障害年金とは?制度と使い方についてわかりやすく解説!

納得する夫婦

障害年金とはどんな制度なのでしょうか?

年金といえば、65歳以上の人がもらう老齢年金をイメージしがちですが、障害年金も国が支給する公的な年金制度の1つです。

今回の記事では、障害年金の制度の基本の基本をわかりやすく解説します。

それではさっそく見ていきましょう。

 

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1 障害年金とは病気や障害のある人のための年金。

障害年金とは、病気や障害のある人に国から支給される公的年金のことです。
20歳から申請が可能な若い人でももらえる年金になります。

もらえる金額は人によって違いますが、月の平均の支給額は77,289円(平成26年の統計)です。

「障害」と聞くと、生まれつきの障害や身体障害をイメージしがちですが、そのほかにも「うつ病」や「統合失調症」、「がん」や「糖尿病」など様々な病気が原因で日常生活や仕事に困難がある人にも支給されます。

実際に申請が多い病気や障害の例をあげると以下の通りです。

障害の種類 病気や怪我の内容
精神の障害 うつ病、統合失調症、発達障害、高次脳機能障害など
知的障害 知的障害で仕事に著しい障害があるか働けない場合
てんかん 治療をしてもてんかん発作があり、仕事に制限がある場合
目の障害 視力障害、視野障害、網膜色素変性症、緑内障など
聴覚の障害 聴力障害
言語機能の障害 構音障害、失語症
手足の障害 腕や脚あるいは手足の欠損、指の欠損、関節の障害、偽関節、ジストニア
体幹、脊柱、肢体の機能の障害 脳血管障害、脊髄損傷、進行性筋ジストロフィー
呼吸器疾患による障害 肺結核、じん肺、呼吸不全、喘息
心疾患による障害 慢性心不全、弁疾患、心筋症、心筋梗塞、狭心症、難治性不整脈、心房細動、大動脈解離、先天性心疾患、CRTCRT-D、ペースメーカー、ICD装着
腎疾患による障害 慢性腎不全、ネフローゼ症候群、人工透析施行
肝臓疾患による障害 肝硬変、慢性肝炎、肝がん、肝臓移植
血液、造血器疾患による障害 難治性貧血、血小板減少性紫班病、凝固因子欠乏症、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、HIV
糖尿病 糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性壊疽
がん がんそのものによる障害、がんによる全身の衰弱、がん治療により起こる全身衰弱
高血圧 降圧剤非服用下で最大血圧140mmHg以上最小血圧90mmHg以上の高血圧
その他 人工肛門・新膀胱造設、遷延性意識障害、その他の難病

 


2 障害年金は、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類がある。

障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。

このどちらの種類になるかで、もらうための条件やもらえる金額が変わってきます。

そして、どちらの対象になるかは、初診日にどの年金制度に加入していたかによって決まります。

「初診日」とは?

あなたが障害年金を請求する病気やけがで最初に通院した日のことを、障害年金では「初診日」といいます。

 

具体的には以下の通りです。

障害基礎年金の対象となる場合 障害厚生年金の対象となる場合

・初診日にあなたが国民年金に加入していた場合(学生、自営業者、主婦、無職、未成年だった場合)

・初診日にあなたが未成年だった場合

・生まれつきの障害の場合

初診日にあなたが会社員で厚生年金に加入していた場合

障害基礎年金と障害厚生年金については詳しくは以下の記事も参照してください。

障害基礎年金について
障害厚生年金について

 


3 障害年金を申請したときにもらえる金額

障害年金を申請したときにもらえるお金についても、あなたが障害基礎年金の対象となる場合とあなたが障害厚生年金の対象となる場合で異なります。

また、障害の程度や家族の有無によってももらえる金額が異なってきます。受給者に家族がいれば、金額を加算する制度があります。

このようなことから人によって受給額が違いますが、1か月あたりの平均の受給額は表のとおりです。

障害厚生年金 1級 月額153,399
2級 月額115,651
3級 月額56,289
障害基礎年金 1級 月額80,844
2級 月額65,491

より詳しくは、以下の記事をご参照ください。

障害年金の金額はいくら?金額の決まり方や計算方法を解説します

なお、障害年金は原則として定期的に病状を確認するための更新があります(障害年金の更新についてはこちら)。
しかし、病気や障害がよくならない限り、更新することができますので、死ぬまでもらうことも可能です。

