(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年5月18日付)
「世代間契約」という観点からの政策分析は、果たして有用なのだろうか。
英国のシンクタンク、レゾリューション・ファウンデーションが後援する「世代間委員会」のリポートは、有用だという見方を前提に編まれている。リポートには価値のある提言も収められている。しかし、この前提には説得力がない。
問題は、神話めいた世代間契約が破られていることではない。経済成長、高齢化、リスクの共有、住宅、所得の再配分という5つの重要な分野で英国がお粗末な政策しか打ち出してこなかったことこそが問題なのだ。
世代間契約に注目すると、少なくとも3つの大きな問題にぶつかる。
第1に、世代の定義は恣意的なものだ。
第2に、世界大戦のように全員が経験する災難を除けば、同じ世代内における機会や結果の違いの方が、異なる世代間に見られる違いよりもはるかに大きい。例えば英国など、高所得国の基準に照らして格差が比較的大きい国では、特にそうだ。
第3に、リポートは「生活水準は世代が下るにつれて上昇するべきだ」としているが、この考え方は、経済成長が続いてきた結果にすぎない。
経済成長がひとたび止まれば、この考え方も終わらなければならない。重要なのは成長であり、根拠なく主張されている規範ではないのだ。