ふっくらごはんに、パリパリ海苔。今や日本人のソウルフードに成長した「コンビニおにぎり」。だが、今年はちょっと違う。海苔なし、混ぜごはん、雑穀米――品ぞろえの幅がぐんと広がり、強烈な個性を放つ一品が登場している。各社の新作おにぎりから、トレンドを探ってみた。
コンビニの売り場に並ぶおにぎりは、店舗によって異なるが、だいたい30種類前後。
梅・シャケ・ツナマヨあたりが定番だが、「おにぎりの販売個数は売り場のフードメニューの中で最も多く、年間22億個にものぼります」(セブン-イレブン担当者)
と話すように、販売歴約40年のおにぎりは誰もが納得するキング・オブ・コンビニ。王者の人気が店全体の売り上げを左右するといっていいだろう。だから毎年、どのコンビニも全力でおにぎりをブラッシュアップするのだ。
今年は、その集客力に磨きをかけた新たな販売戦略が動き出している。
ファミリーマート(以下ファミマ)では、4月に登場したユニークなおにぎりが話題だ。
その名も「男飯」シリーズ。ごはんの上に豚カルビが載っていたり、丸く握ったガーリックライスの上に厚切ベーコンとチーズがかかっていたりと、名のとおり、一つで満腹間違いなしのボリューミーな一品。
売り場で大いに目を引くのだが、ふと疑問に思った。今のコンビニは、健康志向の女性やシニア客が増えている。がっつり系のおにぎりに、勝算はあるのだろうか?
「手巻おむすびも、直巻おむすびも年々品質がアップし、多くのお客様にご好評いただいています。でも若いお客様の中には、もっと食べ応えのある商品を望まれる方もいらっしゃる。男飯シリーズは『人気のお弁当をワンハンドで食べているような仕立て』の、おむすびの新しいカタチなんです」(ファミマ担当者)
なるほど、「ライス」+「豚カルビ」なんて、もはや定食メニューだ。手っ取り早く食事をすませたい人にはちょうどいい。
「どれも、ターゲットどおりの20~30代男性によく購入されています。朝よりも昼や夜の時間帯に売れているので、忙しくてもしっかり食べたいニーズにお応えできているのかなと思います」(ファミマ担当者)
「コンビニおにぎりのヘビーユーザーは中高年」という話を業界内でよく聞くが、男飯シリーズは、移り気な若者男性客の胃袋もしっかりとつかんだ格好だ。ヘビーなおにぎりファンのすそ野を広げるのに、一役買っていることは間違いない。