例えば、30歳のときに障害基礎年金2級になった場合に50年間障害年金をもらえば、生涯での受給額は4000万円近い額になります。

このように障害年金の受給額は一生涯を通してみるとかなり大きな金額になることもあるのです。

 


4 障害年金の受給に必要な4つの条件

障害年金の申請のためには以下の4つの条件を満たすことが必要です。

条件1:国が定めた障害認定基準に該当する障害があること
条件2:20歳から64歳までであること
条件3:初診日以前の年金の納付状況に問題がないこと
条件4:最初の通院日から1年6か月が経過していること

 

4-1 条件1:国が定めた障害認定基準に該当する障害があること

障害年金をもらうために必要な障害の程度については、国が以下のとおり基準を定めています。

障害年金認定基準

障害年金には等級があり、障害の程度が重いほうから、1級、2級、3級の順になります。

そして、あなたが障害厚生年金の対象となる場合は、1級から3級のどの等級でも障害年金がもらえますが、あなたが障害基礎年金の対象となる場合は1級または2級に該当する場合にのみ障害年金がもらえます。

障害の内容ごとのおおまかな等級の目安は以下のとおりです。

障害の部位 1級 2級 3級
精神疾患 うつ病、統合失調症などにより、身の回りのこともほとんどできないため、常に介助が必要な状態 うつ病、統合失調症などで1人では十分な食事や適切な入浴ができない状態 単純な日常生活はできるが、食事、入浴、買い物、通院、他人との意思伝達、緊急時の対応、銀行での入出金などの場面において、援助が必要になることがある状態
眼の障害 両眼の矯正視力の和が0.04以下の場合

両眼の矯正視力の和が0.08以下の場合

両眼の視野がそれぞれ5度以内の場合

両眼の視力が両眼とも0.1以下の場合
聴覚の障害 両耳の聴力レベルが100デシベル以上の場合 両耳の聴力レベルが90デシベル以上の場合

両耳の聴力レベルが70デシベル以上の場合

両耳の聴力レベルが50デシベル以上でかつ、最良語音明瞭度が50パーセント以下の場合

上肢の障害

両腕が全く使えない状態の場合

両手の指がすべてない場合

片腕が全く使えない状態の場合

片手の指がすべてない場合

片腕の3大関節(肩、肘、手首)のうち2つ以上の関節について動く範囲(可動域)が2分の1以下に制限されている場合
下肢の障害

両脚が全く使えない状態の場合

両脚の足首より下がない場合

片脚が全く使えない状態の場合

片脚の足首より下がない場合

片脚の3大関節(股関節、膝、足首)のうち2つ以上の

関節について動く範囲(可動域)が2分の1以下に制限されている場合

心臓疾患 心臓疾患により身の回りのこともできず常に介助が必要で、ベッドの周りで過ごしている場合

CRT、CRT-Dを装着している場合

心臓疾患により軽労働もできない状態の場合

心臓ペースメーカー、ICD、人工弁を装着している場合

心臓疾患により軽い家事や事務などはできるが肉体労働が制限される場合

腎疾患 腎疾患により身の回りのこともできず常に介助が必要で、ベッドの周りで過ごしている場合

人工透析を施行している場合

腎臓疾患により軽労働もできない状態の場合

腎疾患により軽い家事や事務などはできるが肉体労働が制限される場合

なお、障害年金の等級は、障害者手帳の等級とは全く制度が異なりますので注意してください。障害年金の等級は障害者手帳の等級とは全く関係なく、別に決定されます。

 

4-2 条件2:原則として20歳から64歳までであること

障害年金をもらうための2つ目の条件として、障害年金の申請時に年齢が20歳から64歳までであることが原則として必要です。

ただし、あなたが以下のいずれかにあたる場合は、65歳以上であっても、例外的に障害年金を受給することができます。

ケース1:初診日が65歳未満で、初診日から1年半以内に障害認定基準に該当する障害の状態になった場合
ケース2:初診日が65歳以上でも、その初診日のときに厚生年金に加入していた場合
ケース3:初診日が65歳以上でも、その初診日のときに国民年金の任意加入者だった場合

 

