お好みの本、あります『BOOK BAR』
土曜の 22:00 より、J-WAVEでやっている「BOOK BAR」が本になった。
ナビゲーターは杏&大倉眞一郎、2人がお気に入りの一冊を紹介する番組で、10年以上も続いているのに、本になるまで知らなかった。
どんな本が紹介されるのか、さっそく目次を眺めてみると、これが見事にバラエティ豊かで面白い。いわゆる平積みされている「売れセン」を外しつつ、文芸、エッセイと肩の凝らないものから、硬めの翻訳モノ、文学、ドキュメンタリーが並んでいる。
たとえば、ポール・ディヴィス『幸運な宇宙』を大倉が紹介する。
マルチユニバースやビッグバン仮説を解説するポピュラーサイエンス本なのだが、ミソは「幸運な」にある。すなわち、宇宙物理学を深堀りすると、宇宙そのものが「人間にとって」非常に都合よくできあがっている事実に突き当たる。よくある人間原理の話になるだろうなぁと追っていくと、杏が小学生のときに見た屋久島の星空の話になり、さらにギリシャ神話に転がっていく。
日本には7000以上あると言われる「行けない島」のガイドブックなのだが、(会話だからなのか)大倉が「ヒトウ」から「秘湯」のボケをかましてくれる。「行けない島」とは、上陸が禁じられていたり、物理的に接岸できなかったり、政治的な問題を抱えている島になる。特に、海抜100メートルの尖った岩が突き出ている孀婦岩のエピソードが凄い。2003年に登ろうとした人がいて、苦労の末なんとか登頂するのだが、そこで見つけたのが、錆び付いた3本のハーケンだったとのこと。
ハイジャックされた旅客機が満員のスタジアムに突っ込む前に撃墜したパイロットを裁くという筋立てなのだが、「旅客機の164人 v.s. スタジアムの7万人」を天秤にかけられるのかという話になる。単純にマイケル・サンデルのトロッコ問題に落とし込んで終わりにするのではなく、アフリカや中近東からヨーロッパへ脱出する難民を「あえて見捨てる」ニュースや、ブレグジット(EUからの英国離脱)を選んだのは難民受け入れをやめるためといった話に結びつける。
このように、本そのものの紹介だけにとどまらず、その一冊をきっかけにして、様々な話題に膨らませる。他愛のない話もあれば、立ち止まって考えさせられるものもある。反対に、それはちょっと違うだろと言いたくなるのも一興。この、本から始まる四方山話が面白い。
既読未読問わず、惹かれる名セリフが光るのもいい。「読んでいなかったのは犯罪級」のポール・オースター『幻影の書』や、「読んだあと、いいため息をつける本」である山本周五郎『おさん』、「圧倒されすぎてこれ以上の説明はできない」っていう感じの熊谷達也『邂逅の森』など、思わず読んでしまいたくなる。これが即興で出てくるのは凄い。
ノリ的には、NHK『週刊ブックレビュー』を漫談にしたようなものか。まったりゆっくり、好きな本を広げるのに良いかも。
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