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巨額税金投入で国家プロジェクトと化した「婚活」への違和感

政官財のトライアングルで回っていた

安倍政権が推進した「官製婚活」とは何だったのか? この5年間、毎年3〜40億の少子化対策の交付金が確保され、自治体にとどまらず、企業や団体を巻き込んで行われてきた。

では、そもそも官製婚活はどのように進められてきたのか? 官製婚活について取材・研究してきた富山大学非常勤講師の斉藤正美氏がその構図・実態を明らかにする。

「政府お抱え」委員と婚活業界への利益誘導

前回(「安倍政権が進めた『官製婚活』5年で起こったこと」)紹介したように「ニッポン一億総活躍プラン」が2016年6月に閣議決定され、婚活事業への支援を国・地方自治体の取り組みに加え、企業や団体、大学など民間の取り組みへと拡大して支援していく方針が決まった。

具体的な取り組み内容や手法等を検討するために、同年10月、内閣府「結婚の希望を叶える環境整備に受けた企業・団体等の取り組みに関する検討会(以下、検討会)」が設置された。

この検討会がまとめた提言では、企業・団体・大学等の結婚に向けた取り組みを「国・地方自治体が連携して、適切に支援していくこと」が必要と指摘された。

 

ポイントは、地方自治体の取り組みに限っていた交付金を民間企業の取り組みへも回せるようにしたことだ。

具体的な内容には、一般に生涯の人生設計を指す「ライフプラン」という言葉が10回も頻出していた。

実はこれは、生殖機能も劣化するから「妊娠にも適齢期がある」ということを若い世代に教えるもので、暗に結婚、出産を急がせるために中高大学生向けにライフプラン講座を行うという提案だ。

だが、提言をまとめた「検討会」の構成メンバー12名には偏りがあることが判明している。

〔PHOTO〕iStock

「検討会」が審議するのは、婚活事業への支援対象を企業や団体、大学などへと拡大することについてであったにもかかわらず、婚活支援事業者の母体企業リクルートの関係機関に在職する人が委員に就いていた。

他にも婚活業界と関係が深い研究者が「検討会」の座長や委員を務める一方、婚活業界ともつながりの深い知事も委員に選ばれていた。その一方で委員の中に婚活事業の対象となる労働者の代表は不在という有様だ。

「検討会」は、婚活支援が民間に広がることで利益を得る側の関係者に偏っており、「検討会」及び提言の妥当性に疑問符がつく。