大事なこと

2010年07月07日

大事なこと・・・オーケストレーションを考えるときに

オーケストレーションを考える際に、

・前
・中
・後

を考えるのは、大変大事なことです。

「前」とは何か。
まあ、端的に言えば、メロディーのことですよ。曲の中で、最も強調したい部分です。

「中」とは何か。
上記の例でいえば、フルートのお供にしたオーボエです。
あるいは、アップテンポの例のピッコロ。
「前」の次に強調したい部分ですな。
バンドをやってた人だと「オブリ」なんて単語を聞いたことがあるかもしれない。
これは「オブリガート」のことで、メロディーを際だたせるためのメロディックなフレーズのことです。
もしくは、もっとリズミカルなものでメロディーを際だたせるかもしれない。

「後」とは何か。
伴奏のことですよね。でも一概に伴奏と言っても、「中」になることもあるし「後」になることもあるので、なんとも言えないんだけども。
概して、和音とかがこれにあたるわけです。

つまり。
木管アンサンブルの最初の例は、メロディーと和音しかない。
「中」が欠けていた、というわけなんです。
これだと、音楽的な豊かさが足りないと言うことになるわけなんですな。
もしかしたら、弦とか金管が「中」を担当してくれているのかもしれないけどもね。

まあ、場合によっては伴奏とメロディーしかないとか、メロディーがないようなこともあるでしょうけど。
ちょいちょいこの概念は出てきますんで、ちょっと心のどこかにとどめておいてクダサイな。


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2010年07月05日

大事なこと・・・オーケストレーションの諸要素 その1

オーケストレーションを考えるときに、「前・中・後」が大事だというお話をいたしましたけども。
ちょっと違った観点から考えてみましょうかね。

アレンジをするときに、いつも「メロディー・メロディーを際だたせるためのメロディックなフレーズ・和音の伴奏」では、面白くないですよね。
どういうふうにバラエティ感を出していくか。
これには決まった方法があるわけじゃないですけども、ヒントはあるわけで。
いろんなアレンジの要素を紹介します。
どの要素を「前・中・後」に配置するかは、まあ、センスで。
いろんな曲を聴いて、ああこれはここがこうだなと分析してみてクダサイ。
当たり前ですけど、全部の要素を使わなきゃイケナイってわけじゃないです。
そんなことしたら、作る方も聴く方も疲れ果てます。


「メロディー」

言わずと知れた、メロディーですよ。メロディーとしか言いようがない。
曲を思いだして口ずさむときに、こいつを口ずさむわけですな。


「パッド」

MIDI音源なんかで、なんとかPadなんて音色が入っていますわね。
輪郭のはっきりしないボワーンとした音色で、和音をふわーっと入れるのに適した音色。
そんな効果を楽器で出すことです。
つまりは、べろーんと長い和音を演奏することですな。
木管の例で言うと、ex.1のフルート以外全て、ex.2のバスーンとクラリネットがこれに当たりますな。

基本的には、パッドは伴奏なので、メロディーよりも弱く設定いたします。
メロディーより下の音域に置いても、上の音域に置いても、あるいは同じような音域に置いても可です。
ただ、パッドはあんまりいろんな音域を行ったり来たりするのでなく、共通音があればソレを保持して、なるべく動きが少ない方が良いでしょうな。


「リズミック・パッド」

和音をべろーんと長い音で演奏するのではなく、たとえば「ンチャッチャ・ンチャ・ンチャ」のように、リズミックに和音を演奏することです。
金管の時の、ブラスバンドっぽい例(ex.3)でトロンボーンが演奏したようなことですよ。
どんなリズムパターンにするかは、アレンジャーの腕次第ってところで。
金管の例で申しますと、ex.3のトロンボーンがコレ。
裏拍を打つだけの面白味のないリズムパターンで申し訳ない。


「カウンターメロディー」

「カウンター=counter」というのは、「対抗する」っていうような意味です。
すなわち、メロディーに対抗する、メロディックなフレーズのことを言います。
以前、「前・中・後」の話の時に申し上げた、「メロディーをひきたてる」役目を担いますな。
木管の時の例で言うと、ex.2のオーボエ、ex.3のクラリネットの上の音が、コレに当たるわけだよ。
まあ、我ながら大したカウンターメロディーじゃないけどもさ。

