いざ自分の親が死んで財産や土地を相続するにあたり、多くの人が最初に悩むのが以下の2点です。
・自分は親族の中で相続の優先順位はどれくらいなのか?
・残された遺産の内、自分が相続できる割合はどれくらいなのか?
私たちの様な法律の専門家が相談者から相続の依頼を受けるときに、一番大事なポイントがまさに
・誰が
・どんな割合で相続をするのか?
という点です。
これまで様々な相続シーンに立ち会ってきましたが、中には相続順位や相続割合について無知が故に、相続放棄の選択を誤ってしまい、多額の負債を相続してしまうといったケースも過去には目にしてきました。
この様に相続では選択を誤ると取り返しのつかない大きなミスになるケースもあるので慎重に調査をするのです。
そこで本記事は皆様に遺産を相続する優先順位と相続の割合について、出来るだけ図を用いて分かり易く解説をしていきます。
一人一人異なる相続シーンのニーズに答えるべく、これまでの司法書士としての経験を元に33のパターン別事例を掲載しておりますので、その中からご自身のケースに近いケースが見つかる事と思います。
いずれ来る相続に備えて本記事を活用しお役立てください。
目次 [非表示]
第1章 相続の優先順位を徹底解説
本章では、誰が相続人となるのか?を理解していただく為に相続の優先順位の考え方と、代襲相続について解説します。
1-1 相続の優先順位を図解で説明
人が亡くなり相続が発生した場合に、配偶者(妻や夫)は必ず相続人になります。それ以外の相続人については優先順位が法律で決まっています。
①第1順位・・・亡くなった方の子供や孫(直系卑属といいます)
②第2順位・・・亡くなった方の親や祖父母(直系尊属といいます)
③第3順位・・・亡くなった方の兄弟・姉妹・おい・めい
下記に相続順位の図を載せます。
この図の順番に相続の優先順位は決まります。前の順位が全員いなければ次の順位の人が相続人という事になります。
亡くなった方に配偶者(妻や夫)がいる場合は、その配偶者は必ず相続人になります。
1-2 相続するはずの人が先に亡くなっている場合に代わりに相続する事を代襲相続といいます
相続が発生した場合に、本来相続人だった人が先に亡くなっている場合が有ります。その場合にその人に代わってその人に代わって相続する事を代襲相続といいます。
例えば、あなたの祖父が亡くなった際にその子ども(あなたから見て父)が先に亡くなっている場合に、孫であるあなたが父に代わって相続人になるのです。
では代襲相続について相続順位ごとに解説します。
①第1順位(子・孫等)の場合は、子が亡くなっていれば孫、孫が亡くなっていればひ孫とどこまでも下の世代が代わりに相続をします。
②第2順位(父母・祖父母)の場合は、父母が両方いなければ祖父母とどこまでも上の代をさかのぼっていくのですが、法律上は代襲相続とはいいません。ただどこまでも上の代をさかのぼるんだという事は覚えてください。
③第3順位(兄弟・姉妹・おい・めい)の場合は、おい・めいまでしか代わりに相続人になる事は有りません。ここが他の順位との大きな違いになりますので注意しましょう。兄弟・姉妹の場合は一代限りと覚えてください。
ポイント① 相続放棄した場合は代襲相続しません
相続放棄をした場合は、その子どもや孫がその人に代わって相続人にはなりません。
ポイント② 養子縁組以前に産まれた子は代襲相続しません
養子の方が既に亡くなっていて、その養親の相続についてですが養子縁組の日付と養子の子の産まれた日により結果が変わります。
養子縁組をする前に生まれていた子供は、自分の親を代襲して親の養父母の相続人とはなれないのです。
第2章 相続の割合について
2-1 各相続人の相続の割合
配偶者がいない場合は、その順位の人たちで100%の割合で相続をします。本章では配偶者がいる場合のそれぞれの順位の割合と配偶者の相続の割合について解説をしていきます。
①第1順位者(子や孫)の相続の割合
第1順位の相続の割合は、2分の1になります。
