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アメリカ発「ハイテク株大暴落」を警戒すべきタイミング

6月のFOMC後に要注意!?

米国株の暴落はあるか

米国株は依然として調整色を残しながらもなかなか大崩れしない。ただし、年初から先週までの米国株のパフォーマンスは、NYダウでみると+0.4%、S&P500でみると+2.0%といまひとつ冴えないのは確かである。2月の大幅調整後も一進一退で推移している。

一方、米国経済は底堅く推移している。1-3月期の実質GDP成長率は、季節調整棲み前期比年率換算で+2.3%(名目GDPは同+4.3%)と、過去3四半期の成長率から鈍化はしているものの、概ねうまく制御されていると思われる。

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筆者は、FRBの過度な引締め政策による株価、経済の「オーバーキル」を懸念していた。経済はまだそのような事態には陥ってないが、株価はFRBの資産圧縮が加速した1月半ば以降、調整色を強めた。そして、FRBの資産圧縮は現時点でも粛々と進んでおり、4月時点のマネタリーベース残高は前年比で-2.5%と、いよいよ減少局面に入ってきた。

問題は、マネタリーベースがどの程度減少した場合に、経済にも悪影響を及ぼしうるかという点である。

現在のマネタリーベース残高は、名目成長率に換算すると、年率で3.5%をやや上回る程度の成長を可能にする水準であると推測される(図表1)。

これは、現時点の4%超の名目GDP成長率を幾分下回る水準だが、FRBの経済見通しにおける「長期均衡値(Longer run)」に近い(実質GDP成長率が1.8%で、PCEデフレーター伸び率が2.0%で計3.8%)。すなわち、FRBは、現状よりもやや低い水準に米国経済を軟着陸させようとしているようにみえる。

ちなみに、このFRBの「長期均衡値」は2016年9月時点から変更されていない。今年に入り、「トランプ減税」によって、米国経済は上振れすることが見込まれていたので、FRBも経済の長期的な均衡水準を上方修正するのではないかと思っていたが、長期的な均衡値は上方修正しなかった。

ここまでの金融政策を考えると、FRBは、この上振れ分をより積極的な金融引締め(資産圧縮、利上げペースの加速)によって相殺するスタンスをとっているのではないかと考える。

 

アトランタ連銀は、「ナウキャスト」という手法を用いて、現時点で発表されている月次指標等から4-6月期の米国の実質GDP成長率をリアルタイムで予測しているが、直近では、前期比年率換算で+4.0%と予測している(「Atlanta Fed GDPNow」)。これに2%前後のインフレ率が上乗せされるとすれば、4-6月期の名目GDP成長率は6%前後の高い伸びになることが見込まれる。

名目GDPが6%前後の高成長であれば、FRBの目標とする名目成長率を実現させるために必要なマネタリーベースはさらに減少させてもよいことになる。ざっと試算すると、4-6月期の名目GDP成長率が前期比年率換算で+6.0%であった場合、マネタリーベースは前期比年率換算で-8%近い減少であっても、名目3.5%成長のための資金は十分に供給されるという計算になる。

以上より、マーケットがこのFRBの政策目標(長期的に実質2%弱、名目3.5%強程度の成長ペースに着地する)を十分に理解しているのであれば、短期的に(6月頃まで)FRBが資産圧縮をある程度加速させたとしても、本格的な株価暴落局面が来る可能性は低いということになる。

したがって、米国株式市場が本格的な調整局面に入るとすれば、それは、年後半以降に現在の想定以上に引締めが進むケースとなる可能性が高い。特に6月のFOMCで、将来の利上げペースの加速が示唆されたり、その後のFRBが資産圧縮のペースをさらに加速させ、名目3.5%成長を維持するために必要なマネタリーベースの供給額を大幅に下回る状況になれば、要警戒ということになるだろう。