種苗の自家増殖 「原則禁止」へ転換 海外流出食い止め 法改正視野、例外も 農水省
2018年05月15日
農水省は、農家が購入した種苗から栽培して得た種や苗を次期作に使う「自家増殖」について、原則禁止する方向で検討に入った。これまでの原則容認から規定を改正し、方針を転換する。優良品種の海外流出を防ぐ狙いで、関係する種苗法の改正を視野に入れる。自家増殖の制限を強化するため、農家への影響が懸念される。これまで通り、在来種や慣行的に自家増殖してきた植物は例外的に認める方針だが、農家経営に影響が出ないよう、慎重な検討が必要だ。
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営農型太陽光発電 一時転用10年に延長 担い手所得向上へ 農水省
農水省は15日、農地に太陽光パネルを設置する際に一時転用を許可する措置について、条件付きで転用期間を延長すると発表した。担い手が営農する場合や、荒廃農地を活用する場合などに、現行の3年から10年に延長する。「営農型太陽光発電」をしやすくし、担い手の所得向上や荒廃農地の解消につなげる。きちんと営農が行われているか、チェック体制の強化が課題になりそうだ。
2018年05月16日
集落営農の法人化 総力挙げて経営安定を
集落営農組織の法人化が進んでいる。農水省の調査によると、法人率は34%で10年以上伸び続けている。しかし法人化がゴールではない。経営を軌道に乗せることが重要だ。地域農業を担う持続可能な経営体の育成に向け、JAや行政が継続的に支援すべきだ。
2018年2月現在で集落営農数は1万5111。地域別では水田農業の比重が高い東北3344件が最も多く、九州2415件、北陸2383件と続く。数はほぼ前年並みだが、農事組合法人などの法人数は5106件、前年より413件増えた。法人化率は初めて30%台を突破した17年を上回った。
法人化が進む背景の一つとして、人材確保の有利性が挙げられる。同省の調査では、30ヘクタール以上を集積する法人は全体の4割を占める。高齢化でリタイアする人たちの農地の受け皿役を果たしている。だが、オペレーターと呼ばれる作業者の高齢化も進む。将来に渡って組織を存続させるには次世代の人材が必要だ。そのためには社会保障などの雇用条件を整えることが必須で法人化を選ぶ。
法人化には農地集積への合意形成や登記、定款策定など、やらなければならない事務作業が多い。行政やJAのサポートも法人増加の背景にある。
しかし、法人化が済めば地域農業の抱える課題が解決するわけではない。経営内容を充実させ、将来に渡って組織が存続するようにしなければならない。
秋田県大仙市の農事組合法人・新興エコファームは、水稲にエダマメなどの園芸品目や野菜加工を組み合わせて収入を確保し、地元農家から引き受けた50ヘクタールを維持する。作業が重複する品目もあるが、農家間で人員を融通するなど工夫を凝らす。農地集積が進み、経営面積は設立当初と比べて20ヘクタール増えた。同法人の役員は「今後も農地は集まる」との考えから、若手の人材育成を重視。20~40代の3人を雇い入れた。
法人経営の安定には役員の手腕が大きいが、当事者任せにしてはならない。経営を長持ちさせるためには、高齢の農地提供者も何らかの形で経営に関わり、「自分たちの組織」という意識を持たせることが重要だ。「少数精鋭」では限界がある。野菜作りや直売所、加工品などの多角化を進める上でも女性活用がポイントになる。だからこそ国や県、市町村、JAによる経営支援への期待は大きい。
宮城県のJA南三陸は「担い手サポート班」を設け、作物ごとに担当を配置。法人や若手農家らへの支援を充実させ、頻繁に通うことで「あの人に相談すればいい」という関係を築き、経営を下支えしている。
技術指導はもとより、労務、税務面の管理や資金調達、実需者とのマッチング、6次産業化の相談・助言など、行政やJAが法人に対し、できることは多い。地域農業の将来像を描く端緒が開けるはずだ。
2018年05月13日
種苗の自家増殖 原則禁止に懸念 政府は理解求める 参院農水委
参院農林水産委員会は15日、一般質疑を行った。農家による種苗の「自家増殖」を原則禁止にする政府の方針について、野党は農家経営への影響が懸念されると批判。政府は、原則禁止は国際的な流れなどとして理解を求めた。生産現場にどのような影響を与えるか、今後も丁寧な議論が求められそうだ。
2018年05月16日
酵母さんありがとう カーネーションの純米酒どうぞ 愛知・名城大発「ちょっぴり甘め」
名城大学(名古屋市)が、カーネーションから取り出した酵母を使った日本酒などを商品化した。愛知県はカーネーションの全国有数の産地。ほんのり甘い「母の日」向け商材として、インターネットや百貨店特設売り場などで販売している。
