不正・事件・犯罪

スルガ銀行「謝罪会見」で明かされなかった重大なこと

結局、不正はあったのかなかったのか

倒産ありきのビジネスモデル

シェアハウス「かぼちゃの馬車」問題に揺れるスルガ銀行が、15日、18年3月期の決算発表後、記者会見を開いて調査結果を公表するとともに、米山明広社長が「顧客や株主など多くのステークホルダーに迷惑をかけた」と謝罪した。

問題発覚後、半年以上が経過。これまで取材窓口の経営企画部が、「不正に関与していない」という公式コメントを繰り返すだけだったが、経営トップが「経過のご報告」という文書で、二重契約の存在や資料の偽造、改ざんを明かし、その事実を「相当数の社員が認識していた」と認めただけに、「懺悔会見」といっていい。

記者会見で不正を認めたスルガ銀行の米山明広社長

だが、詳細な事実関係については、設置する第三者委員会(委員長・中村直人弁護士)の調査に委ねたいとして、「銀行の不正」に言及することはなかった。

シェアハウスのオーナー側被害弁護団が、スルガ銀行と、「かぼちゃの馬車」運営会社のスマートデイズなどを刑事告発する方針を固めているだけに、現段階で、謝罪はしても不正を認めないのは仕方がない側面があり、マスメディアも「融資の歪み」という指摘にとどまっている。

ただ、忘れてはならないのは、わずか5年で積み上がった顧客数1258名、融資額2035億8700万円というシェアハウス事業が、スルガ銀行の融資なくしては存在しなかったことだ。

そのうちスマートデイズの関連融資は、約6割の約1200億円に達するが、残りは同じ事業形態の不動産業者約10社である。私は、本コラムの前号で、スマートデイズの「黒幕」の存在を明かした。(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55610

 

事業急拡大の果ての倒産を折り込んだビジネスモデルは、「黒幕」以外にも踏襲され、約10社のなかには、倒産して住所移転、経営陣を入れ替え、連絡がまったく取れないようにした悪質な業者もある。

かぼちゃの馬車案件が集中した横浜東口支店の営業担当者らは、スマートデイズが「頭金ゼロ」「自己資金ゼロ」と宣伝、オーナーを募っていた事実を承知している。スルガ銀行の融資基準は「販売価格の90%まで」なので、明らかに矛盾しているが、危機管理委員会の「調査報告書」には、営業担当者の次のような「本音」が記載されている。

<スルガ銀行のほぼ全社員は、客の提出した売買契約書、自己資金確認書があるので、業者が何かやっているとしても、「それはそれ、これはこれ」と思ってしまっている所があると想う。ある種の割り切りである>

黙認だが、それを「ほぼ全社員」が行なっていたというのだから怖い。さらに、踏み込んだケースも紹介していた。

<(ある営業担当者は)かぼちゃの馬車の販売会社の一つから、複数の案件について、「銀行用」と「実際」の二通りの試算を記載したファイルをメールで受領していたこと、(中略)この営業担当者については、二重契約と自己資金の偽装についての認識があったものと認められる>

その先には、「あの業者なら、審査資料を改ざんしてくれる」という趣旨の発言をしたスルガ銀行員がいる。その音声データは、被害弁護団が、先週、公開している。