②第2順位者(父母や祖父母)の相続の割合
第2順位の相続の割合は、3分の1になります。
③第3順位者(兄弟・姉妹や甥・姪)の相続の割合
第3順位の相続の割合は、4分の1になります。
④配偶者(妻や夫)の相続の割合
配偶者の相続の割合は、第1順位者と共に相続する場合は2分の1、第2順位者と相続する場合は3分の2、第3順位者と相続する場合は4分の3になります。
①~④ともその順位者しか相続人がいなければ勿論その順位者だけが相続人ですので全ての割合がその順位者に相続されます。
2-2 相続の割合は負債等を引継ぐ割合でも有るのです
相続人は、亡くなった方のプラスの財産だけでなく、負債等のマイナスの財産を引継ぎます。
そのマイナスの財産も相続の割合の通りに引継ぐ事になるので注意しましょう。
第3章 33の事例で見る!パターン別相続優先順位と相続の割合
本章ではパターン別に相続の優先順位と相続の割合を記載していきます。ご自身に合うものを見つけてください。
図の見方は、分数の記載のある人がその相続についての相続人であり、その分数が相続する割合になります。
3-1 あなたの親(養親含む)が亡くなったパターン
1. 配偶者と子供がいる場合
2. 配偶者(夫や妻)が既に亡くなっていて、子どもがいる場合
3. 親が離婚している場合
4. 子のうちの一人が亡くなっており、孫がいる場合
5. 子の一人が養子に出ている場合
6. 認知された子がいる場合
3-2 あなたの妻又は夫が亡くなったパターン
7. 子供のうちの一人が他界している場合
8. 子供がいない、または、すでに他界していて孫がいない場合
9. 配偶者と祖父母が相続人となる場合
10. 被相続人(亡くなられた方)が養子になっていた場合
11. 配偶者に連れ子がいる場合
3-3 あなたの子が亡くなったパターン
12. 子(被相続人)に配偶者も子供もいない場合
13. 子(被相続人)に配偶者がいて、子供がいない場合
14. 子(被相続人)に配偶者と子がいる場合
15. 子(被相続人)の親の一方が亡くなっている場合
16. 養子に出した子・養子にもらった子の相続の場合
17. 配偶者の連れ子が亡くなった場合
3-4 あなたの叔父・叔母が亡くなったパターン
18. おい・めいが相続人となる場合
19. 叔父・叔母(被相続人)に配偶者がいる場合
20. 叔父・叔母(被相続人)の子が亡くなっているが孫がいる場合
21. 叔父・叔母(被相続人)の兄弟姉妹の子が亡くなっている場合
22. 叔父・叔母(被相続人)の親がいる場合
3-5 あなたの祖父・祖母が亡くなったパターン
23. 子供のうちの一人が先に他界している場合
24. 子供のうちの一人が後で他界している場合
25. 子供のうちの二人が次々に他界している場合
26. 養父母の父母が亡くなり、すでに養父母も亡くなっていた場合
3-6 あなた又はあなたの配偶者に連れ子がいるパターン
27. 配偶者に連れ子がいる場合
28. 配偶者に連れ子がいる場合(養子縁組してる場合)
3-7 あなたの義父母(夫又は妻の父母)が亡くなったパターン
29. 配偶者と子供がいる場合
30. 配偶者がすでに亡くなっていて子供がいる場合
31. 親(義父母)が離婚している場合
32. 子のうちの一人が亡くなっており、孫がいる場合
33. 子のうちの一人が亡くなっており、孫がいる場合
第4章 相続放棄がある場合の相続の優先順位と相続の割合
相続人の誰かが相続放棄をすると、他の人の割合が増えて相続の割合が変わったり、相続人自体が変わることがあります。本章ではその内容を解説していきます。
相続放棄とは、家庭裁判所に申立をする事によってその相続については相続人では無かったという効果が得られる手続きです。故人に借金が有った場合等に選択される手続きです。
4-1 相続放棄をすると相続の割合が変わる
相続人が相続放棄をすると、その人が本来相続するはずだった相続の割合が他の相続人に移ります。
相続の割合の移り方は以下のとおりです。