仕掛け人は同大農学部応用微生物学研究室の加藤雅士教授。2010年に同県春日井市にある大学付属農場で栽培しているカーネーションから酵母を取り出すことに成功。県や原田酒造(東浦町)の協力で、日本酒「華名城(はなのしろ)」を完成させた。県の酒造好適米「若水」で造った特別純米酒。柔らかい甘味のある味わいに仕上がった。
最新の研究で、酒を醸造する際に生まれるオリゴ糖の一種、イソマルトースを、この酵母が消化しないことが判明。「一般的な酵母は糖を消化するため辛口になるが、カーネーション酵母はイソマルトースを残すため甘味を生む」(加藤教授)。ビフィズス菌を増やす働きもあり、機能性も優れているという。酒かすから作るアイスや飲む酢、スパークリングワインなども商品化した。
研究室の大学院生、武内花菜子さん(22)は「甘口のお酒が好きな母にあげたら喜んでもらえたので、母の日に贈りたい」と笑顔を見せる。
2018年05月11日
無職の若者 農で自立 畑作・酪農就労へ 北海道新事業
北海道は、ニートや引きこもりなど仕事に就いていない若者を新たな労働力として着目し、農業現場に送り込む取り組みに乗り出す。農業の労働力確保と若者の就労支援を狙う。初年度の2018年度は、農業での就労支援の枠組みを構築するため先進事例の調査を進める。若者の就労を支援する大阪府のNPO法人と連携し、19年度にも同法人が支援する若者を十勝地域に受け入れるモデル事業を実施したい考えだ。
厚生労働省北海道労働局の統計によると、3月の月間有効求人倍率は「農林漁業の職業」で2・21倍。人手不足が課題となっている。
道は、これまでも労働力確保の取り組みを続けてきたが、さらに視野を広げる必要があると判断。都市部に暮らすニートや引きこもりなどの若者に着目。18年度予算に164万9000円を計上し、「農業分野におけるワークチャレンジ推進事業」を始めた。労働力が不足している農業の現場に若者を送り込むとともに、現場での作業を通じ自立に結び付けることも視野に入れる。
18年度は、ノウハウなどを蓄積するため、主に先進事例の調査を進める。対象としているのは大阪府泉佐野市と青森県弘前市、大阪府豊中市と高知県土佐町の二つの連携事例だ。
泉佐野市では、若者の就労を支援するNPO法人「おおさか若者就労支援機構」が、ニートや引きこもり向けの就労訓練メニューに農業を組み込んでいる。希望者を弘前市に送り出し、リンゴの生産を数日間手伝ってもらう。
豊中市は、就労に困っている人に土佐町の農村地域で、農作業のインターンシップをしてもらう取り組みをしている。
19年度からのモデル事業は、泉佐野市のおおさか若者就労支援機構と連携し、若者を十勝地方に呼び込み畑作や酪農、畜産などに従事してもらうことを構想する。「道内は人手不足が深刻だ。取り組みを全道各地に広げたい」(道農業経営課)と話す。
2018年05月14日
農政の新着記事
TPP11政府試算 関税収入620億円減 経営安定財源に課題 農産品
政府は16日、米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)の発効による関税削減で、関税収入が740億円減るとの試算を明らかにした。うち農産品は620億円で、2016年度と比べると、最終的に5割以上減る。国内畜産振興に充てる牛肉関税収入などが減るため、経営安定対策の新たな財源確保が課題になる。
試算はTPP11の貿易相手10カ国を対象に実施。日本の16年度の関税収入の総額は約9390億円で、うち10カ国からの農産品の収入額は約1120億円。輸入実績が16年度から変わらないと仮定し試算した。
農産品での収入減少額は、発効初年度が190億円。ここから、関税の引き下げが全て完了する最終年度に620億円となる。
このうち牛肉の減少額が270億円で最も多い。牛肉の関税は現行の38・5%から発効時に27・5%に削減。その後段階的に下がり、16年目以降は9%になる。離脱した米国に対し、関税削減でさらに有利になるオーストラリア産のシェアが高まれば、関税収入の減少額はさらに膨らむ可能性がある。関税収入は、肉用子牛生産者補給金や肉用牛肥育経営安定特別対策事業(牛マルキン)など経営安定対策に充てている。減少した分の代替財源の確保が議論になりそうだ。
関税とは別に国が徴収するマークアップ(輸入差益)も減少する。麦は初年度の25億円から、最終年度は227億円(16年度比25%)の減少となる。国内麦農家の経営所得安定対策の財源だ。加工原料乳生産者補給金に充てる乳製品のマークアップは、最終年度で25億円(同31%)、砂糖の調整金は16億円(同3%)それぞれ減るとしている。
