野菜盗難相次ぐ 被害者落胆 「栽培やめる」 宮崎県延岡市
2018年05月17日
ニンニクを盗まれた農家の畑(宮崎県延岡市で)
宮崎県延岡市で、野菜の盗難が相次いでいる。収穫直前の野菜を、時期を見計らったかのように盗む手口だ。被害に遭った農家は「悔しい。苦労を踏みにじる行為で許せない」と口をそろえる。「栽培をやめる」と意欲をなくす人も出ており、野菜泥棒が地域農業の大きな問題になっている。
同市大貫町の富山重利さん(82)は11日、JA延岡の直売所「ふるさと市場」に出荷する直前だったニンニク30本以上を盗まれた。午前7時ごろに畑に行き、ニンニクがごっそりなくなっている光景にがくぜんとした。
富山さんは50アールの畑でブロッコリーやエダマメ、レタスなどを通年栽培する。以前から盗難に遭っていたが、今年に入り度重なる盗難に悩まされるようになった。
富山さんは「自転車で周辺を見回っているような不審な人物を見掛けた。近所の人たちも知っている。証拠がないので何とも言えないが」と、やるせない表情だ。
すぐに警察に相談し、「自分でも看板を設置するなど対策をしてほしい」とのアドバイスを受けた。畑の周囲にネットを張ったが、「無駄な労力と経費。今後も続くようなことがあれば、被害届を出す」と話す。
また、出荷前の野菜を何度も盗まれた同市片田町の70代の女性は「1、2個程度なら諦めもつくが、大量に持って行かれるとやる気がなくなる」と話す。軽トラックなどを使った大胆な手口という。「もう気力もなえた。栽培中の野菜もあるので年内は農業を続けるが、その後はやめようと思う」と肩を落とす。
野菜だけでなく、肥料を入れるバケツや、トラクターなどを圃場(ほじょう)に入れる際に使う農機ブリッジなどの資材を盗まれる被害もある。
同市大貫町の富山重利さん(82)は11日、JA延岡の直売所「ふるさと市場」に出荷する直前だったニンニク30本以上を盗まれた。午前7時ごろに畑に行き、ニンニクがごっそりなくなっている光景にがくぜんとした。
富山さんは50アールの畑でブロッコリーやエダマメ、レタスなどを通年栽培する。以前から盗難に遭っていたが、今年に入り度重なる盗難に悩まされるようになった。
富山さんは「自転車で周辺を見回っているような不審な人物を見掛けた。近所の人たちも知っている。証拠がないので何とも言えないが」と、やるせない表情だ。
すぐに警察に相談し、「自分でも看板を設置するなど対策をしてほしい」とのアドバイスを受けた。畑の周囲にネットを張ったが、「無駄な労力と経費。今後も続くようなことがあれば、被害届を出す」と話す。
また、出荷前の野菜を何度も盗まれた同市片田町の70代の女性は「1、2個程度なら諦めもつくが、大量に持って行かれるとやる気がなくなる」と話す。軽トラックなどを使った大胆な手口という。「もう気力もなえた。栽培中の野菜もあるので年内は農業を続けるが、その後はやめようと思う」と肩を落とす。
野菜だけでなく、肥料を入れるバケツや、トラクターなどを圃場(ほじょう)に入れる際に使う農機ブリッジなどの資材を盗まれる被害もある。
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「ササニシキ」直系銘柄「ささ結」 “東の横綱”復権 知名度向上へ しゃりすし需要で脚光 宮城県大崎市など
宮城県大崎市やJA古川、JAみどりの、JAいわでやまなどでつくる「大崎の米『ささ結(むすび)』ブランドコンソーシアム」のブランド米、「ササニシキ」直系の「ささ結」の需要が高まっている。あっさりとして適度な甘味や心地よい粘りがあり、酢飯に合う特性が受け、東京や宮城県の地元のすし店が高く評価している。東京の米穀店では2017年度、すし店への供給量が販売当初の15年度より5倍以上に拡大。一層の需要拡大を狙う。
消費地にじわり浸透
「すしはしゃりが命。あっさりしていて口の中でほぐれる食感がたまらない。香り、つや、歯応えともに申し分ない」。宮城県大崎市のすし店「君鮨(ずし)」の代表、千葉君夫さん(69)の評価は高い。15年度から「ささ結」を扱う。職人がその品質に魅了されている。
