5月末付で、弊社のエンジニアが退職することになりました。
彼は私がこの会社の社長を勤めて、初めての新卒採用の社員の一人だっただけに、思い入れも強く、彼の人生が輝かしいものになることを祈念せずにはおれません。
弊社は大手企業様との直接取引の案件が多く、業務系システムからWeb系システムまで、幅広く開発業務を行っております。
弊社は、彼のようなスペシャリストの他、営業、マネージャー、PM、PLなど多彩な人材を抱えており、それぞれの文化が異なっているのを面白く見ておりました。
特に、エンジニアの世界では退職した時にブログ・エントリを書く文化があるそうです。
私はエンジニアではなく経営者ですが、退職エントリを書いてみようと思います。
何をやってもらっていたか
Web系システムの開発をお任せしていました。
将来的にはフルスタックエンジニアを目指してもらう為、新卒入社時より、Web系システムの制作チームに参加してもらい除々に担当フェーズを増やしていく、という教育プランを策定しました。
先輩エンジニアから見ると頼りない存在だったようですが(笑)長年OJTにより経験を詰み、3年目となった今年は、いよいよ彼中心の制作体制で幾つか案件を任せてみようかな、と思っていた矢先の退職となりました。
会社の方向性
今年より、会社の方針を変更して、営業スタッフの増強、さらに大きな案件を受注すべく、数社、新規の代理店様との取引も開始いたしました。
また、アジャイル開発手法を取り入れることで、それまでウォーターフォール開発で行っていた古い進行管理を止め、クライアント様と開発とのエンドツーエンドの関係を結ぶことで、よりお客様の要望にお応えできる体制を整えました。
おかげさまで、年度末で前年比50%増の売上を達成し、戦略の転換の正しさを実感しました。
成長の機会が沢山あった
そんな中、彼から相談したいという申し出がありました。
話を聞いてみると「納期と比較して、お客様の要望が多すぎて間に合わない」「人が足りず、手がまわらない」など、現場の負担がかなり大きくなっているとのことでした。
タイミングの悪いことに、その少し前に彼の先輩エンジニア二人が体調の問題で休職しており、現場の人間が減った結果として、彼の仕事量が増えていた面もあるようです。
疲弊した顔で言う彼でしたが、私は、内心これは彼にとってのチャンスである、と考えました。
確かに先輩エンジニアがいなくなった状況は、やるべき仕事も増え、しんどい時期です。
しかしこれは同時に、今まで先輩エンジニアに任せきっていた設計フェーズや、お客様との折衝などを若いうちから経験できる「機会」でもあるのです。
3年目の彼にとっても同年代と比較して、早く上流工程に関われますので、将来これは大きなアドバンテージになります。
私はそのように伝えました。それでも彼は納得いかない様子で「疲れがとれない」などの体調面の不安を訴えましたので、次のような話をしました。
私が若かった時代は、どこも彼以上の激務が当たり前でした。私も毎日終電近くの時間に帰ったものです。
やる気のない人は、長時間勤務に耐えかねてずっと不平を言い続け、最後には辞めてしまいますが、同じ仕事量でもやる気がある人間はそうは捉えません。
本来、人間は「楽をしようとする」生き物です。1日で終わる仕事量が100であれば、80ぐらいの仕事をこなして、残った時間を休憩や勉強に使うのです。
しかし、私に言わせればこのやり方は非常に効率の悪いやり方です。
自分のキャパシティを超える仕事をあえてやってみることで、それが程よいプレッシャーとなって、自然と仕事の整理を行い順序を調整したり、効率的な業務を行う方法を見つけたりして、限界だと思っていた自分キャパシティを大きく上げることができるのです。
先程の例で言えば、1日に150、200の仕事量がこなせるようになる――つまりは生産性を高められるのです。
(もちろん私は今でもこれを実践して、彼以上に働いています。)
私は、これを機会に彼がさらに成長してほしいと思いましたので、「時間がない」という彼に向かって、以上の説明を行い、「時間は与えられるものではなく、作るものなんだよ」と言いました。
メッセージが上手く伝わったかはわかりません。
そのしばらく後、彼が退職を表明してきたということは、やはり、このあたりの自分の経験が上手く伝わらなかったのか、または現場で実践しようとしてみたが、上手くいかなかったのかもしれません。
残念ですが、仕事ができる、できない、というのは要領の良さであったり、頭の回転の速さもかかわってきますので、このように個人差があることは致し方ない面もあるのでしょう。
あまり悪く書きたくはないのですが、前日に残業した時などに、彼は遅刻することが多く、私も慣れるまでは仕方ないと、それを大目に見てきたのも、結果的には悪かったのも知れません。
また、彼に辞めた後どうするのか、といくら聞いても教えてくれなかったことが引っかかります。
ないとは思いますが、世間知らずゆえ、競合他社への転職などといったタブーを犯してしまうのではないか、と心配しています。
労働者に退職の自由があることは事実ですが、こちらにも経営者の横のつながりがあり、またそれらを含む社会のルールというものも存在します。
自由だから何をやってもいいのだと、「筋」をちゃんと通さないで、そういう考えで行動すると、この業界、人の噂というのはあっと言う間に広がってしまいますので、正直なところ、大丈夫かな?とも思ってしまうのです。
それでも彼に感謝する理由
3年間、彼という若い社員と同じ目標に向かって走り続けられたこと。
短い間でしたが、経営者という立場でも、これ以上の喜びはありません。
また、飲み会で、彼や他のエンジニア達と会社の方向性や、将来の事業について皆と語り合う濃密な時間を過ごすことができました。
休職中の二人の他に弊社にはエンジニアがおりませんので、当分の間、開発を自社で行うことができなくなりますが、
彼らと向き合い、エンジニアリングという事業の土台をしっかりと築き上げられたことは会社の大きな財産になっています。
将来
彼の退職後もエンジニアの採用人数を拡大し、さらなる飛躍を目指すつもりです。
AI、仮想通貨、フィンテック、日本の、世界の、ITシステムは大きな転機を迎えています。
この大きな波に乗り、顧客の希望に最も柔軟に対応できる唯一無二の制作会社として弊社はこれからも歩み続けるつもりです。
課題
これは余談ですが、日本のエンジニアの実力はかなり低いと感じています。
弊社では、他社と同等以上の給与を出しておりますし、仕事のスケールも大手企業様と比べて遜色ないと考えておりますが、
人材採用の場で、AIやビッグデータ解析のできる人材や経験者を見ることはほとんどありません。
また、現在はエンジニアがおりませんので、案件を外注に切り替えておりますが、
進捗管理が上手くできず、トラブルになったり、納品されても品質が不足していてクライアントからクレームがつくケースが多々あります。
これでは、欧米と比較して日本のITが大きく遅れをとるのもやむを得ない気がします。
だからこそ、弊社は共に成長できるメンバーとしてエンジニアを募集しています。
成長のスピードが早いのでPMまで3年で上り詰めた人もいますし、一人ひとりのエンジニアの裁量の大きさも特徴です。キャリア・アップには最適な環境です。
ご興味のある方は、弊社HPの応募フォームよりぜひご応募ください。
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