歌手の西城秀樹さんが5月16日、「急性心不全」で亡くなった。15年間に及ぶ闘病生活の末の享年63――その早すぎる死をヒデキ世代はうまく受け入れがたく、歌手としての足跡の輝きを訃報によって知った若い世代も多いかもしれない。
西城さんは48歳で「脳梗塞」を発症。彼は以降、リハビリ姿や包み隠さぬ苦闘発言……コメントの数々から脳梗塞の怖ろしさを世間に発信、「脳卒中予防大使」を務めたこともある。
だが、脳梗塞が早すぎる死の遠因となったことは想像に難くない。
水を飲まずにサウナ、3箱強のヘビースモーカー
脳梗塞の始まりは「強烈な眠気とだるさだった」と、西城さんは回想している。その最初の発症が48歳時だ。脳梗塞を起こしやすい人の条件を鑑みれば、その発症年齢の異例さが際立つ。
身長181センチのワイルドな容姿と歌唱力を持ち、サマースポーツ全般を嗜み、冬は白銀を滑走し、本人も「四季を全部感じる人」を自称していた。
当然「健康に関して人一倍自信を持って」おり、40代からは自己の理想体重(68kg)を保持するため、野菜料理を中心に栄養バランスに慎重さを喫したという。
体型、体力維持のためにトレーニングも真剣に取り組んだが、「そこに落とし穴があった」と、脳梗塞の原因について本人は述懐している。
「水分を極力控えていたことが血液の成分を濃くして、脳梗塞の引き金になってしまった。僕の病気は脳の細い血管が詰まる<ラクナ梗塞>で、若い人でも発症しやすい。脳梗塞はオヤジだけの病気じゃないんだ。」(週刊プレイボーイでの激白)
加えて、健康に自信がある人ほど「もう一度自分の生活や体をチェックしておくほうがいい」と、西城さんは若い読者相手に語り下ろしている。
当時、平成16年に上梓された西城さんの闘病記『あきらめない 脳梗塞からの挑戦』(二見書房刊)を読んだ広島市立安佐市民病院・名誉院長の岩森茂氏は自身の禁煙コラムでこう読み解いている。
《彼は水を飲まずに入るサウナの常連で、当然脱水症状も起こすわけであり、その上に1日3箱以上のヘビースモーカーで、歌手としては一般常識に欠ける人であったようだ。》
韓国公演中の脳梗塞発症直後に帰国し、都内の病院に入院した際に厳しく禁煙を指示された西城さん。それが2011年の出来事だが、自著の記述から専門医をこう分析している。
《平成13年におそらく喫煙害と思われる二次性多血症で入院したこともあり、これと脱水症状が脳梗塞の大きな誘因になったと思われる。因みにヘビースモーカーは多血症が多く、血液濃縮(Hb濃度0.2~0.7g/dl増加が存在する上に彼は肥満傾向があったため》
これに続く診断記述こそ、西城さんを63歳で急逝させた確信部分といえるだろう。
脱水症状と喫煙が脳梗塞を……
《なおさらに高Hb血症状態にあり、脱水症状と喫煙による血小板活性化が拍車をかけて、脳梗塞へと進展したものと解釈される。主治医による即禁煙指導は当然のことであろう。》
芸能界を席巻してきた西城さんのこと、各メディアは追悼特集を組むことだろう。その際に脱水症状への警鐘をはじめ、「1日3箱以上」のヒデキ秘話をどれだけ報じられるかも注視したい。タバコメーカーへの忖度が機能しかねない世界ゆえ……。
西城さんも悔いた「脳梗塞予防5カ条」
前掲の闘病記を《過信していた自らの健康被害への反省の物語である》と寸評していた岩森名誉院長。病後の西城さん自身が「医者の言うことは神の声として聞くべきであった」と悔いて、綴り遺した<脳梗塞予防5カ条>を引用付記している。
➀こまめに水分補給、②冷房は弱めに、③肝に負担をかけない、④気を補う薬や食べ物を、⑤血液をサラサラにする
西城秀樹という稀代のエンターテイナーが初の単独球場コンサートを筆頭に、数多の<一般常識に欠ける>果敢な挑戦演出ぶりで話題を呼んだことは、さまざまな追悼番組が伝えるとおりである。
ゆるぎない不動のキャリアを重ねれば、健康でいてくれることこそがいちばんのファンサービス。残念ながらプライベートでの西城さんは、自らの肉体を過信したのかもしれない。なんとも惜しまれる大物スターの去り際だ。合掌。
(文=編集部)