「カエルの歌」を輪唱したときに、2人目の歌が1人目の歌のカウンターメロディーになっている、といえばわかりやすいですかな。

ベートーベンの第5交響曲「運命」の冒頭部分。
打ち込んでみました。
ちょっと聴いてみましょう。







まず最初に、ジャジャジャジャーンとみなさんで同じメロディーを演奏しまして、その後、メロディーが重層的な感じに聞こえて参りますわね。
ものすごく単純化した楽譜がこちら。

orch_ex1

ちゃんとしたオーケストラのスコアは、こちらにpdfファイルがあります。
これが、もし1番上の段のメロディーしかなかったら、なんと味気ない曲になることでしょう。
あるいは、例えばバイオリン1だけがこのメロディーを演奏したんでは、こういう幾重にも重なったような効果は出ないですよね。
「メロディーが何人かいる」っていうことが大事なんだな。ここでは。
ベートーベンのスコアでは、バイオリン1とバイオリン2とビオラで、この3重構造を作り上げています。
ついでに申しますと、ここに挙げたメロディーは、全て「タタタターン」という同じリズムパターンで出来ております。素晴らしい。
たったひとつのモチーフで、こんなに豊かな曲になるんですな。
メロディーが複数になる箇所と、単一のメロディーの箇所がしっかり分かれてて、実にキレのある楽曲になっております。

カウンターメロディーは、時にメロディーのハーモニーになったり、フィルっぽい感じの働きをすることもありますけど、基本的には独立した存在です。
メロディーの上に来ても下に来ても、どっちでもOKだけど、メロディーを殺しちゃうようなものはダメです。当たり前だ。

でもって、カウンターメロディーは、メロディーがせわしなく動いてるときにはあんまり動かないほうがよかろうよ。
でもって、メロディーがあんまり動かなくなったら、カウンターメロディーが動いたらいいんじゃないですかね。

運命の打ち込みをやって疲れたので、残りの諸要素は次回に持ち越し。


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大事なこと・・・オーケストレーションの諸要素 その2

さあ、続きです。


「フィル」

ドラムで、一連のフレーズの終わりに、「ンタカタカタカ」みたいな、それまでとちょっと違ったパターンを入れることがありますでしょう。
そういうのを「フィル」と申します。
打楽器だけでなく、フレーズ終わりに、あるいは新しいフレーズの直前に、隙間を埋めるようなちょっとした短いフレーズを「フィル」というわけですな。
英語の「フィル=fill」は、「補充する」とか「満たす」って意味ですもんね。
聴いてみましょうか。チャイコフスキーの「くるみ割り人形」から「花のワルツ」です。







弦楽器のメインが途切れると、木管が「ティヤララタッタッ」とこじゃれたフレーズを吹いています。
コレです。フィルってのは。


「オスティナート」

ある短いフレーズを、しつこく演奏することをいいます。
しつこくって言ったって、あまりにしつこいと邪魔くさいですけども。
おんなじベースパターンをずっと繰り返したり、あるいはおんなじリズムパターンをずっと繰り返したり。

例としては、かの有名な「ボレロ」がありますな。
リズムのオスティナートが、徹頭徹尾鳴り続けている。水戸黄門のテーマ曲もですけど。
あるいは、ピアノで簡単に伴奏つけるときに、左手で「ドソミソ」を繰り返したりするでしょ。
それもオスティナートと言えますな。

前回の例で出した、ベートーベンの「運命」の冒頭。
これも、オスティナートですよね。
「ンタタタターン」というメロディーがずっと鳴ってる。
極端に言えば、メロディーがずっと「ドーファーソー」を繰り返して、和音が変わっていくとか、そんなのもオスティナートだ。

例えば、伴奏がオスティナートでメロディーは普通に進行していくとか、メロディーがオスティナートでコードがどんどん変わっていくとか。
いろいろ応用がききますな。


「ペダル・ポイント」

ずっと同じ低音が続いていることを言いますよ。日本語で「持続低音」と申します。
コードが変わろうがおかまいなしに、ずっと同じ音を演奏する。
ただ、どの音でもいいってわけじゃなくて、例えば「ハ長調=C Major」であれば「ド」か「ソ」が一般的でしょうな。
これがあると、上でどんなコードが鳴っていても、いずれは元のコードに戻るんだなっていう予兆を感じさせておけるわけです。
低音が一般的ですけど、すごく高い音でもいいんですよ。
いろいろ試してみて、音が濁って聞こえないように注意しましょうや。


これで全部ってわけじゃないだろうけども。
このくらい心得ておけば、だいぶバリエーションを出せるんじゃなかろうかね。
単純すぎるのも良くないけど、複雑すぎるのも良くないですから。

ってことで、次は弦楽器ですよ。


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