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ドキュメント「教員免許失効」~更新を忘れた教師の末路

知られざる「失効」の世界

免許失効――。誰もが一度は「もしかして、運転免許の更新期限、知らない間にすぎちゃったんじゃ…」と冷や汗をかいたことがあるのでは。一度失効すると、原則的にはもう一度試験を受けて、再発行をしてもらうしかない。

運転免許の失効もつらいが、これから紹介する免許も失効すると大変だ。あまり知られていない話だが、「教員免許」の更新を忘れ、失効してしまうケースが相次いでいるのだという――。

教員免許は、10年前までは更新の必要がないものだったのだが、09年4月に「教員免許更新制」が導入された結果、有効期限が定められ、10年ごとに講習を受けて免許を更新しなければならなくなった。

しかし、この制度が導入されてから、更新を忘れて免許を失効する教員が後を絶たないのだ。去る4月24日には、滋賀県の公立小学校の40代女性教諭が、手続きを忘れ免許失効となり、失職したことが発覚した。

「間抜けな話」と片付けるのは簡単である。だが、その責任は本人だけにあるのか。実際に免許を失効した職員に話を聞いてみると、意外な落とし穴が見えてきた。

 

気付いた時には、すでに手遅れ

私立高校教員のAさん(女性、特定を避けるため年齢は伏せる)が、教員免許の更新手続きをしていないことに気付いたのは、今年3月に入ってからだった。

教員免許更新制が導入されたのは2009年4月。それ以前に免許を取得した教員は、生まれた年度によって更新する年が定められている。Aさんの場合、2017年度中に更新しなければならなかったが、完全に失念していた。

Aさんは主任クラスのベテラン教員だ。教員免許更新のためには、教員は30時間に及ぶ講習を受けなければならないのだが、主任クラスであれば、この講習が免除される……ということはなんとなく知っていた。だから、免許の更新について「自分は指導的立場の職位にあるので、講習を受けなくてもよい」という認識で、更新手続きは必要ないと思っていた。

しかし、確かに主任クラスは講習を受けなくてもよいのだが、それには「講習の免除」を事前に申請する必要があり、そのうえで更新手続きをしなければならなかったことが分かったのだ。

気付いた時点は、更新期限までぎりぎりのタイミング。それでも、「講習免除の申請をして、更新手続きをするだけなのだから、まだ間に合うだろう」と軽く考えていた。同僚も「何とかなるよ」と声をかけてくれた。

ところが、更新制についてネットなどで調べると、管理職や指導を行う立場の教員でも、講習免除申請などの手続きを、やはり1月31日までに済ませておかねばならなかったのだ。

これはもしかしたら大変なことになっているかもしれない…青ざめながら、Aさんは教育委員会に電話で問い合わせた。すると担当者はあっさりと答えた。

「失効ですね。3月末をもってあなたの教員免許は失効します」

教員免許失効――Aさんは初めて事の重大さに気づいた。