年100回“現場”に通う舞台オタクが東十条で幸せな生活を手に入れるまで【オタ女子街図鑑】

著: 劇団雌猫 

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二次元、ジャニーズ、宝塚にアイドル。次元もジャンルも異なれど、オタク女子にとって趣味は人生の重要な一部。趣味を満喫するうえで、実は大切なのが「暮らす街」。オタク女子はどんなことを考え、どんなことを重視して街と家を選ぶのか?

『浪費図鑑』『悪友』が話題の4人組オタク女子ユニット「劇団雌猫」がお届けする連載「オタ女子街図鑑」。毎週末のように舞台やコンサートに通い詰める“現場オタク”が一念発起し、実家を脱出。幸せな生活を手に入れた街は……。

本日の語り手 スナネズミさん

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東十条、聞いたことある?

【東十条】と聞いて、すぐに場所が分かる人はどのくらいいるだろうか。

北に赤羽、西に十条、南に王子といった、北区のそこそこ知られた土地に囲まれた穴場ともいえるエリアだ。私はここに、もう3年住んでいる。

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小学生のころからジャニオタだった。

初恋ジャニーズは堂本剛くん。たまたま家で観ていた『金田一少年の事件簿』でこの人……カッコイイ!! と雷に打たれたような感覚で恋に落ちた。

その後はいわゆる“黄金期”のジャニーズJr.や嵐のファンもやっていたが、いかんせん小学生に出来ることはなけなしのお小遣いで雑誌やCDを買い、お年玉でビデオを買う、それくらいのものだ。

学生生活を優先してジャニーズを離れたこともあったけど、嵐をテレビのプライムタイムでよく見かけるようになったタイミングと、自身の労働で賃金を得て自由にお金を使えるような年齢に突入したタイミングが上手くハマった結果、華麗に舞い戻った。

その後、最近はジャニーズだけではなく、『うたプリ』や『あんスタ』などの2次元、『刀剣乱舞』や『おそ松さん』といった2.5次元にもハマることとなり、私は20代になっても実家を出られずにいた。だってそうでしょ? オタクはお金がかかる!!

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そういう開き直りもありつつ、いつか実家を出たいという意識も強く持っていた。

私はコンサートや舞台といったいわゆる≪現場≫が好きなオタクなので、休日は大体出かけるのだが、その都度、どこに誰と行くのか何時に帰ってくるのかを確認してくる過保護な親に辟易していたし、とにかく都内のどこに出るにも時間がかかった。通学するにも通勤するにも現場に行くにも1時間以上は絶対にかかる。下手したら2時間以上だ。

自由になりたい……でも一人暮らしはお金がかかる……と二の足を踏んでいた私にも、実家の改修という「一人暮らしをするなら今しかねえ!」というタイミングが訪れた。

現場オタクとしてフットワークの軽さに定評がある私、そこから1カ月の間で家を決め家具をそろえ、引越した。そう、東十条に。

地味だけどアクセス抜群な東十条くん

一人暮らしをしている同僚に相談をしながら、まずはエリアを決めるべく調べ始めた。正直、北区といえば赤羽!王子!しか認識しておらず、東十条という駅は知らなかった。

そんな私が東十条を選んだ理由は大きく2つある。

1.条件を満たしたうえで家賃が予算7.5万円以内に収まる
2.会社にも現場にもアクセスが良い立地

以下が私が家を探す際に挙げた条件だ。

・バス/トイレ別
・駅徒歩10分以内
・築15年以内
・軽量鉄骨以上
・1K20㎡以上
・ベランダつき

家にいる間は、録画した映像、またはコンサートや舞台のブルーレイを見ている私のようなオタクにとって、木造だと音漏れが気になると思ったので、軽量鉄骨以上で探すことは当然であった。また、イベントがあるたびに物が増えていくオタクの部屋にはある程度の広さが必要だ。

どれも人並みの条件だが、これらを満たしたうえで予算7.5万円に収まる地域は都内では多くなく、この時点で2~3エリアに絞られた。

そこからさらに決め手になったのは各所へのアクセスの良さ。

勤め先の有楽町に1本かつ30分以内で行けるのは最低条件。ただ、東十条駅自体は京浜東北線しか通っていない駅なので、一見使い勝手が良い駅には見えないのだが……。

ここで思い出してほしい、東十条の西には十条先輩がいることを!!

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JR東日本Webサイトより

十条駅は埼京線が走っているため、池袋-新宿-渋谷に乗り換えなしで行ける! なんなら国際展示場駅までも乗り換えなし! 乗り換えめんどくさいマンには夢のような線だな埼京線!(但し埼京線の通勤ラッシュは地獄なので、通勤には使わないこと前提)

東十条駅から十条駅までは徒歩約10分。夏など徒歩10分はつらい……という時期は赤羽を経由すればよし。赤羽までは一駅2分。

京浜東北線に話を戻せば、秋葉原までも一本、有楽町までも、東京までも、横浜までも一本! つまり、東十条駅と十条駅を駆使すればだいたいの主要エリアに乗り換えなしで行ける。

この、新宿方面にも東京方面にもアクセスが良いというのは現場オタクにとって意外に重要と考えていて、それは新幹線・バスといった遠征時に多く利用する交通手段の乗り場があるエリアだから。

