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 「1カ月のスケジュールはかなりタイト。全てのシステムについてテストを間に合わせるのは簡単ではない」。ある大手ITベンダーの金融系システム担当者はため息を漏らす。2018年5月17日に新元号の想定公表日が2019年4月1日と分かったことを受けての反応だ。政府は2018年5月17日、新元号の公表を改元日である2019年5月1日の1カ月前と想定して、情報システムの新元号対応の準備を進める方針を示した。

 公表日が固まったことは、システム担当者にとっては一歩前進と言える。「改元に向けたシステム修正やテストの工程表が引ける」(大手ベンダー)ようになったからだ。「期間は短いが、短いなりに方法を考え、工夫してやっていくしかない」とある大手銀行の担当者は話す。

 公表日が固まったことで、改元対応における最大の課題が見えてきた。それはテスト工程だ。

 改元による情報システムへの影響は、業種や企業における和暦を使うシステムによって様々だ。小売業や流通業は影響が小さい。帳票への印字などを含めて表記はほぼ西暦を使っているからだ。一方、官公庁や自治体、金融機関などは業務で和暦を使う文化が残っているため修正が必要なプログラムが多い。具体的には表示を「平成」から新元号に変更する。

 システム改修は3段階に分けられる。影響調査(洗い出し)、実際の修正作業、そしてテストだ。新元号が公表される2019年4月1日まで残り10カ月。その間に3段階の作業をどこまで前倒して進められるかが成否を左右する。

公表から改元まで1カ月、テスト工程に負荷
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 1つ目の洗い出しは、和暦を使う入出力画面と帳票を見つけ出し、プログラムを割り出した上で、修正にどの程度の工数がかかるかを見積もる工程だ。ここは、新元号が決まる前に進められる。

 問題は2つ目以降である。確定した新元号の文字やレコードをシステムに実際に追加する2つ目の作業は公表日以降しかできない。3つ目のテスト、つまり新元号が正しく帳票や画面などに印字・表示されるかの確認についても同様だ。

 「修正作業そのものよりもテスト工程が膨大になるだろう」と富士通関係者は指摘する。文字やレコードの追加は、修正箇所にもよるが、それこそ1日もあれば十分だろう。だがテストは複数パターンの将来日付を使って「4月末までは平成と出力されるか」「5月以降は新元号が表示されるか」「新元号の文字に誤りはないか」といった確認が欠かせない。

 複数の入力画面を試したり、様々なパターンの帳票を出力したりといった手間もかかる。「請求書や見積書、帳票の種類やレイアウトなどはシステムによってはざっと数百種類以上を扱うケースが珍しくない。その全てについて確認が必要となる」(NTTデータの金融系担当者)。

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