく、同時代に起きたことも併せて調べることで、その研究対象の輪郭が色濃く浮かび上がることも学びました。

3〜4年次では基礎ゼミで学んだことを生かして卒業論文をまとめました。私は「金閣放火事件」を扱ったのですが、それをルポとして書いた水上勉と、小説として書いた三島由紀夫を比較し、同じ事件を異なる人物が描くとどうなるかというテーマを研究し、一方を深めることでもう一方が浮き彫りになることを実感しました。最後は調べた既存の解釈を白紙にして自分の解釈をまとめたのですが、それはまさに今のリサーチの仕事のやり方につながっています。

ちなみにこの話には後日談が。この業界に入ってから『驚きももの木20世紀』というドキュメンタリー番組で、偶然この放火事件を扱ったのですが、そのリサーチを私が担当することになったんです。学生の頃は資料館で当時の記事を見るくらいしかできませんでしたが、取材として当時の刑事さんに話を聞くことができ、いくつかの疑問が解決しました。運命を感じましたね(笑)。


Q6. 高校生のとき抱いていた夢や経験したことが、現在のお仕事につながっていると感じることはありますか?

私は昔からとにかくスターが好きで、高校生の頃から憧れのスターの情報をリサーチしていました。アイドルでも映画俳優でもアスリートでも、人々の憧れのシンボルになるような人が好きなんです。インターネットがない時代だったので、図書館に通ったり雑誌を切り抜いたりテレビ番組を録画したり……その人に関わる情報は全て見て集めていました。スクラップブックを作るのも好きでしたね。当時好きだった人のことは今も定点観測しています(笑)。

最初から天職に出会える確率は少ない

Q7. どういう人がこの仕事に向いていると思いますか?

「知ることに喜びを感じられる人」ですね。「知っていることに喜びを感じる人」とは違います。テレビ番組はそのテーマについて知らない人が観て面白いと感じるものを作らないといけませんから、自分が知らない・興味がないテーマのほうが意外と良いものが作れるんです。「知っている」を過信するタイプの人には難しいと思います。
また、自分のやりたいことをやるのではなく、依頼主が求めているものに応える仕事なので、好奇心旺盛であるよりも「人の気持ちが分かる人」のほうが向いているといえます。「諦めない人」であることも大切です。相手が求めているものに応じてゴールを描けて、そこに辿り着くまで諦めない努力ができる人でしょうか。


Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします

自分が何をやりたいか、何が好きかを常に心に描いていると、それを引き寄せる力が強くなります。もちろん確率は変えられないのでしょうが、いざ願っていたものが来るとそれが強く印象に残り、自分は引きが強いのだと思えますよね。それが力になるんです。だから自分に暗示をかけることは大事です。

もう一つ皆さんに伝えたいのは、最初から天職に出合える確率は低いということ。好きなこと=得意なことであれば良いですが、得意でないと思えば収入は別のところで得て、趣味として好きなことを楽しむ道もあります。あまり得意ではないけど好きなことを仕事にしたい場合は……抜き差しならないことも多くあるでしょう。覚悟が要ります。そうしたことも含めて最初はゴールが見えず、紆余曲折することもあると思いますが、大切なのは「自分が今、何を一番大事にしたいか」を常に問いかけることです。逃げずに全力投球していれば、いざ天職に巡り合ったときに大きな力を発揮できますよ。



短いインタビューの時間にたくさんの金言を残してくれた喜多さん。いつも目の前にあることに真剣に向き合ってきた人だからこそ、一つひとつのメッセージに重みがありました。調べ物のスキルがあれば欲しい情報に効率よくたどり着けるので、皆さんもこれから将来を考えるにあたり、「調べ方」について学ぶところから始めてみるといいかもしれませんね。

【profile】株式会社ズノー 知的生産計画室 執行役員/テレビ番組リサーチャー 喜多あおい
http://www.zuno.tv/

この記事のテーマ
マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説

若い感性やアイデアが常に求められる世界です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種に応じた専門知識や技術を学び、実習を通して企画力や表現力を磨きます。声優やタレントは在学しながらオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が必要。学校にはその情報が集められています。

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この記事で取り上げた
「リサーチャー」
はこんな仕事です

テレビやラジオの番組を制作する際に、「ネタ」となる情報を調査するのが仕事。仕事の流れとしては、まず企画のコンセプトに合う情報を新聞や雑誌、インターネット検索などを通じて調査し、企画会議に提出する。そして、会議で決定した内容にふさわしい取材先を探し出し、取材交渉を行うまでを担当。企画の内容によって必要となる情報は変わるため、特定の事柄に詳しいことよりも、どのような種類の情報でもきちんと探し出せる「リサーチ能力」が求められる。ADや放送作家がこの仕事の役割を兼ねている場合もある。

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