4-3 条件3:初診日以前の年金の納付状況に問題がないこと

次に、3つ目の条件として、あなたの初診日の時点の年金納付状況が基準以上であることが原則として必要です。

このように年金の納付状況が問題とされるのは、年金を誠実に納付してきた人にだけ障害年金を認めるという考え方に基づくものであり、「納付要件」と呼ばれます。

納付要件の原則的な判断基準は以下の通りです。
下記の2つのどちらかにあたれば、「納付要件」を満たします。

(1)初診日において65歳未満で、かつ初診日のある月の前々月からさかのぼって1年間の間に年金の未納がない場合

(2)20歳から初診日のある前々月までの期間のうち、年金の未納期間が3分の1未満の場合

もし、あなたが初診日の時点で配偶者の扶養に入っていた場合は、あなたの配偶者が上記の2つのどちらかを満たせば問題ありません。

また、初診日より前に年金の納付について免除手続きを行っていた場合は、納付要件の判断において「年金の未納」とは扱われず、年金を納付していたのと同じ扱いを受けることができます。

ただし、納付要件は、初診日の前日時点の状況で判断されるため、初診日以降に免除手続きをしたり追納した期間については、納付要件の判断では未納扱いとなります。

あなたの年金の納付状況がわからない場合は年金事務所への相談や弁護士・社労士への相談で調べてもらうことが可能です。

なお、初診日に未成年だった場合、例外として、年金の納付要件は問われないというルールがあります。

この点については、以下の記事で詳しくご説明していますので合わせてご参照ください。

20歳前傷病で障害年金を申請するときの手順とポイント

 

4-4 条件4:最初の通院日から1年6か月が経過していること

最後に、4つ目の条件として、初診日から1年6か月が経過していることが原則として必要です。

障害年金では、病気や怪我があればすぐに申請できるわけではなく、1年6か月経過してから申請できるというルールになっています。これは、ある程度の期間治療しても治らないような障害のみを障害年金の対象とするという考え方によるものです。

ただし、例外的に1年6か月がたたなくても申請が認められるケースもあります。この点については以下の記事をご参照ください。

1年6か月が経過しなくても申請できる例外的なケース

 


5 障害年金申請の進め方

障害年金の申請については、自分で申請する方法と、弁護士や社労士に申請代行を依頼する方法があります。

自分で申請する場合、まず、初診日を調べたうえで、それを基準に4-3でご説明した年金の納付要件を満たすかどうかを年金事務所に調べてもらいます。

そのうえで、診断書や「就労状況等証明書」(初診日から現在までの経緯を記載した書類)などの必要書類をそろえて提出することになります。

提出先は、障害基礎年金の請求の場合は、市町村役場の年金担当窓口または年金事務所、障害厚生年金の場合は年金事務所になります。

具体的な手順については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

障害年金申請手続きの7つのステップ

ただし、障害年金は制度が複雑で、必要書類も多いです。

自分で申請する方法は時間がかかったり、場合によっては支給が認められない結果になる危険がありますので、費用がかかっても弁護士や社労士に申請代行を依頼したほうが結果的に得ということが多いです。

障害年金の申請代行や申請を依頼する専門家の選び方については以下の記事を参照してください。

障害年金申請代行や手続き代行は本当に費用に見合うメリットがあるのか?

 


6 障害年金の請求のための相談機関

ここまで読んでいただいて、まずは、自分が対象になるか聴いてみたいと思った方もおられるのではないでしょうか?

とりあえず聴いてみたいというときは、国の機関である年金事務所や障害年金を専門にする弁護士、社労士事務所で相談が可能です。

ただし、年金事務所は障害年金の相談だけでなく審査も担当していることから年金事務所に相談する際はいくつかの注意点があります。

また、弁護士、社労士事務所に相談する場合は、弁護士や社労士の選び方に注意が必要です。

相談窓口の選び方については以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

ここがおすすめ!障害年金の無料相談窓口2つと相談先の選び方

 


7 まとめ

この記事では障害年金の制度の最も基本的な部分をご説明しました。

なお、病気や障害ごとの申請のポイントについては、以下の記事で解説していますので、ぜひあわせて参照してください。

統合失調症の障害年金の申請のポイント

自閉症の障害年金の申請のポイント

てんかんの障害年金の申請のポイント

知的障害の障害年金の申請のポイント

高次脳機能障害の障害年金の申請のポイント

認知症の障害年金の申請のポイント

脳梗塞の障害年金の申請のポイント

糖尿病の障害年金の申請のポイント

緑内障の障害年金の申請のポイント

ぜんそくの障害年金の申請のポイント

ペースメーカーの障害年金の申請のポイント

人工関節・人工骨頭の障害年金の申請のポイント

人工透析の場合の障害年金の申請のポイント

がんの障害年金の申請のポイント