農業アイドルとして愛媛県松山市を拠点に活動する「愛の葉Girls(えのはがーるず)」は、2012年12月のデビュー以来、アイドル活動と農作業を通して日本の美味しい「食」、日本の安全な「食」を推進中だ。自分たちの農園をホームグランドに、新規就農者募集のチラシ配りなど地味な活動もふくめ「農家後継者不足」の解消に努めているという。運営会社であるhプロジェクトの佐々木貴浩社長と、メンバーの大本萌景(おおもと・ほのか)さんに話を聞いた。
女の子たちが農業で汗流す姿を通して、愛媛の農産物を知ってほしい
「愛媛は柑橘類が有名ですが、そのイメージばかりが先行してしまって、ほかの野菜やお米も美味しくて農家さんのこだわりもあるのですが、十分消費者に知られていない現状があります。それをなんとかしようとhプロジェクトを立ち上げたのですが、たまたま私がステージなどの演出もしていたものですから、若い女の子たちが農業で汗している姿をうったえることができれば効果的なPRになるんじゃないかと思ったんです」
結成の経緯を話す佐々木社長だが、2012年当時はご当地アイドルブームもたけなわで、タイミングも良かった。オーディションには60人が集まったという。
「若い女の子たちが歌って踊って、そして耕して。農作業で実体験したものをなんとかステージで表現できないかと。座学だけで勉強したものではなく、実際に畑仕事をしたから、こそ伝えられるものがあると思うんです。生の声で農産物の素晴らしさを伝えたいと思っています」
じつは最初、農作業が嫌だった いまでは「農業やってよかった」
生産分野では畑に入り、土づくりから収穫までを手伝う。2次加工分野では素材の選定やネーミング、パッケージデザインの考案などをする。三次産業の販売分野では、自社製品以外にも特産品の販売応援を行う。「ガチで農業を応援する」姿勢が、結成からの地道な活動で地元の支持を集めてきた。
そんな佐々木社長の、農業振興への熱い思いで立ち上がった愛の葉Girlsだが、幼少期からアイドルが大好きだったというメンバーの大本さんは、最初は農業に興味はなかったし何も知らなかったと本音を明かす。
「とにかくアイドルになりたいから応募しました。だから最初、農作業はいやいやで。腰も痛くなるし、ドロまみれになるし、メールもできない、おしゃれもできない、虫はいる。でも……実際に汗をかいてやっているうちに、楽しいなって気がついたんです。自分がつくった野菜を家族とか友達とかに届けたときの、みんなの笑顔を見て、あ、農業やってよかったって実感したんです」
ふだんは16名ほど、中高生中心に活動しているが、いまはみんなが農業を大好きになったという。
大本の言葉に、佐々木社長はうなずく。
単純にアイドルだけやりたい子はやめていく
「最初はボランティアで公民館や物産展でPRするのに小さなマイクを持って駆けつけたりするところから始まりまして。メンバーたちも、歌や踊りを好きでやっている以上に、農業活性化の使命を帯びてやっています。単純にアイドルだけがしたい子は、やめていきます」
キャラクターとしての“農業アイドル”ではなく、本当に農作業をやっているところに愛の葉Girlsの意義がある。メンバーたちはみんな一生懸命、農作業をしているそうだ。大本は力をこめて話す。
「たとえば、畑の敷地内なら未成年でもコンバインを運転できるので、中高生メンバーが乗って楽しそうに収穫しています。私も高1ですが、学業より農業のほうが楽しくて、お勉強さぼりたいなという気持ちもあるんですけど、両立しなくちゃいけないので、お勉強もしっかりやっています。でも農作業で土にふれただけで、心がなごんでリラックスできるんですよね。明日も勉強しなきゃなー、がんばらなきゃなーって思えるんです。すべてに癒やされます」
愛の葉Girlsは、純粋にアイドルオンリーのライブに出演するのは年に3回程度で、多くは地元の地産地消フェア、産業祭り、モールでの産品のPRなどに盛り上げの一環として出演している。地元のスーパーも愛の葉ガールズがPRすると“愛の葉効果”として101%から130%ほど売上が増えたというデータがあるそうだ。もちろんJAのイベントにも出るが、オファーがないときは自社の農園、ビニールハウスの中でライブをするという。
4月には5周年記念パーティーも控えている。最近はご当地アイドルブームも一段落した感があるが、どこの地域でも本当に地元に貢献しているグループが輝きを放ち続けているようだ。
(取材・文・写真:志和浩司)
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