「ささ結」は、「ササニシキ」を親に持つ水稲品種「東北194号」の愛称。倒伏しやすい「ササニシキ」の栽培特性を克服した。「東北194号」のうち、追肥をせず、玄米タンパク含有率6・5%以下を満たし、JAの環境保全米などを取得した米が認証される。認証面積は、同品種生産の8、9割に上る。
同コンソーシアムは、「ささ結」のすし需要を狙い、国内外へのPRに力を入れる。世界各国のすし職人が腕前を競う「ワールドスシカップジャパン」のしゃりや土産品として15年度から「ささ結」を提供。17年度には「ササニシキ」や「ささ結」で最も優れた米を出品した農家を決める「ささ王」決定戦を初開催するなど、知名度向上に力を入れる。
「世界農業遺産に認定された市の特産品として、料亭にも売り込みたい。かつて東の横綱と称されたササニシキの振興につなげたい」(同市農林振興課)と話す。
18年度の「東北194号」の生産面積は110ヘクタール。本格化した15年度の3倍以上に拡大した。
消費地、東京でも徐々に浸透している。「しゃりに酢がなじみやすく、程よい甘味や粘りが楽しめる。粒がつぶれにくく握りやすい」。東京・吉祥寺第一ホテルのすし店「一寿(ず)し」の板長、白須聡さん(37)は説明する。17年秋から、しゃりに使う米のほぼ全量を「コシヒカリ」から「ささ結」に切り替えた。今後も使い続ける方針だ。
東京都世田谷区の米店、水島米穀は、都内のすし店に「ささ結」を供給する。17年度の販売量は約4トン。販売を始めた15年度と比べ、5倍以上に拡大した。取引するすし店は、17年度に新たに3店舗加わり、合計で5店舗に上った。
同社は「20年以上前に使っていたササニシキの味を懐かしみ、同系のささ結に切り替える動きが出てきた」(販売営業部)とし、今後も売り込みを強める方針だ。(海老澤拓典)
2018年05月15日
レクラークジュース 青森・JA八戸
日本一の販売高を誇る青森県南部町の西洋梨「ゼネラル・レクラーク」を使ったジュース。甘味料など添加物は加えず、果汁100%で仕上げた。JA八戸が販売する。濃厚な味わいが特徴で、焼酎などと割って酎ハイ感覚で飲むのもお薦めだ。
同品種は収穫時は黄緑色。追熟で黄金色となり、独特の香りやバランスのとれた甘味と酸味が楽しめる。ジュースには追熟させたものを使った。
1本(720ミリリットル)1000円(税別)。JAアンテナショップで販売する他、電話での注文も受け付ける。ホームページでの販売も計画する。問い合わせはJA直販課、(電)0178(61)6337。
2018年05月14日
農林年金一時金 支給対象4万人不明 制度変更の周知を 衆院農水委
農水省は9日、JA役職員らが加入する農林年金の廃止法改正案で、年金に代わり支給が義務化される一時金について、将来的に受給権を持つ約61万人のうち、約4万人が住所不明であると明らかにした。改正案では、法施行から5年の間に一時金の受給を申請しないと受給権は消滅する。受給漏れがないよう、同日改正案を可決した衆院農林水産委員会では「十分な周知徹底」を求める付帯決議を採択した。
2018年05月10日
TPP タイ加入で打撃懸念 政府「慎重に対応」 衆院農水委
衆院農林水産委員会が10日に行った一般質疑で、環太平洋連携協定(TPP)へのタイ加入を巡り政府と野党が火花を散らした。野党側はタイが加入した場合、特に国産米が打撃を受ける懸念があるとして、米の輸入枠を与えないよう要求。政府は慎重に対応するとの考えを示すにとどめた。
茂木敏充TPP担当相は今月初めにタイを訪問。会談したソムキット副首相は、TPP11に早期参加したい意向を示した。タイは米や砂糖の生産が盛んな農業大国だ。
国民民主党の後藤祐一氏は、タイとは2007年に経済連携協定(EPA)が発効し、日本の輸出品目の工業品の関税は大半がゼロになっていると指摘。タイのTPP加入によるメリットは少ないと指摘した。
打撃を受ける恐れがあるのが農業分野だ。後藤氏は「圧倒的に心配なのは米。(安い)インディカ米が大量に入ってきて、冷凍チャーハンに使われるようになるとかいろいろな懸念がある」と強調。「タイの米向けの輸入枠は作らないと約束してほしい」と迫った。これに対し、斎藤健農相は「国内におけるセンシティビティーは120%十分に承知しているので、それを踏まえ対応したい」と述べた。
