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これを聴きにきたのだ。@NHKホール。
佐渡さんを聴くのは10年近くぶりかな。

しかし他の客の異様な興奮とは裏腹に、残念だった。
どうもこの組み合わせ、良くない。

オケは良く言えば土臭さの残るウィーン風味だが、悪く言えば融通が利かない。
それがバーンスタイン・ショスタコーヴィチと現代音楽ばかりやるものだから、相性悪すぎ。
アンサンブルは悪くないのだが、音楽を理解して演奏しているとは思えない。
うーん、ウィーンの二線級。

特にバーンスタインは、あのアメリカ臭さのプンプンとしたコード進行やリズム感がまったく生かされず、ニューヨークのスラムの陰鬱さや淫靡さなどどこ吹く風、本当によう解らん「現代音楽」として解釈していたように思う。
これでは面白くも何ともない。
『革命』も同様で、これホンマに革命したんけ?と思うくらい、三文芝居だ。


そこではたと気付いたのだが、佐渡さんの最大の弱点を見付けた。
「思想」がないのだ。

愛嬌があってサービス精神旺盛でエモーショナルで、とまで書けば確かに師匠のバーンスタインと被る。
しかし何か決定的なものが足りない、と何度聴いても思っていたのだが、それは「思想」なのだろう。
「思想」もないのに『革命』は振れまい。

バーンスタインは戦後の「レッド・パージ」を批判する形で『キャンディード』を書き上げたり、ベトナム戦争反対コンサートを開いたり(『雨のコンダクター』)、集会で演説をしたり、かなり政治的・思想的に動いた音楽家だ。
だから『革命』も渾身の名演を繰り出した。
しかし残念ながら、佐渡さんにそのような志向はない。

いつもニコニコ、みんなハッピー!では『革命』は絶対振れないだろう(なんで得意曲にしてるのかな?)。
佐渡さんが若い音楽家相手だと無類の腕前を見せるのに、ある水準以上のプロオケだとからっきしダメなのは、どこか「子供」だからなのかも知れない。
そう確信して帰ってきた。


悪い指揮者では絶対ないのだが、もう10年かかると言ったところか。
早いうちにもう1ランク上のオケのシェフになるか、内戦のさなかにあるオケに飛び込むかしない限り、彼のヒューマニズムは今後も空回りすることだろう。
それは実に惜しい。