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【社会】

9条俳句不掲載、二審も違法 裁判長「思想理由に不公正な扱い」

 憲法九条について詠んだ俳句を、さいたま市の公民館が月報への掲載を拒否したのは表現の自由の侵害だなどとして、作者の女性(77)が市に俳句の掲載と慰謝料二百万円を求めた訴訟の控訴審判決が十八日、東京高裁であった。白石史子裁判長は、一審さいたま地裁判決に続き、掲載拒否は違法と認め市に賠償を命じた。賠償額は五万円から五千円に減額した。 

 白石裁判長は、公民館の職員には、公民館が公的な場としての目的や役割を果たせるように取り組む義務があると指摘。掲載拒否は「思想、信条を理由に不公正な取り扱いをし、女性の利益を侵害した」として、違法性を認定した。

 公民館は俳句に集団的自衛権の行使に反対する思想、信条が込められていることを理由に、政治的中立性の観点から拒否したとした上で「当時、集団的自衛権の行使について世論が分かれていた事情があっても、公民館が掲載しなかったことに正当な理由があったといえない」とした。

 一方、表現の自由の侵害については「同人誌やネットなどの媒体での表現そのものが制限されたわけではない」として退けた。月報への掲載についても一審に続き棄却した。

 弁護団の久保田和志弁護士は、自治体が政治的中立を理由に場所の提供を拒むなどの事例があることから、抑止につながる判決と評価した。

 判決などによると、三橋公民館は二〇一〇年十一月から、地元の句会が会員の俳句の中から選んだ一句を月報に掲載。女性が一四年六月に詠んだ「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」が選ばれたが、公民館は「世論を二分するようなテーマ」を理由に掲載を拒否した。

 清水勇人市長は「判決を精査し、対応を検討します」とコメントを出した。

◇9条俳句訴訟判決ポイント

 公民館は女性の思想、信条を理由に不公正な取り扱いをした。

 公民館が月報に掲載しなかったことに正当な理由があったとはいえない。

 月報での表現を制限されたにすぎず、表現の自由の侵害は認められない。

 

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