後藤氏はタイがTPPに加入した場合、国内農業が受ける影響試算を早急に行うよう要求。農水省の野中厚政務官は「(タイが)正式な(参加)表明を行っていない状況なので、そういった試算はない」と述べるにとどめた。
2018年05月11日
農地の下限面積要件 独自設定 農委64% 移住促進で緩和進む 農水省
農地を取得する際の下限面積を独自に設定している農業委員会が全国で64%(2017年4月1日時点)に上ることが、農水省の調査で分かった。地域の実情に応じて農業委員会が下限面積を引き下げることのできる特例を活用。新規就農者や移住者の受け入れに積極的な自治体が見直しを進めている。
2018年05月11日
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野菜だけでなく、肥料を入れるバケツや、トラクターなどを圃場(ほじょう)に入れる際に使う農機ブリッジなどの資材を盗まれる被害もある。
2018年05月17日
定年帰農者に柿託す 自園提供し技指南 静岡県函南町山本光男さん
優良な柿園地を良い状態のまま残していこうと、ベテラン農家が自分の園地を定年帰農者らに提供し、栽培や販売の経験を積んでもらう仕組みが静岡県函南町で定着してきた。機械を使い、第一線の専業農家とほぼ同じ環境が整っているとあって、優良果樹園を守る担い手“候補生”として約10人が管理に携わる。技術を持った人員を地域につくり、園地維持につなげる狙いだ。
このベテラン農家は、農水省の「農業技術の匠(たくみ)」にも認定されている山本光男さん(83)。2001年から個人的に講座を開いたり、13、14年には静岡県東部農林事務所主催の農業塾の講師も務めるなど、人材育成に力を注いできた。
講座や塾で山本さんから指導を受けてきた定年帰農者らが、栽培や販売の経験をさらに高めようと山本さんの条件の良い園地を借り、管理作業に励んでいる。こうしたOBらは14年に「農の匠塾柿部会」を発足させた。山本さんを顧問に招き、助言を受けながら園地の一部を管理する。
定年帰農者が部会に集う理由の一つが、まとまった資金がなくても好条件の土地で、専業農家と同じ農業経営を経験できる点だ。園地は日当たりや風通しが良く、10アール当たりの木が18本程度となるよう植え付けている。部会は山本さんの農園の3分の1を担当。トラクターや高枝切りチェーンソーなどの農機具も山本さんから借りる。
収穫した柿は部会員らで販売する。半分をオーナー制度でさばき、その他をイベントや直売所で販売する。売り上げから農薬や肥料の代金を捻出している。部会員の一人、内田進さん(78)は「高い技術を学びながら本格的な農業を実践できる。ここまで任せてくれる農家は少ないのでは」と喜ぶ。
今年からはさらに3分の1に当たる70本を、塾生で柿園を持たない大橋正利さん(62)が引き受けている。大橋さんは「扱うのは、50年かけて高い技術で管理していた木。技術を学びながら将来に残したい」と意気込む。
山本さんには息子がいるが、企業勤めで定年後に就農するかは分からない。就農しない場合は塾生らが管理し、就農する場合は塾生らが技術を伝え共に柿園管理を手伝ってもらうことを考えている。山本さんは「果樹園は一度荒れると元に戻すのに時間がかかる。技術と農地を引き継ぐ人を育てていきたい」と話す。
2018年05月14日
鳥獣対策の人材育成 「シカ捕獲認証レベル1」取得後押し 対象講座を受講 「全国のモデル」めざす 酪農学園大学とエゾシカ協会
北海道江別市の酪農学園大学は、講座を受講するとエゾシカ協会が認証する「シカ捕獲認証レベル1」の受験資格が取得できるカリキュラムを導入した。鳥獣被害対策に貢献できる人材を育成するのが狙い。認証を取得できれば、環境省が進める野生動物の個体管理に関する人材登録制度の審査の一部が免除される。行政やJAなどの就職活動でもPRできるとみている。
同認証は鹿の生息地域・生息数を把握し、農産物の被害などを減らすには、どのくらいの駆除をすべきかなどを計画するのに必要な知識を得た人が取得できる。鳥獣害に悩む地域などでの役割が期待されている。
