列に割り込む中国人は、怒られたらどうするか?

「大陸的」という言葉のネガとポジ

2018年5月22日(火)

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 中国の人たちを形容する時、日本人はしばしば「大陸的」「おおらか」といった表現を使う。良い意味の場合もあるし、ポジティブっぽい表現をしながら、その実「だからダメなんだ」との意が含まれていることもある。

 中国とあまり関わりのない人と話をしていると、

 「田中さん、あっちの人は、なんていうか、大陸的なんでしょうねえ」
 「まあ、そうですねえ」

 みたいな話で、実はなんだかわけがわからないことがままあるのだが、日常的によく聞く表現ではあるものの、実際のところ「大陸的」とは何なのか、「おおらか」とは、どんな様子を指しているのか、明確な定義を聞いたことはない。

 あまり好きな言葉ではないので自分で使うことはまずないが、「大陸的」を辞書で調べてみると

  1. 大陸に特有なさま。「 -な風土」
  2. 細かなことにこだわらず、おおらかでゆったりしているさま。
    (三省堂 大辞林 ウェブ版)

 とある。ここでは②のほうだろう。

 過去2回の連載をお読みくださった方はお気づきだと思うが、「細かなことにこだわらない」「おおらかでゆったりしている」とは、要するに「スジ」ではなく、「量」で発想する中国人の思考パターン(社会が持っているOS)のことを指している。「スジOS」の日本と「量のOS」の中国だ。

 さまざまな状況に直面した際、「スジOS」のように理屈通り、ルール通りに反応するのではなく、その場の状況に応じて、その人が最も合理的だと思うやり方をとる。その判断基準は「現実的な影響の大小」にあるので、対応は人によって幅が出る。要は大きな差し障りがなければよいわけで、「細かなことにこだわらない」「おおらかでゆったりしている」と日本人が感じるのはそこに理由がある。

 一方でこうした「量のOS」の思考方式は「詰めた話」が苦手だ。

 完璧さ、徹底的な行動を求めるような仕事、枠組みに沿ってコツコツ蓄積していくようなやり方には不向きというデメリットがある。ネガティブな意味で「大陸的」が使われるのはこういう場合だ。

 一言でまとめれば、常に規範を重視し「こうあるべき」を目指す理念追求型の日本人、現状に即した臨機応変な合理性を重視する現実主義の中国人――と言えるかと思う。

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「列に割り込む中国人は、怒られたらどうするか?」の著者

田中 信彦

田中 信彦(たなか・のぶひこ)

BHCCパートナー

90年代初頭から中国での人事マネジメント領域で働く。リクルート、大手カジュアルウェアチェーンの中国事業などに参画。上海と東京を拠点にコンサルタント、アドバイザーとして活躍している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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