現場オタクは万年金欠なのでいかに安く・無理のないスケジュールで交通手段を手配するかを吟味する必要があり、2つのターミナル駅へのアクセスが良いことは選択肢の幅を大きく広げてくれる。

ちなみにこの3年間で私が一番足を運んだ劇場は北千住のシアター1010なのだが(舞台『刀剣乱舞』や『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』などを観劇。次点は渋谷のAiiA 2.5 Theater Tokyoで、ミュージカル『刀剣乱舞』や『劇団シャイニング』、舞台『KING OF PRISM』などを観劇)、多くのオタクから遠い遠いと愚痴が出るこの会場も、東十条からなら20分で行ける。これまた有難い。

私はとにかくこのアクセスの良さを一番気に入って、東十条に住むことに決めた。

地元で出会った新たな「現場」

住んでみたら住んでみたで、背伸びせずに生活できる、ゆったりとした雰囲気の東十条は、とても私に合っていた。

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北区の商店街といえば十条銀座商店街が有名だが、東十条も駅の目の前から商店街が伸びている。

この商店街に活気がある時間に帰れることが少ないのは残念ポイントだけど、だいたいの日用品・食材はこの商店街でまかなえるのはうれしい。

100均やドラッグストアはもちろん、食材に関しては北口徒歩1分にある「スーパーみらべる」「FreshFruitみやた(八百屋さん)」「お肉の専門店jump」の3店がアツい。というのも10秒で店と店を行き来できるので、野菜と肉に関しては、より安いものを選択できるのだ!

しかも「スーパーみらべる」は深夜1時まで営業。ソワレ観劇後、友人と食事してから帰ってきても立ち寄れる。ハッピー!

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現場・遠征続きで疲れが溜まった! 大きな風呂に漬かりたい! というときには地蔵湯にも出向く。このような昔ながらの銭湯と、初めて出会うことができたのも東十条に住んだおかげだ。

そして、うれしい出会いは銭湯だけではない。現場オタクとしても東十条には刺激的な出会いがあった。

篠原演芸場だ。

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落語会が行われることもあるようだが、おそらくほとんどの期間は大衆演劇が行われている。元々、大衆演劇を好きな友人が数人いたため、彼女たちに連れて行ってもらったのがきっかけだったのだが、驚いた。

大衆演劇は芝居とショーの二部または三部構成で行われるので、演劇を見たい欲とショー(舞踊・ダンス)を見たい欲がいっぺんに満たされる。しかも、約3時間半の観劇で1600円! 破格か!?

私はまだ2.5次元舞台に時間もお金もとられているので、贔屓の劇団を見つけて全国各地に……というオタクではなく、地元で、しかも1600円で現場欲が満たされる手軽さを楽しんでいる。

演劇に慣れている俳優オタにも、ショーに慣れているジャニオタにも、一度体験してみてほしい現場だ。20~30代のお客さんも結構いる。

花を贈るといえばスタンド花を思い出す皆さん、役者自身に「お花」と呼ばれる“ご祝儀”を挿せる現場、ここにありますよ! 私はこの「お花」を初めて見たとき、興奮しすぎて連番の友人にたしなめられた……。

あと、実はここが一番重要なポイントだけど、篠原演芸場の中で買える手づくりおにぎりの美味しさは半端ない。これはリアルガチ。

人生とオタ活を潤す一人暮らし

実家から現場に通っていたころ、どう頑張っても当日に帰宅できない場合は、都内のホテルを予約して、そこから仕事に行くこともあった。現場後のオタ友とのオタトークが盛り上がってきたところで、終電だからと退席しなければならないことも多々あった。

今は、朝7時過ぎに家を出て国際展示場に向かっても、不審な目で見る家人もいない。1泊4日の限界海外遠征をしても、家に帰ってゴミ出しをした上で仕事に行ける。

現場オタクこそ! とまでは言わないけど、自分の行きたい現場に、自分が満足する数だけ行けるように、一人暮らしを選択することも、きっと悪くないと思う。逆に、一人暮らしをすることで現場の数を強制的に制限する、という手もある……かも。すべてのことを自分で決めて、自分のペースで行える気楽さは、何ものにも代え難い。

東十条に住んだことで、私の現場オタク人生はますます潤ったと言える。東十条名物・線路沿いにいる撮り鉄の皆さんにオタクとしての親近感を抱きながら、今日も私は現場に向かう。

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劇団雌猫、同人誌最新刊は「悪友 vol.3 東京」。

オタク活動と切っても切り離せないこの街について14人の女性が内と外から語る、愛憎まみれる匿名エッセイ集。あなたにとって「東京」ってなんですか?

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<劇団雌猫による「オタ女子街図鑑」、次回は6月後半に更新予定です!>



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■オタ女子街図鑑 過去の記事

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著者:劇団雌猫

劇団雌猫

アラサー女4人の同人サークル。「インターネットで言えない話」をテーマに、さまざまなジャンルのオタク女性の匿名エッセイを集めた同人誌「悪友」シリーズを刊行中。浪費、美意識、恋愛に続く新刊テーマは「東京」です。「悪友 vol.1 浪費」の増補改訂版として、書籍「浪費図鑑」(小学館)が2017年8月に発売。その他、イベントや執筆など楽しく活動中。

Twitter:@aku__you

ブログ:劇団雌猫