対象となる科目は、同大学環境共生学類野生動物学コースの3年生が受ける「野生動物生態学」や「野生動物管理学」など6科目だ。鹿や熊、鳥といった野生動物の生態や被害、個体管理について学ぶ。通常は、資格を得るために同協会が設けた講座を受講しなければならないが、同大学の対 象科目を修得すると、筆記試験や実技試験などで取得できるようになる。
試験的に始めた昨年度は7人が受験資格を得ており、5月下旬に受験する予定だ。今年度は、14人が対象となる授業を受ける。
同大学は昨年度、講義の一部を修得すると鳥獣管理技術協会が認定する「鳥獣管理士」の受験資格を得られるようにするなど、関係機関との連携を強化している。同大学は「日本では、野生動物を管理するシステムが発展途上の段階。今後も教育を充実させて、全国のモデルとしたい」とする。
2018年05月11日
年間通じ作業員確保 労働力支援 延べ1万5000人派遣 農閑期に仕事用意 全農おおいた
JA全農おおいたが労働力支援事業で農家に送り込んだアルバイト作業員の数が2017年度、延べ1万5000人に達した。大分県全域で展開し、全国最大規模の取り組み。農閑期に作業員をつなぎ留めるのが課題だったが、キャベツの作型を増やし周年栽培する体制を整え、1年を通じて一定の作業量を確保することで克服。作業員から新規就農を目指す人も現れ、今後はJAの准組合員の作業参加に力を入れる。(岡部孝典)
全農おおいたは農作業受託会社「菜果野(なかや)アグリ」(大分市)と連携し、人口が多い大分市や別府市などから、人手不足の農村部にアルバイトの作業員を送り込む。JAを通じて農家から依頼を受け、作業内容や料金、必要人員などを調整。菜果野に登録する常時100~150人程度のアルバイトからシフトを組み、1日60~80人程度が作業に当たる。
作業員は早朝に菜果野の事務所に集合し、乗り合わせて県内各地に移動。17年度は約120戸の生産者が利用し、収穫を中心にトマトやネギ、カボスといった約30品目の作業に加え、JAの選果場なども支援した。作業従事者数は、本格稼働した15年度に延べ4410人、16年度は1万312人、17年度は1万5161人と増えている。
当初は農閑期の冬から春先に仕事が少なく、アルバイトをつなぎ留めるのに苦労した。農繁期に必要な人員数をそろえられなかったり、技術を習得しても辞めてしまったりと、“人数と技術”の両面で課題があった。
そこで同時並行で進めたのが、加工用キャベツを周年栽培する体制の整備だ。キャベツを生産していなかった県北部の中津市や宇佐市の農家にも呼び掛けて産地化し、県全体で標高差を生かしてリレー出荷する。収穫面積は17年産で40ヘクタール。1年を通じて一定の作業量を確保し、アルバイトのつなぎ留めに成功した。売り先としてカット野菜のプライベートブランド(PB)商品も開発した。
構想段階の13年度から事業に携わる全農おおいたの花木正夫直販課長は「作業量を平準化することで、組合員が必要な時に必要な分だけ支援を頼める仕組みを整えられた」と話す。
利用者の評価は高い。豊後高田市で七草9・7ヘクタール、白ネギ7・3ヘクタールなどを栽培する北崎農園の北崎昌靖専務(41)は「年々、人集めに苦労するようになった。一定の経験のある人が来てくれるので助かる」と話す。事業を利用し、年末年始の七草の収穫・調製には1日約60人、白ネギの作業に6人ほどを雇うという。
作業員は主婦や学生、フリーター、副業として働く人などさまざま。給料が現金日払いで、勤務時間・日数の相談に柔軟に応じることも定着に結び付いている。
作業員には就農を目指す人もいる。「アルバイトなので未経験者でも入りやすかった」と、大分市の元会社員・管祐一郎さん(35)。1年前から週5日程度働いており、「お金をもらいながら、いろいろな作物や作業を学べて理想的」と話す。
支援事業の18年度の目標は、作業従事者数で延べ2万人。18年度からは、JAの准組合員に作業員としての参加を積極的に呼び掛ける。「広い裾野として正組合員を支える存在になってほしい」(花木課長)。
JA全農は今後、大分県での事業を踏まえ、労働力支援の取り組みを全国的に展開していく考えだ。
2018年05月10日
空き家改修費を助成 営農と生活 共に支援 山口県
