数年前、高校生だった頃、通学のために毎朝ぎゅう詰めの中央線に乗っていた。
痴漢に遭うのは週に一度程で、大体駅で場所を変えたりして逃れていた。
そこで多くの人が降りる駅に着くタイミングで触っている痴漢の手をそのまま掴み上げて次で降りるように言った。
痴漢は逃げようとした、だが後ろにいた大学生くらいの男性が痴漢の肩を掴まえてくれた。
そのまま男性は痴漢を駅員に引き渡し、触っているところを目撃したと駅員室で証言してくれたらしく、警察署まで一緒に来てくれる事になった。
痴漢は駅員室のパーテーションの向こうで大きめの声でスイマセン!スイマセン!と繰り返していた。
駅のロータリーに停められたパトカーにその男性と乗り、痴漢の方が乗るパトカーが来ないのか待たされた数分の間の会話。
「ありがとうございました」
「ううん、触られてたの見てたからね。イヤだったでしょ」
「はい」
「ここで俺が触ったらどうなるのかな」
そこで何と返事したかは覚えていないし、実際触られるような事はなかった。
けれど、あまり男の人に期待し過ぎてはいけないと女子校育ちが思い知るには充分だった。
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