pixiv will revise its privacy policy on May 16, 2018. The contents become clearer and correspond to the new European privacy protection law.

Details

It's just a few simple steps!

Register for a FREE pixiv account!

Enhance your pixiv experience!

Welcome to pixiv

"妄想", is tagged with「妄想」and others.

こんなんだったらいいなって妄想です

発芽米

妄想

発芽米

4/6/2018 06:33
こんなんだったらいいなって妄想です
‪"大丈夫ですか?"‬
"先程の件で、出来れば通話したいんですが…"

"先程は、本当に申し訳ありませんでした"
"それと、すみません、帰宅してからでも大丈夫ですか?"
"30分程度で帰ります"

"大丈夫です"
"落ち着いてからでいいですよ"
"また連絡ください"


‪ハンドルを握る手に力が篭る。‬
また迷惑をかけてしまった。
前よりも明確な形で。
最悪だ。

自己嫌悪が加速していく。
視界が滲んでいく。
ダメだ、私に泣く権利なんてない。

帰宅してすぐ二階に駆け上がる。
ネクタイを外し、息を整える。
覚悟は決まらないが、やらなくてはいけない。

"今帰りました"
"通話大丈夫です"

"おかえりなさい"
"それじゃ、私からかけますね"

コール音。
「あ…もしもし、楓です」
「ンンッ…あ…私です…」

「あの…先程は…本当にごめんなさい…」
「………いえ」

「あの、事情を教えてもらってもいいですか?」
「うん…あ、いや、はい…えっと、まず…」

そうして事情を私はポツリポツリと話し始める。

話している内に自分が情けなくて、悔しくて、声の震えが、抑えきれなくなっていた。

彼女は急かすこともなく、静かに聞いてくれていた。

「…うん……大体、そんな感じかな…本当に…本当に…ごめんなさい…ごめんなさい……」

しばしの沈黙。
「…許しません」
「えっ…?」
「許さないって言ったんです」

どうして、と言いそうになる自分に気付く。

許されると思っていた。
好かれていると思っていた。
許されなかった。
嫌われた、そう思った。

堪えてた涙が溢れそうになる。
どうしてこんなに醜いんだ。
自分のことばかり考えている。

そうじゃない、今は彼女に、返事をしなくちゃいけない。
「──────!」
声を奪われたように、呼気だけが漏れていく。
何を言えば。/嫌われた。
言葉にならない。/心が痛い。
思考がまとまらない。/あの時よりずっと。

「ごめんなさい……っ…ごめんなさい…」
喉の奥から絞るようにしてようやく出せたのは何度も繰り返した言葉で。
涙が、溢れ出す。

  • Views115
  • Like3

Submitted Works

 

Send Feedback