山口県は、雇用と独立双方での就農者の増加、定着を目指し、営農と生活を共に支援する事業の強化に乗り出した。従業員や構成員として受け入れる集落営農法人やJAに対し、住居となる空き家の改修費用を助成。住居の確保が就農の支障となる例が多いことから「県域では珍しい」(県農業振興課)パッケージ支援に踏み切った。
2018年05月06日
宝の山へ改造 荒廃竹林で「稼げる」対策提唱 竹チップ+堆肥=白子タケノコ 静岡市の宮澤圭輔さん
全国的に問題になっている荒廃竹林を、竹チップが宝の山に変えた。静岡市の宮澤圭輔さん(39)は、荒れた竹林を伐竹しチップにして堆肥と混ぜ、20~30センチに敷いて直射日光を遮ることで、えぐ味がなく身が白い高級ブランド「白子タケノコ」を生産することに成功した。太陽熱と発酵熱を利用して12月から早出しでき、高単価で取引される。荒廃竹林が日当たりの良い優良な竹林に変わり、楽々作業で高収入が上がる循環サイクルが完成、竹林対策に手応えを感じている。
高価格 整備に意欲 有志で友の会
自然が好きだった宮澤さんは2016年、自然に関わる仕事がしたいと就農した。周囲の農家から「荒廃竹林に困っている」という話を度々聞き、「自然の力で何とか解決できないか考えた」という。
タケノコの価格と出荷量を調べると、出荷が集中する4月は単価が1キロ200円程度と安いが、12月に約8000円になる「白子タケノコ」があることをつかんだ。
京都府では赤土とわらを毎年客土し、空気を遮断して生産するブランドの「白子タケノコ」が生産されていた。ただ、客土は土が重く重労働とあって、誰もが取り組めるわけではない。宮澤さんは、伐竹で大量に出る竹チップに着目。近くの動物園で手に入る堆肥と混ぜ、竹林に敷く方法を考案した。
有志10人で荒廃竹林を整備する里山友の会を組織。借りた30アールの竹林は、竹が密生し枯れた竹が折り重なって、人が入れないほど荒れていた。
16年秋から、傘を差して通れるほどの間隔に竹を切った。市が貸し出す自走式チッパーで2~10ミリに粉砕、約8トンの堆肥と混ぜて敷いた。
17年1月3日、1キロを超す「白子タケノコ」が発生した。今シーズンは、昨年12月末から今年4月中旬までに約3トン収穫した。うち約2トンが「白子タケノコ」だった。
一般的にタケノコの収穫は、重いくわを振り下ろして掘る重労働だが、宮澤さんの竹林は表層がふわふわ。地割れを頼りに土の中のタケノコを草取り用の小鎌とのこぎりで楽に収穫できる。
キロ5000円にも
市内の料理店、青果店、JA静岡市の直売所に出荷した。「白子タケノコ」の1キロ単価は平均で1月5000円、2月4000~3500円、3月2000円、4月上旬1000円。一般的なタケノコの3、4倍だ。
出荷先の青果店、カネタツの服部洋明さん(38)は「穂先がクリーム色か白で、風味も食感も良い。今年はインターネットでも販売したところ、東京都や長野県などにも取引先が増えた」と評価する。
宮澤さんは「荒廃竹林は宝の山。白子タケノコの需要はもっとあるので、他の地域にこの方法を広めたい。収入が上がり、循環サイクルを生み出す仕組みが大切だ」と強調する。
県事業を活用
静岡県は人工林を侵食する竹林を対象に、県独自の森林づくり県民税(1人400円)を財源に、06年度から皆伐して針広混交林を整備する事業を進めている。16年度までに271ヘクタールの竹林を伐採し整備した。静岡市では06年度から自走式竹粉砕機を、団体に無料で貸し出す事業をしている。宮澤さんも利用した。17年度までに延べ148団体が延べ約3000日利用した。
タケノコ産地の福岡県八女市では、切った竹を有償で引き取り、プラスチックの材料にするなど利用する循環サイクルの仕組みができている。竹炭にする例もあるが、切った竹が収入を生む例は珍しい。
2018年05月05日
施設トマトに「茎ゲージ」 太さ目安 適正管理 神奈川で開発・普及
神奈川県やJA全農かながわなどでつくる「かながわスマート農業普及推進研究会」は、施設栽培トマトの茎の太さを測ることで、ハウス内の環境や水、肥料など肥培管理の“見える化”に取り組んでいる。茎に当てるだけで太さを簡単に測れる板「茎ゲージ」を開発。生長点から15センチ下の茎の太さと、生長点から開花段までの長さの目安を参考に、安定生産につなげている。
