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- 麻生太郎財務相(共同)
度重なるやじや失言で、批判が拡大している麻生太郎財務相が16日、都内の講演で、盟友の安倍晋三首相に触れた際に「おなかの悪いやつ」と述べ、潰瘍性大腸炎が持病だった首相を、やゆするような発言をした。北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の政府専用機をおちょくるような発言もあり、国際社会を巻き込む形で「軽率」との批判が広がる恐れもある。麻生氏の言葉は、歯に衣(きぬ)着せぬ「麻生節」では済まされない領域に入ってきた。
麻生氏はこの日、自民党議員のパーティーであいさつした際、物議を醸す発言を繰り返した。1つは、盟友である首相に対して。12年の自民党総裁選で、自らが首相を支持した経緯に触れた際「暗いやつを選ぶか、あまり頭の良くないやつを選ぶか。だったら、おなかの悪いやつを選ぶのがいちばん良い」と述べた。
暗いやつ→石破茂元幹事長、あまり頭の良くないやつ→石原伸晃氏が念頭にあったとみられ、「おなかの悪いやつ」は、潰瘍性大腸炎を患った首相を指すのは明らかだ。首相はこの病で、第1次政権退陣に追い込まれた。固い絆の盟友とはいえ、公の場で他人の持病をやゆするような発言をするのは、「無神経」との声が、党内でも出ている。
かつて、田中真紀子元外相が、98年自民党総裁選に出馬した小渕恵三、梶山静六、小泉純一郎各氏を「凡人、軍人、変人」と表現。その絶妙さで年末の流行語大賞を獲得したが、今回の麻生氏のたとえは、後味の悪さが残る表現といえる。
放言はさらに、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長にも波及。「あの見てくれの悪い(北朝鮮の)飛行機が、無事シンガポールまで飛んでいってくれることを期待するが、途中で落ちたら、話にならん」と、正恩氏の政府専用機をおちょくるような発言をした。
6月12日にシンガポールで予定される米朝首脳会談に関する発言。北朝鮮の核・ミサイル問題について「米朝会談が行われるところまできた」と進展を評価する中の言葉だが、他国の政府専用機の信用に関わる内容だ。日朝関係が冷え込む中、今後、国際社会を巻き込む形で「軽率」との批判が広がる可能性がある。
北朝鮮の専用機は、米大統領専用機をもじって「エア・フォース・ウン」と呼ばれる。60年代に製造された旧ソ連製で老朽化が不安視される半面、安全性には問題ないとする声もある。
麻生氏は、セクハラ問題に対する一連の発言でも物議を醸した。歯に衣着せぬ「麻生節」は麻生氏の持ち味だが、今では話すたびに波紋を広げる、悪循環に陥ってきた。