将来の大学再編の行方を占う試金石となるに違いない。国立の名古屋大学と岐阜大学が運営法人の統合に向けて動きだした。地域に根差した学問の府を守り、強める手だてをぜひ打ち出してほしい。
国立大が国の直営から独立法人の運営に切り替えられたのは二〇〇四年だ。大学の個性を伸ばして競争力を高める狙いがあった。
だが、公立大や私立大とは異なり、国立大では法律上、一つの法人は一つの大学しか運営できない。国は経営合理化策として、一つの法人が二つ以上の国立大を傘下に収めて運営できるよう仕組みを見直す構えだ。
名古屋大と岐阜大は先駆けとなりそうだ。新法人として設立する東海国立大学機構(仮称)が両大学を運営する。大学名や学部、学科を残して管理部門を集約し、教養課程を共通化する構想だ。
経営の効率化と規模の拡大で生まれる人員や財源を、それぞれの特色のある教育研究分野に重点配分して機能強化を図るという。
法人統合がもたらす利益は、大学の競争力の向上や地域の活性化にしっかりと振り向けられなくてはならない。国に経費節減の口実を与えては元も子もなくなる。
どういう青写真を描くのか今後の協議を注視したい。生き残りを模索する国立大の手本となるよう期待する。地元の自治体や産業界、学内の教職員、学生の声に耳を傾けて理解と協力を仰ぐ。民主的手続きを尊重してもらいたい。
避けられないのは十八歳人口の著しい減少だ。近年は百二十万人前後で落ち着いていたが、今年から再び減り始め、四〇年の推計では八十八万人にまで縮小する。
グローバル化に伴い、アジアをはじめ外国の大学に進学する高校生が目立ってきた。海外の大学の卒業生を積極的に採用する企業も多い。国公私立を問わず、大学力に磨きを掛けなくてはならない。
名古屋大と岐阜大の試みは、大学の自前主義からの脱却を意味する。もはや個々の大学が学生を奪い合うという旧来の発想では、間違いなく立ち行かなくなる。国公私立の枠を超えた大学再編スキームも検討に値する。
大学は知の拠点であり、地域の重要な一員だ。市場原理にすべてを委ね、経営難に陥ったら直ちに退場を迫るべき存在か。教育を受ける権利に応え、地域に貢献する。その役割をどう果たすか。再編論議はそこから出発したい。
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