2018年04月29日
担い手ニーズ集約 職員間で迅速連携 県内全JAに端末300台 JAグループ佐賀
JAグループ佐賀は、担い手に出向いた先での提案力・指導力を強化する独自の「担い手支援システム」の運用を始めた。県内全4JAの営農指導員や金融渉外担当者らに、タブレット端末300台を導入。職員間の担い手情報の共有を迅速化する。経営分析の他、圃場管理や病害虫診断、気象などの情報を提供。現場での対応力を高める。
2018年04月26日
[特区 外国人就労] 識者に聞く 受け入れ経験 生かせ 技能実習生との人材争奪避けて 早稲田大学 堀口健治名誉教授
農作業を支援する外国人労働者を受け入れる国家戦略特区が具体化する。早稲田大学の堀口健治名誉教授に、課題などを聞いた。
──今回の特区には、どのような課題があると見ていますか。
外国人労働者を現場に派遣する「特定機関」となる事業者が大事な役割を持つ。派遣先の仕事内容に合う人材の確保などを担い、農家と労働者を結び付ける役目を持っているからだ。
JAを含め、地域の多様な農業関係者が協力して派遣会社を設立するなどして、農業現場の実態に合った仕組み作りが欠かせない。
制度概要を見ると「派遣という形態で農繁期だけ雇用できる」「特定の仕事だけ行う」といった日本側のメリットばかり強調していると感じる。
農業分野で働く外国人に配慮し、安定した雇用を提供できる環境づくりが必要だ。しっかりと働いてもらうには、相手国や外国人への配慮が欠かせない。
──受け入れや指導にはどう対応するべきですか。
外国人技能実習生受け入れで得たノウハウを生かすべきだ。技能実習生を受け入れている現場では、実習生3人当たり日本人1人の指導者が置かれていることが多い。特区でも、こういったチームを組んでの技術習得が有効と思われる。そのためにも、指導役となる日本人の常時雇用が欠かせない。
外国人技能実習生の採用経験がある現地の送り出し機関や、日本国内の受け入れ監理団体から協力を得ることも重要になる。
技能実習生制度では、受け入れ前に語学学習などを行い、農家が現地に面接に行くなどコストや手間をかけて丁寧な対応をしてきた。そうした教訓、経験を特区の人材確保にも役立てるべきだ。
一方、技能実習生と特区、二つの制度で人材の奪い合いとなるのを避けなければならない。技能実習生と、特区で派遣された労働者が一緒に働くことも想定される。雇用条件の違いなどで、トラブル回避のために想定される課題を整理していく必要がある。(聞き手・猪塚麻紀子)
2018年04月24日
[特区 外国人就労] 愛知、受け入れ組織 26日設立、具体策に着手
農業分野への外国人労働者の受け入れで国家戦略特区に認定されている愛知県の大村秀章知事は23日、関係機関と適正受入管理協議会を全国に先駆けて26日に設立すると発表した。農業に就業をする外国人を受け入れる具体策に着手し、深刻な担い手不足解消につなげる。京都府、新潟市も近く、同協議会を立ち上げる見通しだ。
特区で農業分野への外国人労働者の受け入れには、協議会の設立が前提となっている。事務局の愛知県が内閣府や東海農政局、愛知労働局、名古屋入国管理局と設立。協議会が指導や監査をする派遣会社などの「特定機関」が外国人労働者と雇用契約を結び、農業現場に派遣する仕組み。協議会は外国人からの苦情や相談窓口の設置を担う。特区に認定される新潟市や京都府でも、今後同様の仕組みで協議会を設立する。
特区の外国人労働者は多くの農作業や農作物の加工、販売にも就けるなど現場の即戦力として、柔軟に働くことができる。外国人技能実習生とは異なり、1年以上の実務経験や日本語能力などが条件。通算3年間働くことができ、農作業のない時期に一時帰国もできる。受け入れ側は5年以内に労働者を雇った経験があることや、日本人と同等以上の報酬の支払いなどを求める。
大村県知事は記者会見で「愛知県は全国有数の農業県で全国屈指の施設園芸の産地。この事業を通じ農業分野における労働力の確保を図る」と意欲的に話した。
26日の第1回協議会後には、特定機関を対象にした事業説明会も開く。
2018年04月24日