マレーシア警察、ナジブ前首相宅を捜索
マレーシア警察は16日、ナジブ・ラザク前首相の自宅を捜索した。ナジブ首相は先週9日に実施された総選挙で敗北し、退陣したばかり。
地元メディアによると、16日の日没後、ナジブ首相の自宅前で複数の警察車両が巡回していた。
新たに就任したマハティール・モハマド首相は、盟友だったナジブ前首相の汚職疑惑について捜査の再開を検討していると述べていた。
ナジブ前首相は不正の事実を否定している。ナジブ氏は12日に、休暇のため夫人を伴い海外に渡航しようとしたが、出国を禁じられた。
警察は16日に家宅捜索を行ったことを認めたが、詳細は明らかにしなかったと、地元紙ニュー・ストレイツ・タイムズは報じている。
ナジブ前首相については、同氏が設立した政府系ファンド「1MDB(1マレーシア・デベロップメント・ブルハド)」をめぐる汚職疑惑への関与が長らく取りざたされてきた。
2015年には、ナジブ氏がファンドから7億ドル(約770億円)を不正流用した疑いが浮上したものの、当局はナジブ氏を無罪放免にした。
ロイター通信は、警察や記者、一般市民など100人以上がナジブ氏宅の前に集まったと伝えた。目撃者の1人は、ナジブ氏がモスク(イスラム教礼拝所)から帰宅した後、警官数人が自宅内に入ったと語った。
ナジブ前首相率いる政党連合バリサン・ナシオナルは、9日の総選挙で衝撃的な敗北を喫した。
ナジブ氏の政治の師匠でもあった、現在92歳のマハティール元首相は10日に就任宣誓式に臨み、政府系ファンドから失われた多額の資金を取り戻すことに取り組むと述べた。
マハティール新首相はすでに司法長官を交代させている。
マハティール氏はさらに今週、改革派として知られ、ライバルでもあったアンワル・イブラヒム元副首相の恩赦に動いた。アンワル氏は同性愛行為の罪で服役していたが、アンワル氏の有罪判決には、政治的動機が背景にあるとみられていた。
マハティール氏はアンワル氏と取引をし、自分が野党候補として出馬した際に支持すれば、国王からの恩赦が得られるよう取り計らうと約束していた。
両氏はさらに、マハティール氏が首相を2年務めた後、アンワル氏に禅譲することで合意している。
アンワル氏は16日、BBCの取材に対し、マハティール氏との取引には強い抵抗感があったと明かし、「私の子供たちは涙を流していた。『どうしてこの男と協力しなくてはならないのか』と思っていたから」と語った。
それでも自分は懸念を乗り越えたとアンワル氏はBBCに話した。「過去にこだわってはいられない。我々にとっては国のこと、マレーシーアを救うことが問題だ」。
汚職疑惑とは?
ナジブ前首相は、2009年に政府系ファンド「1MDB」を設立。ファンドの資金不正流用をめぐる疑惑が問われてきた。
1MDBは、首都クアラルンプールを金融ハブにし、戦略的投資を通じて経済発展を推し進める目的で設立されたが、2015年初めに、期日を迎えた銀行や債券投資家への債務110億ドルの一部が返済されなかったことで、経営をめぐる疑念が生じた。
その後、米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルが、ファンドからナジブ氏の個人銀行口座に7億ドル近くが振り込まれたのを示す資料を見つけたと報じた。
ナジブ氏は、1MDBを含む公的ファンドから資金を得た事実はないと一環して主張している。