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パレスチナ難民の帰還は「非現実的」、社会統合に重きを スイス外相
【5月20日 AFP】スイスのイグナツィオ・カシス(Ignazio Cassis)外相は17日、70年前のイスラエル建国によって発生したパレスチナ難民の帰還は「非現実的」であるにもかかわらず国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は帰還の望みを難民に持たせ続けており、これが中東紛争が解決しない一因になっていると指摘した。カシス氏は難民の受け入れ先での社会統合に重きを置くべきだとの考えも示した。
UNRWAは、1948年のイスラエル建国を契機とした戦争で約70万人のパレスチナ人が避難したり居住地を追い出されたりした状況を受けて設置された。これらのパレスチナ人が暮らしていた土地は、現在ではイスラエル領になっている。
スイスのメディアグループNZZ傘下の複数のドイツ語紙のインタビューに応じたカシス氏は、現在レバノン、ヨルダン、シリア、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸(West Bank)とガザ地区(Gaza Strip)にいるパレスチナ難民は合計で500万人を超えていると指摘し、「全員がこの夢(パレスチナ帰還)を実現するのは非現実的だ」と述べた。
カシス氏は「しかしUNRWAはこの希望を持たせ続けている。私は考える──UNRWAは解決策の一部なのだろうか、それとも問題の一部なのだろうか、と」と続け、「その両方だ」と自身の考えを示した。
さらにカシス氏は「(UNRWAは)長年、解決策として活動してきたが、今日では問題の一部になってしまっている」 「紛争を長引かせるための弾薬を供給しているようなものだ。パレスチナ人が難民キャンプで暮らしている限り、彼らは故郷に帰りたいと思うだろう」 「UNRWAを支援することで、われわれは紛争を長引かせてしまっている」と述べた。
パレスチナ難民の帰還を求める大規模なデモが、ガザ地区のイスラエルとの境界付近で今年3月末から1か月半の間に相次いで行われた。
これらのデモのうち最大のものは、在イスラエル米大使館がテルアビブ(Tel Aviv)からエルサレム(Jerusalem)に移転した14日に行われた。その際の衝突でイスラエル軍はパレスチナ人55人を殺害し、一連の衝突による死者は100人を超えた。
米国はUNRWAの主要資金拠出国で2017年は3億6000万ドル(約400億円)を拠出したが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)政権は今年の拠出金をわずか6000万ドル(約66億円)に引き下げた。
資金不足に苦慮するUNRWAは年末までの活動に必要な約5億ドル(約550億円)の調達を急いでいる。スイスなどの国は3月、合計約1億ドル(約110億円)の拠出を表明した。
UNRWAが中東で果たしている役割に懐疑的な見方を示したカシス氏だが、UNRWAの資金不足によって「安定をもたらしている仕組み」が機能不全に陥れば「何百万人ものパレスチナ人が街頭デモを行うかもしれない」と指摘し、突然の拠出金削減はUNRWAにとって「大きなリスク」になると警戒感を示した。
カシス氏は、スイスはUNRWAへの資金拠出を継続する方針だと明らかにした一方、受け入れ国・地域でのパレスチナ難民の社会統合に重きを置くことを呼び掛け、「UNRWAの学校や病院を支援する代わりにパレスチナ難民の社会統合を促進するヨルダンの機関を支援することも可能だろう」と述べた。(c)AFP