「自分探しの旅」はしばしば嘲笑されることがある。だがそれが長期間であるのなら見つかるかもしれない。
新たなる研究によると。海外で過ごす時間が長いほど、自己概念が明確になるという。
米ライス大学のハジョ・アダム氏らによれば、海外暮らしが「自己概念の明確さ(self-concept clarity)」に与える影響を実験的に調査した初の研究である。
自己概念の明確さとはすなわち、自分が何者であるのかはっきりと自信を持って定義できる度合いのことだ。
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海外で暮らしたことのある人に意識調査
研究では、計1874人を募り、一連の調査に参加してもらった。最初の参加者はオンラインで募集された296人で、調査の時点で半数が海外暮らしだった。
彼ら全員に、「自分が誰で何であるのかはっきりとした意識がある」や「自分のパーソナリティの異なる側面の間で葛藤を感じることは滅多にない」といった、12項目で構成される自己概念の明確さアンケートに回答してもらった。
その結果、海外で暮らしていた参加者の方が、はっきりとした自己概念を有していた。
海外で暮らしたことのある人は自己概念が明確
しかし、そもそも自己概念がはっきりしているからこそ、海外に飛び出したとも考えられる。そこで今度は、海外暮らしの人と、国内暮らしであるが海外に行く予定がある人(大半が9ヶ月以内に予定)がほぼ半々の261名を募集した。
そして自己概念の明確さアンケートにくわえ、「自己識別の投影(self-discerning reflection)」評価にも回答してもらった。
後者は例えば、「自分と他者との関係は、自分自身の価値によって結ばれたものであるか、それとも周囲の人間の価値によって結ばれたものであるか」や「自分のパーソナリティは自分が何者であるかによって決められるものか、それとも育った文化によって決められるものであるか」といった質問で構成されていた。
すでに海外で暮らした経験があった参加者は、将来的に計画があってもその時点では国内暮らしの参加者よりも自己概念が明確であった。
そして、このことは自己識別の投影スコアの高さによっても統計的に説明された。つまり、海外暮らしが長いほどに自己識別の投影が高まり、そのために自己概念がより明確になることを示唆している。
行った国の数より過ごした時間の長さが重要
同チームによる別の研究には、様々な国出身の学生が参加したものなどがあったが、これらの結果を総合して、住んだことのある国の数よりは、海外で過ごした時間の長さの方が、自己概念の明確さの確立につながると結論された。
自己概念の明確さには実質的なメリットもあり、例えば、海外暮らしが長い留学生は将来のキャリアについてはっきりとした意識を抱いていることが多かった。
さらに別の研究から、海外暮らしをしていると、自分について「大胆」といった言葉で形容するようになるといった影響も明らかになっている。
しかし今回の研究は、海外で暮らすと慣れ親しんだ文化環境から離れることになるために、自分にとって本当に重要なこととそうでないことに向き合うようになると示唆している。
アダム氏らはドイツの哲学者ヘルマン・カイザーリングが記した1919年の著書『Travel Diaries of a Philosopher(ある哲学者の旅日記)』から一文を引用し、結論としている。
自己への最短の道は世界中へとつながっている
この論文は『Organizational Behavior and Human Decision Processes』に掲載された。
References:bps/ written by hiroching / edited by parumo
私もトータルすると7年間くらいは海外にいたが、日本以外の価値観と多様性を目の当たりにして、許せなかった自分を受け入れられるようになった気がしなくもない。みんな違ってそれでいいんだってことは実感できたかな。
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コメント
1. 匿名処理班
アイデンティティは愛国心や郷土愛、民族性と深く繋がっていると言う事かな。
他国の文化や民族性と接する事で、自己を認識し他者との違いの領域をより深く理解するのかも。
宇宙時代にはどうなるんだろうか。ムーンチャイルドとかマーシアンとかで別れるのかな。
2. 匿名処理班
よし、渡航の準備だ
てか、海外でも場所によっては自分に合う合わないがあるから、精神的に打ちひしがれて、泣く泣く帰国するケースもあると思う
3. 匿名処理班
ふわふわしたまま大人になって、ふわふわしたまま生きてる人も多く見てきたから、
わからなくはないかな
4.
5. 匿名処理班
自分探しの旅に出て♪
二度と戻って来なかった♪
とか歌でも唄われてますし、やりたい人がやればいいんじゃないですかねえ
海外(四国、北海道、九州含む)とか40年生きてて行ったことないや
6. 匿名処理班
自分は自分の中にあるのは本当だけれども、外から色んな自分を見つける手段として海外にじっくり身を置くのはいいのかもね。
外国行ってみたいなぁ。
7. 匿名処理班
バックパッカーで世界旅してる姉に2か月ほど合流したら、
むしろ自信喪失した。
8. 匿名処理班
知らない土地で違う文化の中で暮らすんだし確かに自信はつきそうだよね
人生観変わるなんて(笑)みたいな扱いされることあるけど実際行動して外に出れる人ってすごいなって年取るごとに思うよ
9. 匿名処理班
これ実感します。思い切ってスペインに留学した経験がありますが、一言では書ききれないほど記事の内容や感動などなど味わった。パワーがみなぎっていた感覚を今でも覚えてる。でも帰ってきて長い年月経ってしまってその魔法は切れちゃった。
定期的に海外いったり、出来なくても今は日本にたくさん観光客やコミュニティ、お店の店員としてでも外国の人と関われる機会がいっぱいあるし、積極的に関わると似た効果があるかも?どうだろう。
10. 匿名処理班
海外の水飲むのすら嫌だから無理だわ。
どこでもドアを完成させたら自分の世界どころか
世界丸ごと変えられるんだな。
やっぱり発明に専念します。
11. 匿名処理班
逆に生まれた土地から一歩も離れて暮らしたことのない人間
には凡庸さはつきものだ。
12. 匿名処理班
さあ、みんな!インドへ行こうよ!
13. 匿名処理班
実感はするね。海外に限らず、青年期までに育った環境と異なるコミュニティに暮らすことが大切なのではないかと思う。
ただ、このサンプルの母集団がどんな層なのかは気になるな。
14. 匿名処理班
※2
泣いて帰国でも、少なくとも自分を見つめる機会にはなりますね。
自分を見つめることで、自分自身の限界がどれくらいかとか、自分はどうありたいとか、そういうことを確立できれば、ツラくとも価値はあると思います。
私は 10 カ月と 3 カ月くらいかな、計一年くらいを海外で過ごして、統計的に端っこの方の人(普通に言えば変人)になってしまいましたが、それが悪いことだとは思ってないことから、記事の通り、自己や自信が確立してるのだろうなと思います。
15. 匿名処理班
自己概念が確立するってのも筋トレみたいなもんで、歪んでる人が歪みを取らぬまま鍛えると歪みが拡大される形で強化されて、よくある海外かぶれの意識高い系の日本嫌いみたいのになるんでないの。
16. 匿名処理班
文化の違いが大きい国の方がいいのかな?
インドとか