系外惑星の生命には惑星の傾きや軌道の形も大事
【2018年5月21日 ワシントン大学】
米・ワシントン大学のRussell Deitrickさんたちの研究チームが、「ハビタブルゾーン」(岩石惑星の表面に液体の水が存在できる温度領域)に惑星が位置していても、必ずしもそれが生命に適した環境だと判断する証拠になるわけではないという研究結果を発表した。ポイントとなるのは惑星の赤道傾斜角と離心率だという。
赤道傾斜角は惑星の自転軸の傾きのことで、地球の場合は約23.4度だ。自転軸が傾いていることにより、惑星には季節変化が生じる。また、離心率は惑星の公転軌道の形を表す値で、軌道がどのくらいつぶれた楕円であるかを示す(0は真円、1に近いほどつぶれた円で、地球は約0.02)。軌道が楕円形だと、惑星が主星に近づいたり離れたりして両者の距離が変化する。
太陽系のハビタブルゾーンに位置する地球の場合は、数千年単位でほんの少しだけ揺れ動きながら、少し傾いた状態で太陽の周りをほぼ円に近い軌道で回っていることで、うまく生命が存在できる惑星となっている。
これまでの研究では、太陽に似た主星のハビタブルゾーンにある惑星で、赤道傾斜角が大きかったり変化したりする場合には、惑星・主星間の距離が不変でも惑星の温度が高くなることが示されていた。
今回Deitrickさんたちは、太陽のようなG型星の周りのハビタブルゾーンに存在する惑星にターゲットを絞り、赤道傾斜角と離心率という2つの要素が生命を育める可能性にどんな影響を及ぼすのかをコンピューターモデルで調べた。そして、惑星表面での氷床の成長などをより精密に取り入れた惑星モデルを使って、実際は惑星の温度はむしろ低くなるらしいという結果を得た。
「惑星の離心率や軌道長半径の変化―つまり主星と惑星の間の距離の変動―が大きかったり、自転軸の傾きが35度以上になったりすると、ハビタブルゾーンに位置する惑星であっても突然『全球凍結』する可能性が明らかになりました」(Deitrickさん)。
「自転軸の周期変化によってハビタブルゾーンの惑星の温度が上がるのはほんのわずかな期間しかありません。今回の研究で、系外惑星での氷河期は地球のものよりはるかに厳しいものになりうることが本質的に示されました。系外惑星に生命が存在するかどうかを考える上では、惑星軌道のダイナミクスが大きな要素になります。惑星の生命存在可能性を特徴付けるのに、ハビタブルゾーン内かどうかだけを考えるのでは不十分です。また、今回の研究結果から、地球は気候という観点でいうと比較的穏やかな惑星なのかもしれないということもわかりました」(ワシントン大学 Rory Barnesさん)。
Deitrickさんたちは、どの系外惑星に貴重な観測時間を割いて調べる価値があるのかを判断するのにも、彼らの数値モデルが役に立つと考えている。「たとえば、もし将来地球に似た惑星を見つけたとして、その惑星の軌道や自転軸が激しく振動することが数値モデルからわかったとしたら、別の惑星を詳しく観測することにした方が良いのかもしれません」(Deitrickさん)。
〈参照〉
- UW NEWS:Orbital variations can trigger ‘snowball’ states in habitable zones around sunlike stars
- The Astronomical Journal:Exo-Milankovitch Cycles II: Climates of G-dwarf Planets in Dynamically Hot Systems 論文プレプリント
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