農産品の関税収入の減少を巡っては、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)では最終年度に600億円減少すると試算されている。
2018年05月17日
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2018年05月16日
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2018年05月16日
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2018年05月15日
農産物流通 AIで過不足ピタリ 農家に情報提供 内閣府が新システム
内閣府主導で産学連携を促し、人工知能(AI)によって農産物の流通量の過不足などを予測するシステムを構築する事業が9月からスタートする。出荷適期や売れる品目などのデータを農家にフィードバックする。2022年度までの完成を目指し、インターネットを通じて農家が各種情報を入手し、営農に活用できるようにする。
2018年05月15日
無職の若者 農で自立 畑作・酪農就労へ 北海道新事業
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18年度は、ノウハウなどを蓄積するため、主に先進事例の調査を進める。対象としているのは大阪府泉佐野市と青森県弘前市、大阪府豊中市と高知県土佐町の二つの連携事例だ。
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2018年05月14日
エコファーマー 環境支払い除外なぜ? 農家疑問の声 GAPありきか ハードル高まる
農水省が2018年度に見直した「環境保全型農業直接支払交付金」の要件に、現場から疑問の声が上がっている。交付対象のエコファーマーを外し、代わりに「国際水準の農業生産工程管理(GAP)の実施」を義務付けた。GAPありきの制度変更に、ハードルが高まったとみる自治体もある。環境施策の整合性が問われそうだ。
2018年05月13日
農福連携推進へ提言 結び付け態勢整備 全国ネット
都道府県で組織する農福連携全国都道府県ネットワークは11日、農業と福祉の連携(農福連携)の促進に必要な施策提言を発表した。農福連携を社会の大きな流れとするため、関係省庁が中心となって意識啓発をするよう提起。農業経営体と福祉事業所を結び付けるコーディネーターの育成や、農業側の受け入れ態勢を整える人材研修制度の創設などを盛り込んだ。ネットワークは同日、提言の実現に向け、農水省などで要請活動を展開した。
2018年05月12日
農地の下限面積要件 独自設定 農委64% 移住促進で緩和進む 農水省
農地を取得する際の下限面積を独自に設定している農業委員会が全国で64%(2017年4月1日時点)に上ることが、農水省の調査で分かった。地域の実情に応じて農業委員会が下限面積を引き下げることのできる特例を活用。新規就農者や移住者の受け入れに積極的な自治体が見直しを進めている。
2018年05月11日
TPP タイ加入で打撃懸念 政府「慎重に対応」 衆院農水委
衆院農林水産委員会が10日に行った一般質疑で、環太平洋連携協定(TPP)へのタイ加入を巡り政府と野党が火花を散らした。野党側はタイが加入した場合、特に国産米が打撃を受ける懸念があるとして、米の輸入枠を与えないよう要求。政府は慎重に対応するとの考えを示すにとどめた。
茂木敏充TPP担当相は今月初めにタイを訪問。会談したソムキット副首相は、TPP11に早期参加したい意向を示した。タイは米や砂糖の生産が盛んな農業大国だ。
国民民主党の後藤祐一氏は、タイとは2007年に経済連携協定(EPA)が発効し、日本の輸出品目の工業品の関税は大半がゼロになっていると指摘。タイのTPP加入によるメリットは少ないと指摘した。
打撃を受ける恐れがあるのが農業分野だ。後藤氏は「圧倒的に心配なのは米。(安い)インディカ米が大量に入ってきて、冷凍チャーハンに使われるようになるとかいろいろな懸念がある」と強調。「タイの米向けの輸入枠は作らないと約束してほしい」と迫った。これに対し、斎藤健農相は「国内におけるセンシティビティーは120%十分に承知しているので、それを踏まえ対応したい」と述べた。
後藤氏はタイがTPPに加入した場合、国内農業が受ける影響試算を早急に行うよう要求。農水省の野中厚政務官は「(タイが)正式な(参加)表明を行っていない状況なので、そういった試算はない」と述べるにとどめた。
2018年05月11日