加計学園による獣医学部新設をめぐり5月10日、衆参両院の予算委員会で柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)の参考人招致が行われた。
おそらく多くの国民が、柳瀬氏の答弁は大部分が虚言だろうと捉えたのではないかと思う。焦点の一つは、4月10日に柳瀬氏が発言した「自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方とお会いしたことはない」という内容に関する真偽だ。今回の参考人招致では、「15年4月2日に加計学園の関係者とは会ったが、愛媛県や今治市の職員が同席していたかどうかは記憶にない」と繰り返した。
これに対し、愛媛県の中村時広知事が反論に出た。15年4月2日の首相官邸での面会で、職員が交換した柳瀬氏の名刺を公開し「愛媛県や今治市の職員はメインテーブルに着き、積極的にやり取りを行った」と言ったのである。
その通りならば、柳瀬氏の発言は虚言であったことになる。しかも、愛媛県や今治市の職員は、柳瀬氏に3度も面会したという。国民の多くは、中村知事の発言からますます不信感を募らせたと思う。
これまでも政府に獣医学部の新設を申請したケースはいくつもある。その中で、政府関係者が特定の学園の関係者に何回も会うということは、えこひいきもいいところである。
しかも柳瀬氏は、加計学園の関係者と何度も面会するということについて「安倍首相の指示もなければ報告もしていない」と言うが、こんなえこひいきを首相秘書官が勝手にやるはずがない。
では、なぜこんなことを言ったのか。それは安倍首相が、「加計学園については何も知らない。2017年1月20日に決着するまでまったく知らなかった」と発言したことに起因する。
もし柳瀬氏が、ここで安倍首相の指示や自身の報告を認めれば、安倍首相は首相の座が危うくなる。安倍首相が国民から批判されないよう、柳瀬氏は自分の人格を犠牲にし、国民からの批判を浴びても安倍首相を守ったのだろう。
その点を考えると、僕はむしろ柳瀬氏に同情する。
民主主義を掲げる国にとってあってはならないこと
3月2日に朝日新聞が、一度は沈静化しかけた森友学園問題について「財務省が国有地売却についての決裁文書を改ざんしていた」と報じたことをきっかけに、この問題は新たな局面を迎えた。つまり、政府は文書を改ざんしただけでなく、それを国民に隠蔽していたことになる。これは民主主義を掲げる国にとっては、あってはならないことだ。
一連の問題が露呈し、僕は当然、安倍首相は責任者として麻生太郎財務相を辞任させるものだと思っていた。実は何人かの自民党幹部たちに聞くと、皆が口を揃えて「辞任になるだろう」と言っていた。
ところが麻生氏は辞任せず、それどころか「文書改ざんは一部の人間が勝手にやったことだ。これはよくある話である。だから、組織としての財務省は全く責任がない」という理解し難い発言をした。とんでもない発言だ。
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