① 配偶者が相続放棄をした場合は、その他の相続人に均等にその割合が移ります。
② 配偶者以外が相続放棄をした場合は、配偶者以外の相続人に均等にその割合が移ります。
4-2 先順位の全員が相続放棄をすると次の優先順位の人が相続人になる
先順位の相続人の全員が相続放棄をすると、次の順位の人が相続人になります。先順位の相続人のうち、誰か1人でも相続をすると次の順位者が相続人になる事は有りません。
4-3 相続放棄がある場合の相続優先順位と相続の割合の事例
相続放棄をすると相続の優先順位と割合が変る事が有ります。
下記の図は、子供が1人だけの方が亡くなられて、その子供が相続放棄した結果の図です。
もし子が相続放棄をしない場合は、妻が2分の1・子が2分の1の割合で相続しますが、相続放棄を子供がした事により、上図の様な割合に変るのです。
第5章 遺言が有る場合の相続の優先順位と相続の割合
遺言で誰に、何を相続させるのかを指定することができます。本章では遺言が有る場合の相続の優先順位と相続の割合について解説します。
5-1 遺言が有ると相続の優先順位と相続の割合が変わる
遺言では、相続人の内の誰かでも良いですし、相続人以外の人に遺産を渡す事もできます。そしてその割合も自由に決められますので、遺言に書いてある部分についてはその通りに相続の優先順位と相続の割合が決まるのです。
遺言が有っても、記載が無い遺産等が有る場合は本記事で記載のとおりの優先順位で相続をしていきます。
5-2 遺言でもらえる遺産が少ないと取り返す事ができます
遺言では自由に相続させる人や割合を決められるのですが、配偶者と第1順位(子や孫)と第2順位(父母・祖父母)には遺留分という権利が有ります。本来の相続割合の2分の1の割合について、それを下回る割合の遺産しか受け取れない場合は、遺留分減殺請求権という権利を使えば取り返す事ができます。
下記に遺留分の計算例の図を記載します。
上図に有るように、本来の相続分(法定相続分)の半分については請求をすることが可能なのです。
第6章 遺言について不正をすると相続する資格が無くなります
遺言書について不正をすると、その相続については相続する権利を失ってしまう事があります。
下記の様な遺言への不正は相続権を失います。
① 遺言書を作ろうとする人に対して、詐欺や強迫をして書かせる
② 既に遺言書を作成している人が、その内容を変更しようとしているのを詐欺や強迫により妨げた
③ 遺言書を偽造・変造・破棄・隠すような事をした
上記の①~③の様な場合は、その方の相続については「相続欠格」という状態になり相続する事はできなくなるのです。
特に自筆証書遺言といって、本人だけで作成できる遺言の場合は本章にある様な不正をしたと他の相続人から主張される事もあります。保管を第三者(司法書士等専門家)に託す等して、トラブル防止をしましょう。
第7章 結婚していないカップルの間に生まれた子(嫡出でない子)がいる場合の相続の割合
結婚していないカップルの間に生まれた子(嫡出でない子)と結婚している夫婦の間に生まれた子(嫡出子)は、平成25年9月5日以降に発生した相続については全く同じ割合となります。
それ以前の相続については、遺産分割協議が終了して権利関係が確定している様なケースはそのままの権利関係で確定します。
平成13年7月1日以降に開始した相続で、遺産分割協議等も終了していないケースの割合は、平等になります。
まとめ
相続の優先順位については本記事をお読みいただいて理解して頂いたと思います。
①第1順位・・子や孫
②第2順位・・父母・祖父母
③第3順位・・兄弟・姉妹
④配偶者(夫・妻)は常に相続人
上記①~④を参考にご自身のケースにあてはめて下さい。
相続の割合については、本記事内の事例を参考にご自身に近いケースを見つけて下さい。
割合は計算が複雑ですので、困った場合は専門家に確認をするのをおすすめいたします。
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