散るろぐ

こころふるえる感情メディア

いつまでゴミ捨てをするんだろう

僕の働いている会社は、典型的な斜陽産業で、新入社員なんてまず入ってこない。だから僕は、ずっとしたっぱのままなんだよ。そうすると、ゴミ捨てなんかの雑用は、僕がずっとしなきゃならない。

今までは、そんなに気にならなかったのに、このごろ「いつまで僕はゴミ捨てするんだろう」なんて、空をみて思った。

さっき僕がゴミをまとめていたら、店長が「その袋もうすこし入るからコレも一緒にいれて」と言った。

少し余裕があるのは事実だけど、僕はそれを無視してガムテープで口を閉じた。あんまり詰めこむと、焼却場のコンベアーに投げたとき、袋がやぶれて困るんだよ。だからもう、この袋にはこれ以上いれられない。

僕は、そう強く思ったけれど、その理由を説明する気分にならなくて、代わりにこう言った。

「だまれ老いぼれ。あんたが捨てにいくなら、いくら詰めこんでもいいぞ」



カタカタなる台車へゴミ袋をのせて、閑散として寂れた通路を歩く。あと何度、この道を歩くのかな。あと何度、この道を歩いたら、ゴミ捨ては終わるんだろう。僕は一生、ゴミ捨て係なのかな。


焼却場までの道は、はがれたアスファルトで、マンホールの蓋が少し浮いている。僕は台車のレバーへ両手をかけて、惰性で押して歩く。

そして、焼却場まで来ると、袋を抱えてゴロンと転がす。重さを感知したセンサーが、おもむろにコンベアが動かして、ゴミ袋はどこか知らないところへ旅立っていった。

身軽になった台車を押す帰り道、そんなことを思っていたら、やさぐれた気分になって、台車をぽーんと手放してしまった。僕の手から逃れたカラの台車は、ちょっとだけまっすぐに進むと、左右にフラフラと迷走して、やがて弧を描いて、閉店した店のシャッターにぶつかった。

僕は、台車の向きを、蹴ってなおして、また押して帰った。カラカラ鳴る台車のレバーに、老婆のようにもたれて、深いため息をつきながら。